anyone side
「ねぇねぇ、なんか、近くで見たらすごい可愛い子だったねぇ。」
「誰が?」
「安藤唯ちゃんー。いつも横顔しか見たことなかったからびっくりしちゃった。」
「あー、まぁ、確かにな。」
やっぱり司くんもそう思うー?と真未は俺の腕にしがみついてきた。
「確かに、もっと地味子なのかと思ったら、印象と違ったかも。」
「だよねぇ。絶対顔あげて歩いたらモテるのにぃ。」
「さっきだって、ほとんど目ぇ合わなかったしな。」
後ろを歩いている柚までが、真未と一緒になってそんなことを言っている。
確かに顔立ちは整ってるし、肌も白いし、女子の中ではかなり可愛いほうだというのは見た瞬間にわかった。
でも、なぜか本人はかなり自分のことを下に見ているというか、自己評価がとにかく低い。
「あたし絶対唯ちゃんと友達になってぇ、お洋服とか選んであげたいもん。」
「真未のセンスだといっつもピンクとフリルだろーが笑」
「えー?だめー?唯ちゃん似合うと思うんだけどなぁ。」
俺達がおりる数駅前で安藤は先におりて、それからずっとこの調子である。
「律は?どー思う?」
「あー…、よくわかんねぇけどー…。屋上で一瞬目が合ったとき思いっきり逸らされたんだよなぁ。」
「律くん怖いからだってぇ。」
「別に怖くねーだろ。」
俺と真未は一応普段から同じ教室にいるわけだから、顔くらいわかっているだろうけど
律と柚は本当の初対面だったしなぁ。
極度の人見知り、とか、そんな感じのやつなんだろうか。
「あたし、絶対明日朝一番に話しかけるんだぁ。」
「でも安藤来たら速攻寝てんじゃん。」
「それでもおはようって言うのー。アタックあるのみーだよ!」
「アタックねぇ。」
楽しみだなぁ、と言いながらうろ覚えの鼻歌を隣で口ずさむ真未。
俺はその鼻歌を家の前まできかされてから、自宅に帰った。