探索してみたっ!
準備を終えた俺とモニカはついにダンジョン探索に乗り出す。
当初の問題である移動出来ない俺の運搬方法についてだが、持ち手があるので抱えて運ぶことも出来なくはないのだが、その場合は両手が塞がってしまうので武器を持つことが出来なくなる、そこで収納にあるロープを使い持ち手に引っかけてタスキ掛けにしてもらい運んでもらうことにした。
そして、その空いた手に元々装備していた棒を装備してもらっている。
ただ、その棒はお腹のあたりに俺を抱えて貰っているので、装備していても俺が邪魔になりまともに振り回せない状況なのだ。
では、なぜ装備をしてもらったかといえば、相手が向かってきたときに棒を突き出してもらい間合いを詰めさせ無いためのものだ、要はつっかえ棒だ。
敵が一体であれば俺の魔法で攻撃すればよいのだが、二匹以上になった場合にどうしても魔法の詠唱の隙が生まれてしまう、その隙をカバーするためのつっかえ棒だ。
装備を状況を確認した俺たちは部屋のドアの陰から通路に魔物がいないことを確認して通路に足を踏み出した。
モニカに描いてもらった地図を見る限り俺たちがいるこの部屋は地下二階でも比較的上階への階段に近い位置にあるようだ。俺たちはその地図に従い歩を進めていく。
明かりは無いがモニカは暗視スキル持ちだし、俺は魔物であるからなのか暗闇でも多少は目が効くので周囲を確認しつつ《隠密》スキルも使い、敵に発見されないように通路を進んでいく。
そしてしばらく歩くと、魔物に遭遇すること無く上階へ続く階段へ到着することが出来た。
(あの部屋で、そこそこの数の魔物を狩っていたから通路には魔物はいなかったのだろうか・・・)
そんなことを考えつつ、そこで少しだけ休憩をしてから上階へと進んでいく俺たち。
地下一階は先ほどの地下二階と比べると上階へ通じる出口、要はこのダンジョンの出口だが、そこまでの距離が少しある。
通路自体は複雑ではないのだが、その分見通しもいいので魔物に発見される確率も高くなる。
俺たちは先ほどよりも慎重に進むことにした。
そして三つ目の曲がり角を曲がろうと角から少しだけ顔を出し覗き込むと、そこには魔物の姿があった。
しかし、その様子は何か妙だ、床に倒れておりピクリとも動かない。
(姿からするとゴブリンだが、なんであんなところに寝てるんだ?)
俺たちは、しばらくそのゴブリンの様子を見つめるがまったく動く気配がない、このままではらちが明かないので俺はモニカにそのゴブリンへと近づく様に促す。
「モニカ、ゆっくりとあのゴブリンに近づくんだ・・様子を見たい」
モニカはコクリとうなずき、ゆっくりとだが足を進めていく、俺はいつ襲ってきてもいいように魔法を唱えられるようにする。
そして横たわっているゴブリンに近づいたのだが、結果から言えば襲ってくる心配はなさそう。
その理由は、仰向けに倒れているそのゴブリンの胸に大きな穴が開いており、血を流していたからだ。その傷は明らかに致命傷でありゾンビでもない限り動くことは無いだろう。
念のためモニカに棒の先でつついて貰うが反応は無い。
俺たち二人はそのゴブリンに近づきその惨状を確認する。
その死体の傷を見ると確かに胸に大きな傷があるのだが、ただの刺し傷ではなく何かを抉り出したようにも見える。
それ以外にもよく見ると切り傷や刺し傷があり、そしてそのゴブリンの頭には耳が無かった。どうやら切り取られているようだ。
その姿を見ると、どうやらそのゴブリンは何者かに殺されたようだ。
俺は、心当たりが無いかモニカに聞いてみることにする。
「モニカ、これは何が原因かしってたりするか?」
「う~ん、多分だけど冒険者の仕業だと思う」
「冒険者?、冒険者ってのはなんだ?」
「冒険者は魔物狩ったりダンジョンの宝を探したり、いろんな依頼をこなしてお金を稼いでる人たちのこと」
「なるほど、そんな職業もあるんだな・・・」
そして、モニカは若干俯きながら続きを答えてくる。
「私を連れてきたあの人たちも冒険者・・・」
あまり思い出したく無いことだったのか、その言葉は弱々しかった。どうやら辛い思いをさせてしまったようだ。
「モニカ、わかった説明はもういいよ、ありがとう」
俺はそれ以上モニカに辛い思いをさせたくなかったので、そこで会話を打ち切った。
そして俺はこの後をどうするか考えることにする。
(さて、どうしたものか、冒険者か・・・遭遇したら間違いなく問題が起きそうだな。)
魔物の俺はもとより、奴隷扱いされていたモニカもどんな目に合うかわからない。
(中にはまともな奴もいるかもしれないが、今は運に任せて失敗は出来無いし極力合わない方がいいだろう・・)
俺はそう判断してモニカに伝えようとするが、その時前方からまだ遠くのようだが足音が聞こえてきた。
その足音をモニカも聞き取ったのか、ビクッと体を震わせる。その足音はどうやらこちらに近づいてきているようだ。俺はモニカに小声で伝える。
「モニカ、足音が近づいてくる、もしかしてモニカの言っていた冒険者かもしれない、俺が魔物とばれると不味いから、ここはいったん逃げよう」
その意見にモニカは棒を握りしめながらコクコクとうなずく。モニカも早く逃げたいようだ。
「どんな奴らか見たいから、一旦さっきの通路の隅の暗がりに移動しよう」
モニカは俺の提案にうなずくと早速元来た通路の方へと移動を開始する。
そして、通路の角の暗がりに移動し身を潜めた俺たちは《隠密》で気配を消してその足音の主たちが現れるのを待ち構える。
しばらくすると先程俺たちがいた通路の方から足音とともにうっすらと人影が見えてきたのだった。
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