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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅲ 引越し、そして進化
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96.新しい住処の浴室でくつろいでみました。

『ついに完成したな。この住処は色んな部屋に入れる所が良い』



 そっか。

 そういえば前の住処ではブルールは入口にあるブルールの部屋にしか入れなかったんだもんな。

 まだ俺はベビーの体で弱かったから防衛上やむを得なかったとはいえ、ちょっと悪い事をしていたな……。



『なかなかしっかりとした家屋だ。まさかこの家が数時間でできたものだとは誰も思うまい』

「だけどちょっと物足りないのよね。なんか殺風景というか……」



 ケロマが何だかむずむずしているようだ。

 おい、また勝手に住処を改造しようとするんじゃないぞ?

 釘は刺しておいてあるし、俺が住処で見張っていれば別に大丈夫だとは思うが。


 まあでもケロマが言いたい事も分かる。

 今は部屋の形だけは作ったが、何の家具も置いていないし、装飾も一切していない状態だ。

 何かしらオシャレとまではいかなくても、多少の家具や装飾があればいいんだけどな……



「ねえ、カンガ。あなたって確か【細工】のスキルを使えたわよね? それで何か作れない?」

『うーん、作れないこともないだろうが、今まで使っていたような植物がこの辺りにないからな……』

「この辺りにはたくさん植物があるわ。だったら何かしら一つ位は装飾に適する植物があってもおかしくないんじゃない?」



 確かに。

 せっかく新しい土地まで来たんだし、そこに生息する新しい植物で色々と試してみるのも悪くないだろう。



『そうだな。色々と植物を採取して試してみよう。何か良さそうなものが見つかるかもしれない』

「やったー! じゃあ早速行こうよ、植物採取に!」

『いや、ちょっと待ってくれ。汗でベタベタだから先にお風呂に入ってからでもいいか?』

「あっ、そうね。確かにスッキリしてからの方がいいかも。じゃあみんなスッキリしてから行きましょう!」



 こうして一回、みんなそれぞれ浴室で汗を洗い流すことにした。


 ちなみに浴室にはもちろんシャワーなんてものはない。

 だけど湯船を作ってあるし、アクアペンダントを使って水やお湯の調節をすることで快適な入浴ができる。

 お湯用のアクアペンダントと水用のアクアペンダントを使いわけるとすごい便利だ。

 もう一つ水量調節用のアクアペンダントを用意しておくことでさらに便利になっている。


 まあ俺自身は【水操作】である程度自力で水の温度を変えられるから、アクアペンダントはそれほど必要ないんだけどな。

 あくまで他のみんなが使う用だ。



 持ってきた極上綿花のタオルで体をふき終えてから俺は共有スペースに戻る。



「あっ、カンガ戻ってきたのね。湯加減はどうだった?」

『ちょうど良いようにしておいたぞ。一応アクアペンダントで温度調節できるようにしておいたから、もし温度が合わなかったらそれで各自調節してくれ』

「ありがとう! じゃあ今度は私が入ってくるね! カンガ、気になってのぞいたりなんてしちゃ駄目よ?」

『……そんなことは分かってる。とにかくさっさと入れ。早くしないと一人置いていくぞ』

「あっ、ひどーい! もうカンガなんて知らないから!」



 プンプン怒って浴室へと入っていくケロマ。

 ケロマは何を怒っているんだ?

 まあどうせケロマの事だし、浴室から戻ってきたらケロッとしているだろうけど。



『そういえばお湯で体を洗ったりして何か意味があるのか? 別に汚れを落とす位ならその辺にある川でも大丈夫だろ』



 ブルールは不思議そうにたずねてきた。

 そっか。

 普通、魔物は浴槽に使って体を洗ったりなんてしないもんな。

 理解できないのも無理ないか。



『そうだな。汚れを落とす意味もあるが、疲れを癒す効果もあるんだ』

『疲れを癒す? そうなのか?』

『ああ。ポカポカしてな。なんかじっとしているだけで落ち着くんだよ。ケロマがお風呂から上がったら一緒に入ってみるか? 体洗ってやるぞ』

『……あまり気はすすまないが、一回だけやってみるか』

『一回は体験した方がいいぞ。多分気に入ると思うからさ』



 野生の動物って匂いが消えるのを嫌がるって聞いたことがあるけど、ブルールもそんな感じなんだろうか?

 まあ実際に入ってみてどういう反応するかで判断すればいいか。


 お風呂はいいものだ。

 体がサッパリしてスッキリするし、浴槽に入っている間はとても癒されるしさ。

 唯一の欠点は出た後がとても暑くなることだろうか。

 体があったまっているんだから当然のことなんだけどさ。

 うまく体温調節しないと入浴後も汗がベタつくことはよくある。


 実際今も……ってあれ?

 そういえば今そんなに熱くないな。

 湿気もそんなにないし、とても快適な温度だ。

 外はあんなに蒸し暑かったというのに。


 地下は温度変化が少なくて過ごしやすいとは聞くが、それにしてもおかしい気がする。

 何か魔法の効果でもかかっているんだろうか?



『そういえばさ、この場所って全然ジメジメしていないよな。どうしてなんだろう?』

『確かに言われてみればそうだな。とても過ごしやすい温度と湿度になっているな』

『ああ、それは恐らく拙者が持っている碧水晶が原因だろう。快適な温度や湿度にするために働いてくれているからな』



 碧水晶……?

 ああ、そういえばリザードマンって蒼水晶を持っているんだったな。

 グリザーは他のリザードマンと違って緑色をしているから、水晶の色が青にちょっと緑がかった碧になっているのか。



『蒼水晶と性能は変わらないのか?』

『ああ、変わらない。見た目が違うだけだからな』



 ふーん。

 というか、そういうことなら早く言ってくれよ。

 それなら蒼水晶を求める必要もなかったんじゃないか!?

 グリザーがまさか一緒に来るとは思わなかったし、グリザー自身もその予定がなかったんだろうから、無理もないんだけどさ。

 まあ結局快適な生活が送れる訳だし、とやかく言う必要もないか。



 しばらくブルールやグリザーと談笑していると、ケロマが浴室から出てきたようだ。



「みんなお待たせー。……なんでカンガは全く浴室に来ようともしなかったのよ? 【追跡】で見ていたけど。普通こんな美少女がお風呂に入っていたらのぞきたいと思うでしょ?」



 ケロマがため息をついて、がっかりした様子でそう言っている。


 何言ってんだ、コイツ。

 のぞくなと言ったのに、のぞかないことでがっかりするとか面倒すぎるだろ。



『のぞくなって言ったのはお前だろ』

「そう言われたら逆にのぞきたくなるものでしょ? しかもこんな美少女の体なら尚更」

『……ブルール、さっさと浴室に行くぞ』

「あー!? ちょっと、逃げる気!?」



 ケロマの相手なんかしていたら日が暮れちまう。

 俺は逃げるように浴室へ向かい、ブルールを洗ってやることにした。

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