魔物を刈ってみたっ!
準備を済ませた俺とモニカは魔物が現れるのを待ち構えている状況だ。
といっても俺は動けないのでいつもと変わらない待ちのスタイルであるが、今回はモニカがいる。
いままでは箱に偽装して敵が無警戒で近づいて来たところを仕留めていた、しかし今回は囮のモニカに警戒が行き今までよりも俺や罠への警戒が薄まるだろう。
そして囮役のモニカだが、当然、敵の攻撃対象になるので危険になる、だがもちろん食いつかせるつもりはない、獲物は俺のテリトリーに入った瞬間に即座に始末するつもりだ。
なのでモニカがうまく俺の方へと誘導出来るかどうかが、この方法の成否を握っているといっていい。
地面の罠の場所はあらかじめ教えてあるので、罠をよけつつ敵を引き付け俺の方に逃げてきてくれれば後は俺が魔法なりスキルなりで仕留める算段だ。
二人での戦いはこれが初めてになるので、うまくいかないこともあるかもしれないがそのあたりはやりながら修正をしていこうと思う。
俺たちが準備を終えてしばらく待機をしていると、聞きなれた羽音が聞こえてきた、あれは《ジャイアント・バット》の羽音だろう。
(丁度のぞんでいた食料が来てくれたようだ、やはりこの血の匂いにつられてきたみたいだな・・・)
隣にいるモニカも羽音に気がついたようで、棒をギュッと握りしめている。若干緊張しているようなので俺は小声で声をかけた。
「モニカ、そんなに緊張しなくていい、作戦通り罠の場所だけ気を付けて俺の方に来てくれればいい、後は俺がやるから」
そういうとモニカはコクコクとうなずき大きめに深呼吸をして立ち上がった。その様子は若干緊張を残しているようだがガチガチになっているわけではなさそうなので作戦には問題ないように見える。
モニカは囮になるため立ち上がった後に扉の方に進んでいき棒を構える。
先ほどの羽音はどんどん大きくなってきていて、だんだんと扉の方に近づいてくるのがわかる。目標はこの部屋で間違いないだろう。
しばらくそのまま待っていると果たして想定した通り《ジャイアント・バット》が俺たちのいる部屋に飛び込んできた。
俺はすかさず《鑑定》を行う。
名前:名無し
種族:蝙蝠 クラス:ジャイアント・バットLv6
HP:17/17
MP:25/25
装備:無し
スキル:噛みつきLv2、音操作Lv3
(若干レベル高めだが普通のジャイアント・バットだな)
飛び込んできた《ジャイアント・バット》は早速モニカに気がついたようでモニカに相対する。モニカも暗闇でも見えるスキルがあるのでその動きに気がついたようだ。
相対する一人と一匹であるが、モニカが作戦通り俺の方に下がり始めた。
《ジャイアント・バット》はその逃げ腰のモニカの姿にいけると判断したのかモニカの方にどんどん迫ってくる。
モニカは背中を見せないように、だが俺の言った罠の位置をチラチラ確認しつつ下がってくる。
そして俺の《舌》の範囲まで《ジャイアント・バット》を引き付けたところで、意識がモニカに向かっている《ジャイアント・バット》めがけて魔法を詠唱する。
「ファイアボルト!」
突然、横合いから飛んできた《ファイアボルト》に《ジャイアント・バット》は避けることも出来ずにその魔法を受けてしまった。直撃である。
《ジャイアント・バット》はそのまま床へと墜落してくる。そして《鑑定》をするとHPが0になっていた。問題なく仕留めることが出来た様だ。
もともと俺一人の時も問題なく仕留めてきた敵ではあるが、今回は初戦のモニカもいるので経験を積ませるには丁度良かったと思う。俺はほっとしているモニカへと声をかける。
「モニカ、よくやった、そんな感じで引き付けてくれればいい、無理はする必要は無いからな」
だがモニカからは疑問が返ってきた。
「あれでいいのかな・・・、私なにもしてないで逃げてきただけだよ?」
どうもモニカは自分が戦わず逃げて来ただけで褒められてることが不思議なようだ。なので俺は説明することにする。
「モニカが敵の気を引き付けてくれたおかげで俺は無警戒の敵へ魔法を放つだけでよかった、対象なりとも警戒されていると魔法を外す可能性もあるしな、この差は大きいと思う」
俺の説明にモニカはコクコクとうなずく。俺は続けて、
「それにな下手に手を出して怪我をされても困るしな、さっきも言ったがここには怪我をしても治す手段は無い、ちょっとくらいの怪我なら自然に治るだろうが、大けがをした場合はどうしようもなくなる、だからさっきみたい怪我をしない様にやってくれればいい」
すべて説明を終えるとモニカは「わかった」と答えてくれた。どうやら納得してくれたようだ。
俺は説明が終わると先ほど仕留めた《ジャイアント・バット》を舌で持ち上げ収納をしようとする。魔法でこんがりと焼かれた《ジャイアント・バット》は丁度いい感じに焼きあがっているようだ。
(このまま収納しておけば後で解体すればそのまま食べれそうだな)
そうして《ジャイアント・バット》を俺の口元へもっていこうとすると、モニカの視線が《ジャイアント・バット》に釘付けになっているのに気がついた。その口元からは涎が垂れている。
(先ほど食べたばかりなのにもう食べたいのか?くいしんぼうか?)
俺はその視線を無視して《ジャイアント・バット》を収納する。そうするとモニカは心底残念そうな顔をしてくるので念のために言い聞かせる。
「そんな顔しても駄目だからな、さっきも説明したが今は食料が無い状況だから我慢してもらうしかないぞ。《ジャイアント・バット》は俺の中へ収納したから次の食事の時までお預けだ」
そういうとモニカは一応は納得してくれているみたいだが「う~」とうなり声をあげてうるうるしながら上目遣いでこちらを見つめてくる。
(そんな顔しても出さないからな・・・)
うるうる攻撃に負けそうになる自分と葛藤しながら次の敵へと備える二人であった。
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