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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅲ 引越し、そして進化
80/222

80.人間に名前を付けてみました。

 名前を上書きできるかどうかはよく分からない。

 だがそれ以前に、まずコイツの名前を決めないとな。


 コイツの名前か……

 ブルールやグリザーと違って見た目から名付けることはできないよな。

 人間だし、見た目は全然普通の人間だからな。

 中身がアレなだけで。


 だとしたら他の特徴から名付けるしかないか。



 コイツの特徴。

 ステータスを変えるという【研究】のスキル。

 そしてよく出てくるロマンという言葉。

 研究とロマン。

 けんきゅうロマン。

 ケンキュウロマン……


 よし、決めた。



「これからはケロマと呼んでもいいか?」

「ケロマ……なんかケロって所がカエルみたいな名前。でも、いいわね!」



 別にカエルは全然関係ないんだけどな……

 まあ気に入ってくれたようで何よりだ。



「うん。ステータスにもちゃんと名前が上書きされているみたい。良かった!」

「おお、それは良かったな」

「これも全部あなたのおかげよ! えっと名前は……」

「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺はカンガという」

「カンガ……カンガ、ありがと!」



 そう言ってケロマが急に抱き付こうとしてきたのだが、俺は華麗にスルーした。



「な、なんで避けるのよ!? せっかくお礼のハグをしてあげようと思ったのに!?」

「なんでいちいち抱きつこうとしてくるんだよ? カップルでもあるまいし」

「……そ、そうね。ちょっと調子乗っちゃったかも……ごめん」



 あれ?

 なんか謝られたんだけど。

 コイツが謝ってくると逆に不気味だな。

 何か企んでいるのか?

 まあ気にするだけ無駄だろうけど。


 そういえば名前が上書きされたって言っていたな。

 俺の【観察】でも確認することはできるんだろうか?

 ケロマの【命名者】になった訳だし、多少は変わったかもしれないな。

 ちょっと【観察】してみるか。



 ケロマ【ヒューマン】lv28

 HP  129/ 129

 MP 9999/9999

 攻撃力     89

 防御力    128(+18)

 魔法攻撃力  327(+31)

 魔法防御力  309(+27)

 素早さ    102(+10)

 スキル

 研究lv?、観察lvMAX、追跡lvMAX、炎魔法lv13、氷魔法lv12、雷魔法lv12、風魔法lv14、光魔法lv12、闇魔法lv11

 特殊スキル

 研究者、魔法の極意、被命名者



 名前は確かに上書きされているみたいだ。

 それに【命名者】の効果でケロマの本当のステータスを見ることができている。


 ……って、は?

 MP9999ってなんだよ?

 訳が分からない。


 一応他の能力は普通みたいだけどさ。

 それでも今まで見てきた人間の中ではだいぶ強い方だけど。


 それにしても、なんでMPだけカンストしているんだ?

 いわゆる転生者特典ってやつか?

 俺にとっての【考察】さんみたいなさ。

 でもケロマはMPだけでなく【研究】も多分転生者特典でありそうなんだよな。

 レベルが?表示になっているから相当レベル高いだろうし。

 恵まれているな、コイツ。



「カンガに名前を付けてもらったから、私、ブルールちゃんとグリザーさんと話してくるね!」



 そう言ったケロマはブルールとグリザーの所へ向かった。

 そして再び自己紹介が始まったようだ。


 ケロマは意外にもブルールやグリザーと楽しく話しているようだった。

 全然性格が違うからてっきり話も噛みあわないと思っていたから意外だな。


 こっそりブルールに様子を聞いてみることにした。



『ブルールはケロマのこと、どう思ってる? うまくやっていけそうか?』

『ああ。ケロマ、意外とおしとやかでいい子だぞ。しっかりしている奴だよな』



 へ?

 ケロマがしっかりしている……?

 何かの冗談だよな。

 だってあのケロマだぞ。


 信じられない俺はケロマとグリザーの会話をこっそり聞いてみることにした。



「グリザーさんのその槍、とてもカッコいいですね!」

『お褒めの言葉、感謝する』

「いつも磨いているんですか?」

『ああ。時間が空いたらいつも磨くようにしている。いつ戦いになっても大丈夫なようにな』

「凄いですね! 私にはとても真似できそうにないです」

『別に真似しなくてもよい。拙者は拙者。お主はお主らしくあればよいのだ』

「そ、そうですよね。ちょっと元気が出てきました!」



 普通……だと?

 ケロマは確かに普通に話している。

 あのずうずうしさ、そして自分勝手さはどこへ消えた!?

 さっぱり分からねえ……



「ブルールちゃんとカンガも一緒に話しましょう!」



 なんか話に誘われたみたいだ。

 というか、今更だけど、何で俺だけ呼び捨てで呼んでいるんだ、アイツ。

 別にさん付けで呼べとか言う気はないんだけどさ。

 色々と謎が多い奴だな……


 ケロマに色々悩まされつつも、俺はみんなと会話をすることにした。




 楽しく会話をする俺達。

 しかし、その時間は長くは続かなかったようだ。



「侵入者!? みんな、あそこに隠れて!」



 そう言ったケロマはある場所を指さす。

 そこには教会にありそうな棺がたくさん置いてあった。

 恐らく棺に隠れてほしいということだろう。


 棺なんてどこから持ってきたんだ?

 まあそんなことはどうでもいいか。

 何か侵入者が来たらしいし、ケロマの言う通りにしてみよう。

 というかどうして侵入者が来たなんて分かるんだろうな?

 それも【研究】の能力なんだろうか。

 もしそうだったらかなり万能な能力だよな【研究】って。

 うらやましい限りだ。


 俺とブルールとグリザーはそれぞれ棺の中に入って隠れることにした。

 そしてケロマが一人その場に残る。

 ケロマ一人で大丈夫なんだろうか?

 まあ隠れてほしいとケロマが言うんだから大丈夫だとは思うけどさ。



 しばらくじっとしていると、遠くから声が聞こえてきた。

 そしてその声はだんだんと俺達の方へと近づいてきて……



「あ、アホーナ! まだお前こんな所にいたのか。お前って本当にアホだな!」

「うるさいわね。そんなの人の勝手でしょ!?」

「それにしても半年以上もここに居座るなんて正気の沙汰じゃねえよ。よく魔物に襲われなかったものだな」



 半年以上もここに居座っている。

 やはりケロマは俺が寝込んでいる間、ずっとここにいたようだ。

 なんて暇人なんだろうか。



「フン、私、運だけは昔から良いんだから。それくらい余裕よ」

「確かにお前の運はすごいよな。たったlv2しかないのにギルドランクBだもんな。採取系クエストしかしていないとはいえ、異常だわ」

「べ、別にいいじゃない。何か文句あるの?」

「別に文句なんてないさ。ただちょっと忠告しにな」

「忠告? 何かあったの?」

「ああ。実は最近この周辺でコボルドが大量発生しているらしくてな。ギルドの討伐依頼がくる位にさ。だから気を付けろって話だ」



 そっか。

 ケロマはステータス偽装をしているから他の人にはlv2の人間に見えているんだな。

 あのステータスで外を出歩いているというなら確かに誰でも心配になるわ。

 さすがにあのステータスに偽装するのは無理ある気がするんだけど。

 でもそれでまかり通っているなら俺が口を挟む問題じゃないか。



「わざわざありがとう」

「べ……べつに大したことじゃねえよ! だからそろそろ町に帰った方がいいんじゃないか? なんならおれが護衛してやろうか?」

「大丈夫。私、もうちょっとここで待ってみる。運命の人をね」

「そ……そうか。……分かった、気を付けてな。おれはもう行くぞ」

「心配ありがと。またね」

「ああ、またな」



 そう言葉を交わし終わると、足音が遠ざかる音が聞こえた。

 きっとケロマの話し相手が帰っていったんだろう。



「みんな、もう出てきてもいいわよ」



 そうケロマが言ったので俺達は棺から出ることにした。



『ケロマ殿、話していた人間はどういう相手なんだ? 何やら親しげなように見受けられたが』

「ああ、あいつは私のこの世界での幼馴染なの。ギルドの冒険者をやっているわ」



 ギルドの冒険者……

 多分俺達にとっては天敵となる存在だよな。

 さっきもコボルドの討伐依頼とか話が出ていたし、ゴブリンの討伐依頼もあるに違いないしさ。


 そういえばケロマがギルドでランクBだという話がでていたな。

 ということはケロマはギルドに所属しているのか。

 ちょっとギルドについて詳しく聞いてみよう。

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