レベルを上げてみたっ!
移動方法についてどうするか悩んでいた俺だがいつまで考えていても埒が明かないので一旦棚上げし、とりあえず上げ方のわかったレベルを上げ生存率を高めようと考え、それから時々やってくるゴブリンを前と同じ方法で捕食しレベル上げることにしていた。味は相変わらず激マズだが生き残るために背に腹は変えられない。そして今のステータスは以下のようになっている。
名前:名無し
種族:ミミック
クラス:コモンミミックLv5
HP:24/24 MP:35/35
筋力:7 耐久:12 敏捷:0 器用:6
知能:7 精神:5 魅力:0
スキル:噛みつきLv4、捕食Lv2、舌Lv4、鑑定Lv2、収納Lv2、アイテム作成Lv2
収納品:錆びたナイフx1 棒x2 ずだ袋x1 ぼろい麻のロープx1
レベル上げ中にスキルの《アイテム作成》も行い収納品も増えてきた。どうもスキルのレベルはメインのレベルとは関係ないようでスキルを使用していかないと上がらない様だ。そしてこの理屈なら《鑑定》のスキルなど見るだけでよいスキルは以外に楽にレベルアップ出来るのではと思い、いろいろなものを《鑑定》してみたのだが、しかしこれがなかなか上がらない、スキルによっては上がり方はまちまちの様だ。楽にレベルアップを見込んでいた俺だったが世の中そんなに甘くなかった。
そんな俺は今日も今日とて部屋の片隅にたたずみ獲物が来るのを待ち構えている。今までの敵はすべてゴブリンでそれ以外は今のところ見かけていない、もしかしてこのダンジョンにはゴブリンしかいないのだろうか。
こちらとしてはゴブリンなら問題なく倒せるし、急に強いモンスターが現れても困るので問題は無いのだが、しかし問題も起きつつある。レベルが上がるにつれてゴブリンでは中々レベルが上がらなくなってきているのだ。今はまだ良いがいずれレベルが上がらなくなった場合、動けない俺はここではこれ以上強くなれそうもない。
そして突然、強いモンスターがこの迷宮に現れないとも限らない。そんな時、移動することが出来ない俺は避けることも逃げることが出来ないので一方的に蹂躙されてしまうだろう。強くなるのも重要だが、早急に移動する手段も考えなければならない。そんなことを考えていると部屋の外からひたひたと足音が聞こえてくる。
『またゴブリンか?あまり強いモンスター出なければよいが・・・』
いつもの通りじっと扉の方を観察していると、足音は扉の前で止まりギギッと扉の開く音がし、そして小柄な人影が部屋の中に入ってきた。大きさからするといつもと同じでゴブリンの様だが、しかしその格好が今までのゴブリンと様子が違う、革鎧を着ていた今までの姿とは異なりその姿はローブの様なぼろをまとっており首に小動物だろうか小型の動物の頭蓋骨のネックレスをしている、そして右手に木の杖らしきものを携えているではないか。まるでファンタジーで見る魔法使いの様な恰好だ、頭蓋骨のネックレスとかだいぶ邪悪な印象だ。
『SAN値が下がりそうな見た目だな、子供が見たら一発で泣くレベルだなあれは・・』
そして俺はすかさず鑑定をしてみた。
名前:名無し
種族:ゴブリン
クラス:ゴブリンシャーマンLv7
HP:15/15
MP:24/24
装備:布のローブ(普通)、木の杖(普通)、骨のネックレス(普通)
スキル:ファイアボルトLv2、スリープLv1、鑑定Lv1
『!』
《鑑定》スキルのレベルがあがったことで俺は敵のスキルも見えるようになったのだが、今やってきたゴブリンを《鑑定》して俺はやばいと感じた。
『《鑑定》持ちだ!』
そのゴブリンは今まで見たゴブリンよりだいぶレベルが高かった、そして何より不味いのは《鑑定》スキルを持っていることだ。今までは箱に義体して優位に戦闘を進めていたのだが鑑定されたら一発で俺がミミックであることがばれてしまい優位性が失われてしまう。それどころか俺にはこの位置からの攻撃手段が無いので今《鑑定》をされたら一方的に魔法で攻撃される可能性がある。
『あと少し近づいてくれれば『舌』が届くんだが・・・』
俺は内心ひやひやしながらそのゴブリンの挙動を見守った。だがそんな俺の警戒心をよそにそのゴブリンは俺を見つけると無警戒に近づいてきた。どうやら鑑定はされなかったみたいだ、だけど相手には魔法がある、距離を取られたら不味いここは一気に倒さないと。俺は息を飲みそのゴブリンが《舌》の射程に入るのを待つ。ゆっくりと近づいてきたゴブリンが《舌》の届く範囲に入ったことを確認し俺は《舌》のスキルを一気に解き放した。
『まずは、逃げられない様にこちらに引き寄せる!』
箱の中から飛び出した舌は低空移動し一瞬でゴブリンとの距離をゼロにする、そしてゴブリンの足に勢いよく巻きついた。手ごたえを感じた俺は一気に舌を引っ張りこちらに引き寄せる。突然の攻撃にそのゴブリンは反応出来ず、いきなり足を引っ張られたことで後ろに頭から倒れ床にしこたまぶつけていた。
俺は頭をぶつけてうずくまっているゴブリンをこれ幸いとそのまま一気に引き寄せて勢いよく後ろの壁にぶち当てた。もの凄い勢いで壁に激突したことでゴブリンはいろいろな関節がへんな方向に曲がり、血が噴き出している、しかしまだ死んではいない様だ。
俺は油断せずとどめを刺すことにし、舌でそのゴブリンを再び持ち上げ今度は床に叩きつけた。何度か叩きつけるとそのゴブリンは動かなくなったので俺は再び鑑定を行ってみた。
名前:名無し
種族:ゴブリン
クラス:ゴブリンシャーマンLv7
HP:0/15(死亡)
MP:24/24
装備:布のローブ(普通)、木の杖(普通)、骨のネックレス(普通)
スキル:ファイアボルトLv2、スリープLv1、鑑定Lv1
HPが0になり死亡となっている問題なく死んでいるようだ。相手が死んだことを確認して俺は自分が油断していたことに猛省をする。今回は間抜けなゴブリンで助かったが《鑑定》を持っているのが自分だけではないことに考えが至らなかったことだ。動けない俺は逃げることも前に出て攻めることもできない、いままで何とかなってきたのは宝箱に擬態していて不意をつけたからだ。中身がミミックだと知れたら遠距離攻撃を持っている敵には一方的に攻撃されてなすすべがない。今のところ先に《鑑定》をされたらなすすべが無いのだ。
猛省しつつ俺はいま始末したゴブリンを舌で口の中に放り込み《捕食》のスキルで吸収する。そして自分のステータスを確認してみる。
名前:名無し
種族:ミミック
クラス:コモンミミックLv7
HP:27/27 MP:40/40
筋力:8 耐久:13 敏捷:0 器用:7
知能:8 精神:6 魅力:0
スキル:噛みつきLv4、捕食Lv3、舌Lv5、鑑定Lv2、収納Lv2、アイテム作成Lv2
ファイアボルトLv1、スリープLv1、
収納品:錆びたナイフx1 棒x2 ずだ袋x1 ぼろい麻のロープx1
『おおっ、さすがレベルが高かっただけあってレベルが上がったか、ん?』
レベルが高いだけあっていい経験値だったようだ、そしてスキル欄を見ると見慣れないスキルが増えていることに気が付いた。
『スキルが増えてる?ファイアボルトにスリープ?これはあのゴブリンが持っていた魔法じゃないか』
スキルに何故か先ほど戦ったゴブリンの魔法が増えている。今までゴブリンを倒しても何もスキルは増えなかったのに今回はなぜかスキルが増えていた。俺は今までとの違いを考えてみると、そういえば今までのゴブリンは武装はしていてもスキルは持っていなかったことを思い出した。鑑定がLv1の時のゴブリンはわからないがレベルも低かったしおそらくそいつらもスキルを持っていなかったのではないだろうか。
『ということはスキルを持っている敵を《捕食》すればスキルが増える?これは大発見じゃないか!』
俺は先ほど気にしていた鑑定されて優位性が無くなることと移動できないことに対処が出来うる可能性が見いだせた事に喜んだ。なんとかこれを利用して移動系スキルと鑑定を誤魔化すスキルを取得したいものだ。一時はどうしようかと悩んでいたものの怪我の光明で新しい能力が分かったことはラッキーだ。しかしそう都合よくそんなスキルをもった倒せる敵が来てくれるわけも無いだろう、スキルを取る前に追いつめられないとも限らない。現状は出来る事は《鑑定》持ちがいたら最優先で始末することだろう。
そう考えると俺は再び部屋の隅にたたずむのであった。
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