anyone side
「なぁ。」
「んー?どうしたの、司くん。」
「あの、1番ドア側の1番前の女、今日学校来てたよな?」
「えーっと、確か、安藤さん?だっけ?」
よく見たら机の横に鞄がかかったままになっている。
…ということは、やっぱり朝からいたってことだ。
「あの子、確か律くんにぶつかっちゃった子だよねぇ。どーしたのかな。」
「入学式の初日にさぼってたやつだよな?」
「あー、そうそう。真面目そうなのに、なんでだったんだろぉ。」
今日も朝から学校来てるはずなのに、1限目から1つも授業を受けていない。
「司くん、気になるのぉ?」
「いや、そーゆうわけじゃねぇけど。」
「あたしの予想はぁ、多分ふつーに保健室にいると思うよぉ?」
気になるならお昼にでも覗きにいけばぁ?と真未は俺に言った。
「…荷物、届けてくるわ。」
「いうと思ったぁ。」
「うっせ。先律達と飯食ってていいから。」
昼休みのチャイムが鳴ってもそいつは一向に帰ってこなくて
俺は、何かが引っかかっているような気がして保健室に向かった。
「失礼しまーす。」
昼休みだからなのか、保健室には先生も誰もいないように見えた。
「…まじで具合とか悪いのか…?」
てっきりただのさぼりだと思っていた俺は、そこで初めて躊躇した。
奥のベッドだけカーテンが閉められていて、半透明の白いカーテンに、ぼんやり誰かを思わせる影が映っていた。
「あー、安藤、で、あってるかー…?」
俺が呼ぶと、その影は少しだけ動いて、規則正しい寝息がきこえてきた。
どうやら本当に眠っているらしい。
まだ1度も話したこともない、ましてや面識もない俺にいきなり起こされても困るだろうと思い
俺はそいつが起きるのを待つことにした。
「もしもし真未?」
「あれぇ、どうしたの電話なんてー。」
「お前が言った通り、保健室にいた。」
「そっかぁ。それで、荷物渡せたぁ?」
「いや、なんか、まじで寝不足っぽいから、起きるの待つことにするわ。」
俺がそういうと、電話越しに真未が驚いたのがわかった。
「じゃあ、もしかして次の授業さぼりー?」
「多分な。」
「ずるーい。あたしもさぼりたーい。」
「今日はあと1限しかないだろ。」
文句を言っている真未を無視して、俺は電話を切った。