anyone side
「なあ、律、さっきの子さ。」
「さっきの子?」
「ほら、ついさっきすれ違った。」
「あー、顔はよく見えなかったけど。」
「あの子、なんであっち側に歩いて行ってたんだろ。体育館あっちじゃねーのに。」
「俺らと同じでさぼりじゃね?」
律がいうと、俺の隣からえー?と甘い声がした。
「そんな感じじゃなかったじゃんー。なんか、真面目そう?」
「真面目ってか地味なだけだろ。」
「ちょ、柚ちゃん、そんなはっきり言わなくてもいいじゃーん。」
「そー思ってたくせに。」
俺たちはいわゆる幼馴染ってやつで、珍しくもなんともない、本当にガキの頃からの付き合い。
挙げ句の果てには実家も近くて、唯一ひとり暮らししている律のマンションさえ近くにあるというくっつきっぷりだ。
「そーいえばぁ、クラス、律くんと別れたんだってー?」
「別れたっつっても隣だし、お前おんなじクラスだろ。」
「まあねー?」
この甘ったるい声の奴は、俺の隣の家に住むお隣さんってやつ。容姿も性格もとにかく甘ったるくて、かすかに甘い匂いすらする奴である。
「柚ちゃんと律くん、あたしと司くんなんて、いつも通り過ぎておもしろくなーい。」
「それは俺も同じだっての。」
「司くんといると目立つしー。」
「その言葉もそっくり返してやる。」
そもそも、4人でいること自体目立っているわけで。
こんだけ派手なメンバーが揃えば、そりゃあ目立つに決まっている。
「また3年間一緒かぁ。」
「嫌なら抜けてもいーよ、真未。」
「そ、そんなこと言ってないじゃん!?」
柚につっこまれて慌てているそいつを眺めながら
俺も、おんなじことを考えていた。