魔物に会ってみた!
前方を進むビーフに案内されその巨体の後ろに続くモニカと俺。
抱えられながら移動する俺はモニカの腕の中で今から紹介される魔物とはどんな魔物なんだろうと考えてしまう。
ザンダー爺さんやビーフでもヤバさ加減が半端ないのに、そいつらに変な奴らといわれる奴らってのは相当ヤバいやつらじゃないのか...
先ほどのビーフの語り草からどうにも不安を感じてしまう。と思いつつも現状、俺達にはどうすることも出来ないので黙ってビーフについていくしかないのだが。そんなことを考えていると目の前を歩いていたビーフがある扉の前で止まった。
「ここは召使たちの部屋だよ、大半はスケルトンばかりだが少し毛色の違うのもいるから驚くでね~だよ」
そういうとビーフは扉を開けてその中へと入っていく、それに俺たちもそれに続いて扉をくぐる。
そして中に入った俺は付近を見渡してみる、その部屋は調理場の様で竈や食材が見え中は結構広い一見すると普通の調理場の様に見えるが、そこで働いている者たちが異常だった。
目の前で食材を下ごしらえしている者がいるがその姿はいうなれば動く骨格標本だ、その数は五体ほどいる、こいつらがビーフの言っていたスケルトンということだろう。
そしてその奥の方には執事の様な恰好をした老紳士が見える、一見まともな人間に見えたが、よく見るとその体は浮いていおりその服の裾から覗く肌は若干透けている、これが言っていた魔物の一人だろう、モニカはそんな姿の魔物たちを見て怯えているようで少し震えている。
「モニカ、大丈夫だから」
モニカを落ち着かせようと俺が声をかけると、ぎゅっと俺を強く抱きしめてくる。
そして言葉を交わしたことと俺を強く抱きしめたことで若干落ち着いてきたのか震えも少なくなってきた。
そう感じた俺は再び部屋の中を見回す。
すると奥の方にもう一人の姿が見えたがその姿に俺は若干の戸惑いを受けることになった。
...なんで人間の少女がこんなところに?
俺が見たのは忙しく料理をしているメイド服を着た少女だったのだ。
本来であればこんな魔物の巣窟であるダンジョンのしかも最奥にいるべき存在ではない。
俺はそのことを疑問に感じていると中にいた魔物たちがビーフに気が付いたようで挨拶をしてくる。
最初に声をかけてきたのは執事姿の幽霊だ。
「ごきげんようビーフ殿、何か御用ですかな?」
若干しゃがれた声でビーフに対して挨拶をしてくる執事姿の幽霊、姿からは想像できなかったがその物腰はとても丁寧なものだった。
「このダンジョンに住むことになった新人を紹介にきただ、ほれ、おまえら挨拶をするだ」
ビーフはそのに俺たちを。紹介された俺はスキルを使い自己紹介をする。
「訳あってこのダンジョンに住むことになったミミックです。この娘はダークエルフのモニカといいます、これからお世話になります」
そう紹介する俺なのだが、紹介を受けた執事姿の幽霊は若干驚いているようだ。
「ほほう、話すミミックとは珍しい...いや失礼しました、今まで話すことが出来るミミックなど見たことは無かったもので、改めまして私の名はニコラスと申します。この迷宮でザンダー様の元、執事の真似事のようなことをしております」
どうも驚いていたのは俺が話しが出来ることが原因だったようだ。
まあ見た目箱だし普通のミミックはしゃべらないってザンダー爺さんも言っていたしな。
そして俺は話しながらその執事姿の幽霊ニコラスを鑑定してみた。
名前:ニコラス
種族:レイス
クラス:ハイレイスLv12
HP:185/185 MP:232/232
筋力:25 耐久:9 敏捷:42 器用:51
知能:75 精神:98 魅力:31
装備:鑑定不能
スキル:鑑定不能
種族はレイス、ステータスからすると能力は俺より結構上位に当たるみたいだ、そしてザンダー爺さんの時もそうだったが一部鑑定できない部分があるこれは一体何なんだろう。
俺は鑑定をするには相手との強さの差がありすぎると見えないのかと想定していたのだが、このニコラスより強いビーフのステータスは見ることが出来たのに、この差は何なんだろう、単純なステータス差ではないのかもしれない。
そして俺が鑑定したタイミングでニコラスがピクリと反応をしたのだが、俺はそれに気が付くことが出来なかった。
そうして俺が思考しているタイミングでニコラスが再び話しかけてくる。
「今、《鑑定》をされましたね?」
「なぜそれを!?」
ニコラスのその言葉に俺は驚く、どうもニコラスは俺が鑑定したことに気が付いたようだ、なんでばれたんだろう...
「そして、なぜ鑑定がバレたか不思議がっておりますね?」
!?
続くニコラスのその言葉に俺は戦慄した、もしかしてこちらの考えていることが読まれている?
俺たちの間に若干の沈黙が包むが暫くするとニコラスが小さく笑い声を上げた。
「ふふふっ、申し訳ございません。久々の他者からの《鑑定》でしたので少し悪ふざけをしてしまいました」
そういうとニコラスは謝罪をしてくる。そしてなぜ《鑑定》がバレたかネタ晴らしをしてくれた。
「《鑑定》というスキルは相手の強さを確認するのにとても便利ですが万能ではございません、ミミック殿にはおそらく私のステータスの一部は鑑定不能と表示されたのではないでしょうか」
「なぜそれを!?」
「それはですね、私のスキルの中に《認識阻害》というものがあり、このスキルによって相手の《鑑定》を妨害しているのです、そしてこのスキルは《鑑定》をされるとスキルから反応があり《鑑定》されたことに気が付くことが出来るのです」
「そんなスキルがあるのか、通りでビーフのステータスは見えたのにニコラス殿のステータスは見えなかったわけだ・・・」
「そういう訳です」
「でも、なぜそのあとの私の考えていることまで分かったのですか?まさかそういったスキルも存在しているとか?」
「ふふふ、そういったスキルはいまだ聞いたことがありませんなぁ」
「ではなぜ?」
「簡単ですよ、今まで《鑑定》スキルをしてきた者がまったく同じ反応をするからですよ」
「......」
やられた...たぶんニコラスは今までも《鑑定》を仕掛けてきた者に同じ対応をしてきたのだろう。
なかなか良い性格の幽霊なようだ、まあそういうスキルを知らずに《鑑定》を使用した者がいきなりそのことを指摘されたらたぶん同じような反応になるだろうな。
そして俺が沈黙をしているとニコラスがさらに話を続けてくる。
「まあ冗談はさておき、一つ知っておいてほしいことがあります。この迷宮には私の様に《認識阻害》のスキルを持っている方々が複数います、そしてそれはここにご滞在中のお客様方も含まれますが、その方々に今のようにいきなり《鑑定》スキルを使うと相手に対して大変な無礼な振る舞いをしていることになり、場合によっては宣戦布告と取られてしまう可能性がございます。そういったことを未然に防ぐためにも《鑑定》については相手の了承が無い限りここでは行わない様にお願いします」
俺はそのニコラスの言葉にゾッとした。
こんな魔窟にいる魔物に喧嘩を売ったら俺なんて一瞬で木っ端みじんだろう、《鑑定》スキルはとても便利なスキルだがそんな落とし穴があるなんて考えもしなかった。
そのことを教えてくれたニコラスには感謝をしなくてはならない、他の魔物のところに行く前で本当によかった。
もしかしてビーフもそのことを見込んで先にここへ連れてきてくれたのだろうか。
「助言ありがとうございます。問題が起こる前に聞けて良かったです」
俺はニコラスに感謝を告げる。そして、気を使ってくれたであろうビーフにもお礼をする。
「ビーフ、先にここへ連れてきてくれてありがとう。危うくザンダー爺さんのお客に粗相をするところだった助かったよ」
俺は、気を使ってくれたビーフにもお礼をするが、
「う~ん、オラは近かったから一番にここに連れてきただ、礼はいらんだよ」
特に気を使ってくれた訳ではなかったようだ....
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