食べてみたっ!
特に何の警戒心もなく近づいてくるゴブリンたち。今の俺の外見はおそらく箱だろうから無警戒なのも当然か、それにこちらとしても様子を見るには都合がいいしな。
その二匹のゴブリンはだんだんとこちらに近づいてくる、そして目の前まで来ると俺を開けようと手を伸ばしてきた。唯一持っている錆びたナイフもどこかに収納されているようなので、特に取られる物もない俺はおとなしく口?向こうから見れば蓋を開けた。
蓋を開けて俺の中を覗き込んだゴブリンたちだが、俺の中に何も入っていないことに気がついてがっかりしているようだった。このまま立ち去ってくれれば良いのだが。
だがしかし、ゴブリンたちはなかなか立ち去らず、そのうちの一匹がおもむろに俺を手でたたき始めた。どうも俺の中に何も入っていないことが気に入らず八つ当たりを始めたようだ。
しばらく叩かせておけば気も晴れるだろうと思い俺はそのまま放置していたが、そのゴブリンは叩くことをやめるどころかどんどんエスカレートして今度は蹴りを入れてきている、どれだけ短期な魔物なんだ。そしてその蹴りはだんだんと激しくなり強い衝撃を受けるようになった。俺は攻撃を受けたことで一応ステータスを確認してみるとなんとHPが減っているではないか。
名前:名無し
種族:ミミック クラス:コモンミミックLv1
HP:9/12 MP:15/15
筋力:3 耐久:8 敏捷:0 器用:2
知能:3 精神:2 魅力:0
スキル:噛みつきLv1、吸収Lv1、舌Lv1、鑑定Lv1、収納Lv1、アイテム作成Lv1
収納品:錆びたナイフx1
『このままではまずい・・・』
あせった俺は何か手段がないかと考え、そしてもう一度俺を蹴ろうと足を振り上げたゴブリンの蹴りに合わせてスキル《噛みつき》を行った。その瞬間、がばっと蓋が開き内側に生えた鋭い牙がゴブリンの足に食らつきそのまま噛み千切った。
蹴りを入れてきたゴブリンは一瞬何が起こったかわからなかったようだが足を千切られた反動で後ろにもんどりをうって倒れこむ。そして食いちぎられた痛みからかようやく自分の足がないことに気がついたようで絶叫しながらのたうち回る。
「ゴギャアアアアアアアアアアア!」
もう一匹のゴブリンは仲間の突然の悲鳴にどうしたら良いかわからないようで、そばでうろうろしているだけだ。
とりあえずHPがなくなる前に何とか抵抗はできた様だが、これで俺がただの箱ではないことがばれてしまった。俺はとりあえず落ち着いて状況を確認しようと倒れこんだゴブリンを『鑑定』で見つめる。
名前:名無し
種族:ゴブリン
クラス:ゴブリンファイターLv1
HP:2/8(流血)
MP:3/3
装備:破けた皮の鎧、錆びた短剣
ステータスを見るとHPがごっそり減っていた、ミミックがこの世界では強いのかどうかはわからないが、とりあえずこいつらには勝てそうだ。少し余裕が出てきた俺はこの後の事を考える。
こんなに叫ばれたんじゃ部屋の外にも聞こえてしまうな、こいつらに他に仲間がいるかどうかはわからんが動けない俺では仲間や他の魔物を呼び寄せられたらさすがにやばいかもしれないな・・・
そう考えた俺はこいつらはここで仕留ることにする。一匹は先ほどの噛みつきで片足がないのでもう逃げられないだろうから、逃げる可能性があるもう一匹を先に仕留めた方がよいだろう。そう考えた俺は仲間のゴブリンがのたうちまわっている付近でいまだにうろうろしているゴブリンを見てみる。
少し距離があるな・・・動けない《噛みつき》ではどうにもならないか。
そう考えて俺はもう一度スキルを見直す、この状況では《舌》のスキルが使えそうだ、先ほど使った感じではそこそこ長い舌だったのでもう一匹のゴブリンの位置くらいは余裕で届く距離だ。俺はそう判断し早速舌のスキルを残りのゴブリンに使った。
『《舌》!』
《舌》のスキルを使うと口の中から伸びた触手の様な舌は俺の思う通り動き、もう一匹のゴブリンに首に巻き付いた。突然横合いから襲ってきた俺の舌にそのゴブリンはまったく反応できていない様だったのでこれ幸いと俺は舌を思いっきり引っ張りその小柄な体を強引に引き寄せる、そして俺に近寄ってきたところで再び《噛みつき》を発動した。
引き寄せられたゴブリンを下を使い牙だらけの口の中に頭から引きずり込み、先ほどと同じように噛み砕く。ごりっと音が鳴り次に口が開いた時には頭がないゴブリンの死体が俺の前にごろりと転がっていた。
『よっし、うまく仕留められたようだ。』
そして間髪入れず俺はもう一体のゴブリンに目を向ける。もう一体の傷ついたゴブリンは仲間のゴブリンが一瞬のうちに殺されたことに、次は自分だと考えたのか這いずってでも逃げようとしているようだ。しかし足が食いちぎられ夥しい血を流しているそのゴブリンは動きも緩慢で今にも命がつきそうだ。俺はもう一度《鑑定》を使ってみる。
名前:名無し
種族:ゴブリン
クラス:ゴブリンファイターLv1
HP:1/8(流血)
MP:3/3
装備:破けた皮の鎧、錆びた短剣
ステータスからもこのまま放置しても死にそうな感じだ、そしてそうこう考えているうちに這いずる動きが緩慢になりついに動かなくなった。おそらく死んだのであろう、俺は念のためもう一度《鑑定》スキルを使う。
名前:名無し
種族:ゴブリン
クラス:ゴブリンファイターLv1
HP:0/8(死亡)
MP:0/3
装備:破けた皮の鎧、錆びた短剣
ステータスのHPが0になっている、どうも出血多量で死んだ様だ。そしてその状況から俺は戦闘が終わったと判断し生き残った事にほっとした、今回は何とか生き残れたようだ。
戦闘が終わり安堵したところで血がまき散らされた周辺の惨状に目が行った、特にあたりに散らばっているゴブリンの死体をどうしようかと考える。このままほっといたら血の匂いで他の怪物どもが寄ってくるかもしれないどうしたものか。
俺はどうしようかと悩んでいるとスキルの中にいいものがあったことを思い出した。それは《捕食》というスキルだ。《捕食》というのだからきっと食べるのだろう、食べてしまえば死体は片づけられるなと考え早速スキルを発動する。
『《捕食》!』
そうすると《噛みつき》と同じように箱の口ががぱりを開く、俺は《舌》のスキルを使いゴブリンの死体を引き寄せて口の中に放り込んでいく。ぼりぼりと骨を砕く音を立てながらゴブリンの死体を咀嚼していく俺はあることに気がついた。
『ごふぅ、なんだこの味は、不味いっ!くっそ不味いっ!』
このスキルどうも獲物の味を感じてしまうようだ。
『ぐっ、最悪だ!しかし食べないと他の化け物をおびき寄せるかもしれんし・・・』
俺はそう考え、吐き出したい衝動を無理やり抑えこんで死体を飲み込む。
そして、すべての部位を無理やり口の中にねじ込んだ。
『おっし、俺 よく頑張った。』
ささやかに自分を褒めたたえ、周りも片付き、人心地・・いや箱心地がついた俺は食事をしたことによってもしかして先ほど減ったHPが回復しているのではないかと《鑑定》を使い自分のステータスを確認してみることにした。
名前:名無し
種族:ミミック クラス:コモンミミックLv2
HP:15/15 MP:20/20
筋力:4 耐久:9 敏捷:0 器用:3
知能:4 精神:2 魅力:0
スキル:噛みつきLv2、捕食Lv1、舌Lv2、鑑定Lv1、収納Lv1、アイテム作成Lv1
収納品:錆びたナイフx1
『ん?Lv2?』
ステータスを確認するとなんとレベルが上がっているではないか、それにHPも全開になっている、ステータスも僅かだが上昇しているようだ。もしかして先ほどのゴブリンとの戦闘が関係してるのだろうか、それともゴブリンを食べた事が関係しているであろうか。
ステータスが上がることは生存率が上がるので良いことだ、そう、とても良いことなのだが・・・、一つ問題がある、それはそのレベルアップの方法だ。
前者の戦闘での経験値で上昇するのであれば問題無い、何度も戦っていけばいいことだ。しかしである、もし後者の食事を取ることによってレベルが上昇するのであれば問題だ、何故かといえばあのくっそ不味い食事を何度もしなければならないことになるからだ。
『これは早急に確認が必要だな・・・』
俺はそう考え、そして食事でないことを祈るのであった。
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