目玉の魔物と話してみたっ!
俺とモニカは先を行く目玉の魔物のあとに続いて部屋を出る、そこには左右に続く通路があった、その通路の幅はかなり広い、目の前にいる目玉の魔物も大きいいがそれ以上にその通路には余裕があった。
目玉の魔物は通路を左に進んでいくので俺たちもそれに続く。追従しながらその通路を見渡すと俺たちがいた部屋の扉ようなものが左右に複数見えてくる。
ほかの部屋もあの部屋みたいにどこかにつながっているんだろうか...
目玉の魔物はキョロキョロと辺りを見渡す俺たちを気にした様子もなくどんどんと先へと進んでいくので俺たちも遅れないようにその魔物についていく、といっても歩いているのはモニカなので俺はモニカのお腹のあたりにぷらぷらとぶら下げられているだけなんだが。
モニカについては最初は恐る恐る目玉の魔物の後をついて行っていたが、徐々に慣れて来たのか先程よりも歩み早く追従している。
そうしてしばらく歩いていくと、目の前の目玉の魔物がある扉の前に止まった。そして触手でその扉を押し開けて中に入っていく。
モニカと俺は入っていいのかわからなかったので、扉の前に止まり目の前の魔物様子を伺う、すると目玉の魔物が振り返り告げてくる。
「そんなところに止まっておらんで中に入りなさい」
この魔物がそう言うなら入っても問題なさそうだ。俺は目玉の魔物に声をかけられビックとしているモニカに声をかけた。
「モニカ、入っても大丈夫そうだから行こう...」
俺の声に気がついたモニカはコクリとうなずき、ゆっくりとだが部屋の中へと足を踏み入れていく。
その部屋の中には背の低い机とソファー、やたらとデカイ座布団のようなものがある。どうも応接室のようだ。
部屋の中は綺麗に清掃されており、壁にはタペストリーのような装飾品が飾ってある、ここだけ見たらとてもダンジョンの中だとは思えないだろう。
目玉の魔物がその部屋の奥へと進み先程見たデカイ座布団の上に座ると言うか浮いているので着地といったほうがいいのだろうか、その座布団の上に着地した。そして触手で手招きしてくる。
「好きなところに座りなさい」
そう言われたので俺たちはその目玉の魔物の正面のソファーに腰かける。俺たちが座ったのを見届けるとその目玉の魔物が早速話しかけて来た。
「さて、落ち着いたところで、まずは自己紹介といこうかの...」
魔物なのに意外に常識的だな...
今まであった魔物は話は出来てもまともに会話が成り立つような感じではなかったので、この発言に俺は魔物と言うものの認識を改める。
「ではまずは儂からいこうかの、儂の名はザンダーという、見た目はこのような魔物じゃが一応このダンジョンの主をしておる、そうじゃの儂のことはザンダー爺とでも呼んでくれればいい」
ステータスから凄そうだと思ってはいたが、まさかこのダンジョンの管理者だったとは...
目玉の魔物、ザンダー爺さん?の紹介に驚きつつも、いつまでも黙っているわけにはいかないので俺たちも自己紹介をすることにする。
「俺は見ての通り箱の魔物であるミミックだ、そしてこの子はダークエルフの子供でモニカという」
簡単だが俺は自分たちの紹介をした、するとザンダー爺さんがこちらを興味深そうに眺めつつ質問をして来た。
「ダークエルフについては儂も知っている、もちろんミミックについてもだ、ただのぅ、そっちのダークエルフの娘っ子は喋れるのは当然じゃが、なぜお主は喋れるのじゃ?」
どうも俺が喋っていることに興味があるようだ。
「先程も言ったが儂の知る限りミミックというのは上位の者であっても話す知能なぞ無いはずじゃが、どうやらお主は普通のミミックではないようじゃ、称号にある《転生者》というのも気になる、何か関係があるのじゃろうか?」
会話の中にまた称号というものが出てきた、どうもこの称号というのは今の俺の鑑定のレベルでは見ることが出来ないステータスのようだ。
そして俺には見えないがどうも俺の称号の中には《転生者》というものが含まれているらしい。俺はその質問についてどう答えるかを考える。
さてどうするか、相手は俺と違って鑑定スキルがLV10だ、当然俺のステータスは丸見えだろうう、初対面の相手にあまり情報を渡すのもどうかと思うが、下手に嘘をついて不況を買うくらいならここは正直に話して信用を買う方が得策かもしれんな
俺はそう判断し正直に自分のことを伝えることにした。
「信じて貰えるかわからんけど話すことにするよ、俺はもともとはこことは別の世界で暮らしていた人間で、事故に巻き込まれて多分死んだはずなんだが、気がついたらミミックになっていたんだ...」
そう伝えるとザンダー爺さんは若干目を見開き驚いたような仕草をしながら呟く。
「なるほどのぅ、だから《転生者》か、見た目は魔物だがが魂は人間、それなら知能があるのもうなずけるのじゃ...」
「俺のいったことを信じてくれるのか?」
「そうじゃのぅ、この世界でも転生というのは稀にじゃが無いこともない、だから転生自体は信じられる、じゃがのぅ、その転生が異世界からというのは初めてじゃのぅ...」
ザンダー爺さんはそう話しながら面白そうに俺の方を見つめてくる。そして何か良いことを思いついたのか触手をポンッと打ち合わせる。
「そうじゃ、お主たちここに着いたのはどうも偶然のようじゃが、本当はどこにいくつもりだったのじゃ?」
そう質問をしてきたので、これについても俺は正直に答えることにした。
今までの俺の経緯とモニカとの出会い、このダンジョンを脱出するつもりだったことを掻い摘んで説明する。
「では、お主たちは特に行くところがあるわけではないのだな?」
これはどういった意味なんだろうか、ザンダー爺さんの質問の意図を図りかねたが、俺たちはとりあえず近くの街を目指そうとはしていたが、それはダンジョンよりも安全なところに移動したかっただけで、安全であれば街じゃなくても問題はない、なので俺は目的地があるわけではないが安全な場所に行きたいことをザンダー爺さんに伝える。
するとザンダー爺さんがニヤリとする、本人は笑ってるつもりかもしれないが姿が凶悪なため今にも食われそうで怖い。だがその後に続くザンダー爺さんの提案は驚きのものだった。
「それならどうじゃ、ここに住まんか?安全なら儂が保障しよう、なにせ儂はこのダンジョンの主じゃからな」
よくわからない弱小の二人組にダンジョンの主からまさかの住居提供。
その提案は俺たちにとって良いものではなかろうか。現状、俺は外へ出たことがないので外の世界がどの程度危険な状況かはモニカから聞いていることぐらいしか知らないし、もしかするとモニカが話している以上に危険なことがあるかもしれない。
運良くダンジョンを出れたとしても安全にどこかの街までたどり着ける保障などないのだ。
だがしかし、気になることもある、ほぼ初対面である俺たちにここまで親切にしてくれる理由がない、ザンダー爺さんにとって俺たちをここに引き止めるメリットはなんだろう。何か目的がありそうだ。
なので俺はその思惑を探ってみることにした。
「それは俺たちとしてはありがたんだけど、迷惑じゃないか?」
するとザンダー爺さんはニヤッと笑いながら答えてくる。
「ほっほっほ、そうじゃのぅ、それでは家賃はお主の異世界の話というのはどうじゃろう?」
なるほど、そういう目的か。異世界の話にどれほどの価値があるのかはわからないが、どうもザンダー爺さんはその情報が欲しいようだ。
俺は考える、異世界の話をすることでこの世界にどういった影響を及ぼすかはわからない、もしかして危険なことなのかもしれない。
しかし、現状では生きることすら危うい状況だ。モニカもいるしな、ここはリスクはあるがある程度の見通しが立つまで安全策をとった方がよいかもしれない。
俺はそういったメリットとデメリットを考慮しつつ他に問題が無いかさらに考え込む、するとその姿を見たザンダー爺さんがダメ押しの一言を放ってくる。
「それにのぅ、お主は先程、安全のために街に行きたいといっておったがそれはやめた方がいいじゃろう、お主は自分で移動出来ないからその娘と共に街に行くといっておったな?、しかし、その娘はダークエルフじゃ、そしてダークエルフはこの辺りの種族と敵対関係にある、その娘が奴隷としてこのダンジョンに連れてこられたのもそういった事情からじゃろ、下手をするとこのダンジョンより外の世界の方が危険かもしれん...」
その情報を聞いた俺はモニカに確認をしてみると、あまり話したくなさそうだったがそのことが正しいということを教えてくれた。
ということは、下手に街に行っていたらモニカはまた捕まっていた可能性があったわけだ、なんでその事を教えてくれなかったんだ?
俺はモニカが何を考えているのかがわからなかったが、取り敢えず一旦思考を戻しこれからのことを考える。ザンダー爺さんが教えてくれた通りなら、外の世界はモニカにとって危険すぎるな、となると選択肢はひとつしかない...
どうにもいいように誘導されている気もするが、現状それ以外にいい選択肢は思いつかない。
とりあえずの結論は出た、これが正しいのかはわからないが答えをザンダー爺さんに告げる。
「迷惑を掛けるかもしれないが俺たちをここに置いてくれないか?」
その答えにザンダー爺さんはまたもやニヤリと笑うのであった。
お気に召されたら☆をお願いします。(/・ω・)/
小説 :https://ncode.syosetu.com/n3914et/
絵 :https://www.pixiv.net/member.php?id=894727
twitter:https://twitter.com/ghost66698




