外に出る相談をしてみたっ!
俺とモニカは最初の狩りが成功した後も順調に獲物を狩り続けていた。
人の血の匂いがこの部屋に充満していたせいか、あれから《ジャイアント・バット》や《ゴブリン》達がたびたびこの部屋に訪れていた。しかし、上位種や強い魔物などは現れなかったので、問題なく倒していき経験値と食料にしていく。
そして、モニカの食料になる《ジャイアント・バット》だが、いろいろとあり今は仕留めた後に俺が体の中に収納し、適当な時間になったら必要分を収納から出して食べさせるようにしている。
最初は焼き《ジャイアントバット》をそのまま渡したのだが、思った以上に凄い勢いで食していくモニカに圧倒されてしまった。《ジャイアント・バット》は名前の通り大型の蝙蝠でありサイズは中型犬ほどの大きさがあるのだが、気がついた時には半分近くを食されてしまった後だった。
まさかそんなに食べると思っていなかった俺は、慌ててモニカの食事の手を止めさせて残りを収納へと放り込んだのだった。
そして、その時のモニカは途中で獲物を取り上げられたせいか若干ムッとしながらこちらを見返してきていたのだった。
まあ、その時のやり取りはこんな感じだ・・・。
「そ、そんな目をしてもダメだからな。そんなに食べられたらいつまでたっても食料がたまらないだろ、そうしたらここから逃げることももできないんだぞ!」
「む~、おなかすいた・・・」
「いま、さんざん食べたろっ、次の食事の時間までお預けだ!」
「箱さん、けちんぼ・・」
(俺か?、俺がケチなのか?)
だが、すごい勢いで食べるモニカの自由にさせていたらいくら食料があっても足りなそうだ、余裕がある時であれば好きなだけ食べさせてあげたいところだが現状は無理なのだ、なので俺は心を鬼にしてこう告げる。
「モニカ、次の食事からは俺が食べていい量を切って出すからそれで我慢するんだ」
俺がそういうとモニカは「むぅぅ~」という唸り声を上げて反抗してくる。
「そんな声上げてもだめだからな!」
そうすると唸ってもは効果が無いと思ったのかモニカは作戦を変えてきたのだった、ちょっと下向きの姿勢から上目遣いに目をウルウルさせて見つめてくる、どこでこういうことを覚えたのかは知らないがなかなか効果は抜群だ、前にもやられたが幼子の涙攻撃はやはり精神的にくるものがある、これではまるでいじめている様ではないか、もはや俺の心はハートブレイク寸前である。
しかし、その仕草に若干・・・いや、だいぶやられ気味だった俺だが、これはモニカのためと割り切り無情に告げることにした。
「ダメだったら、ダメだ!」
そういうとモニカは俺の決心が変わらないと判断したのか若干ムッしているが、それ以上何もいってこなくなった。理解してくれたかはわからないが、まあこちらも意地悪でしている訳ではないので今は我慢してほしい。
そして、その時はとりあえずは納得してくれてたと思っていたのだが、このあとの食事のたびに何も言わないが上目遣いで催促してくるようになったのだった。
俺が強めに言ったせいか口で催促はしてこないが目で訴えかけてくる。
(そこそこの量を出しているはずなのに、どれだけ食いしん坊なんだ・・・)
当然、俺は強い意志を持ってその要求を跳ね除け、跳ねっの・・・・
(ウルウル・・・)
・・・・そっとナイフで肉をひとかけらだけ切り取って渡してやる。
(こ、これは要求に負けたわけじゃない、ちょっと切り取った量が少なかったから渡しただけで、もともと渡す量だったんだ・・・、俺は断じてウルウルに負けたわけじゃない・・・)
と、食事のたびに自分に言い訳する俺であった。
後は一応は食材になる《ゴブリン》だが、これに関してはまともに食べれないほど不味いとわかっているためかモニカは食べたいとは言わなかった。なのでこいつらは今まで通り《捕食》して俺の経験値とさせてもらう。相変わらず激マズだけどもう慣れたもんだ。
とまあそんなやり取りがあり、そのせいあってか今は食料はだいぶたまってきた。それに経験値も稼げている。
それと今まで《ゴブリン》は装備ごと《捕食》していたが、モニカの装備にするために今は装備を剥いで《捕食》することにしている。
後はMPの余裕がある範囲で《アイテム作成》を行い持ち物を充実させてもいる。
そして現在のステータスはこんな感じだ。
名前:名無し
種族:ミミック クラス:トラップ・ミミックLv6
HP:54/54 MP:85/85
筋力:23 耐久:37 敏捷:0 器用:23
知能:24 精神:20 魅力:0
スキル:噛みつきLv8、捕食Lv8、舌Lv9、鑑定Lv4、収納Lv4、アイテム作成Lv6
ファイアボルトLv6、スリープLv4、音操作Lv4、隠密Lv6、物理攻撃軽減Lv1
罠作成Lv4、罠設置Lv4、魔法罠(麻痺)Lv4、偽装Lv7
収納品:錆びたナイフx8 棒x5、ずだ袋x3 ネズミの死体X2
折れたショートソードx2、腐りかけの肉x4、こんがり焼き大蝙蝠x4
槍の罠x3、普通のナイフx3、水1瓶x3、水1瓶(1/2)x1 空瓶x2
干し肉x2、石鹸x1、松明x2、チョークx1、革鎧(小)x4、ぼろ布x1
麻のロープx1
名前:モニカ
種族:ダークエルフ クラス:無しLv5
HP:9/9 MP:18/18
筋力:7 耐久:6(+2) 敏捷:10 器用:8
知能:13 精神:10 魅力:11
装備:ぼろぼろの服、首輪、良品ナイフx1、棒x1、虫食いローブx1、擦り切れたサンダルx1
スキル:ダークビジョンLV5、影操作LV1、ダークミストLv3、隠密Lv3
出てきた魔物のレベルが低いせいか、そこそこ経験値を稼げていると思っていたが俺はほとんどレベルは上がっていなかった、しかしここで予想外にモニカのレベルが上がっていることに気がついた。
人のレベルはどうやって上がるのかわからないが戦闘の経験か食事か、それとも両方なのか不明だが上がってくれることは素直にうれしい、これで少しだが生き残れる確率が上がった。
そして装備が整って来て、食材もそろってきたので俺はモニカに次の行動を起こそうと伝えることにした。
「モニカ聞いてくれ」
「んっ?」
「敵を倒すのも安定してきたところだがいつまでもここにいるわけにはいかない、いつ強敵が現れるかわからんからな、だから前にも言ったと思うがそろそろこの部屋を出て外に行こうと思う」
そう伝えるとモニカはコクコクとうなずいた。
「外に出れば危険はあると思うが、この部屋にいてもそれは同じだ、今まで偶然に強い魔物が現れなかっただけかもしれない、だから出来るだけ早くここを脱出して安全な場所に行きたいと思う」
それにもモニカはコクコクとうなずく。
「ただ焦ってやみくもに飛び出して行っても迷うだけで、かえって危険な目に合う可能性がある。そこでだここにボロ布とチョークがある」
俺は収納場所から取り出したボロ布とチョークをその場に広げる。
「このチョークを使ってその布に地図を描いてもらおうと思う、今居る場所はこんな感じかな」
俺はそういうとお手本にチョークで布に簡単なこの部屋の見取り図を描いた。
まずは部屋が長方形なので長方形を描き、奥の方にある扉が分かるように長方形の隅の方に扉っぽいマークを描いた。
「こんな感じで描いていってくれ、外の通路も似たように書いてくれればいい」
そういうと俺はモニカにチョークを手渡し
「この部屋の外の通路を覚えてるだけでいいから描けるか?」
と告げるとモニカは若干戸惑いながらだが、たどたどしく布へと外の通路の状況を描きだした。
「お、なかなかうまいじゃないか、その調子で描いてくれ、わからなかったらそこでやめていいからな」
モニカはコクリとうなずき布へとチョークを走らせていく。そしてしばらくするとモニカの手が止まったので俺は訪ねてみる。
「覚えているのはこのくらいか?」
そうするとモニカはコクコクとうなずいた。それを見た俺はモニカの描いた地図を眺めてみる、そうするとこの階の通路の状況が何となく見えてきた、ところどころ切れているのはそちらに行っていないか、覚えいないかだろう、そうして地図を眺めていると不思議なギザギザのマークがあることに気がついたので聞いてみることにする。
「モニカ、このギザギザはなんだ?」
「そこは階段だよ、私たちは上の階から来たんだよ」
(なんとこのダンジョンはまだ上の階があるのか・・・脱出に苦労しそうだ・・・)
そう思いつつ、この迷宮がどれだけ深いのかを聞いてみることにする。
「モニカたちはどのくらい上の階から来たんだ?」
「私たちは二回階段を下りてきたよ」
「そうすると、上に一階分のフロアがあるだけか、それなら何とかなるかもしれないな・・・」
モニカの答えと地図から何となくこのダンジョンを理解した俺は、慎重にいけば脱出出来る可能性は十分あると判断し、モニカに告げる。
「それじゃ、これからこのダンジョンを脱出しようと思う、モニカもそれでいいか?」
「うん、いいよ」
「そうか、それでは出発しよう、モニカはこの地図とチョークも持って描かれていないところに行ったら付け足すようにしてくれ、そして移動中は常に《隠密》を使うんだぞ」
俺は移動中の注意事項をモニカに告げる、モニカはいつも通りにコクコクとうなずいた。
これで出発の準備は整った、転生してここにきてから長い道のりだったがこれでやっとこのダンジョンとおさらば出来るかもしれない。
(外の世界はがどんなところかは知らんが、ここよりは安全だろう・・・)
俺はそう考えつつ部屋の外へと踏み出すのであった。
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