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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
74/222

74.たくさんのリザードマンを治療してみました。

 湖から地上へと上がった俺達。

 地上を歩き、フワンタクサ草のある場所を探した。


 俺が干上がらせてしまった元湿地帯にはフワンタクサ草はなかった。

 そもそも湿地帯にはフワンタクサ草が生えていなかったからあるはずもないんだけどさ。

 だから湖から少し移動することになった。


 だがさすがはそこら中にあることで有名なフワンタクサ草。

 ちょっと歩けばフワンタクサ草が大量に生えている場所にたどり着いた。


 俺は迷わずバッグの中にフワンタクサ草を詰め込みまくった。

 ちなみにブルール用にフワンジョウ草のバッグ作っておいたので、ブルールにはそこにフワンタクサ草を入れてもらうようにした。



『なあカンガ。オレ達、金色の葉を探しているんだよな? こんな草を集めて一体どうなるっていうんだ?』

『実はな、この草がその黄金の葉になるんだ』

『え、この草が? 何でそうなるんだよ?』

『何でと言われても実際にそうなるんだから仕方ないだろ。実際にやってみせようか?』

『あ、ああ。そうしてくれると助かる。でないと、何のために今の作業をやっているのか分からないからな』



 ブルールはじっと俺のことを見てくる。

 うーん、そんなにジロジロ見られるとやりにくいな……


 一応今いるこの周辺は魔物も人間もいなさそうだし、ブルール以外に気付かれることはなさそうだな。


 でも緊張するな。

 これから【調合】をする訳だが、【調合】の一部始終を誰かに見せたことなんてないからさ。

 いつもなんだかんだではぐらかしてきたしな。


 さて、いつも通り、平常心で【調合】をしてみますか。



 まぜまぜ……

 


{ 黄金の葉を入手しました。 }



 はい、出来上がり。

 ほら、簡単だろ?



『…………どうなっているんだ、これは?』



 ブルールは混乱しているようだった。

 一応ブルールには部分的には話しているつもりだったんだけどな。

 目の前で物が変化する様子を実際に見せたらやっぱり理解できないことなんだろうか。



『な? フワンタクサ草から黄金の葉ができただろ?』

『……ああ、そうだな。こんなことができるなんて話は聞いたことがないが、でも実際にこの目で見たんだし、間違いないんだろう』

『信じてくれるのか?』

『信じるも何も、ここに黄金の葉があるんだから信じない訳にはいかないだろ』



 ブルールはやれやれとでも言うような表情をしている。



『まあカンガの事だし、こういうことを起こしてもおかしくはないか。さあ気を取り直して、フワンタクサ草を集めるぞ』

『ああ、よろしく頼む』



 さすがはブルール。

 こんな現象を目にしてもサラッと受け入れるとはな。

 まあ変に色々聞かれるよりは全然助かるんだけど。


 俺達は引き続きフワンタクサ草をバッグに詰め込む作業に取り掛かった。




 フワンタクサ草をバッグに詰め込んでからは再びリザードマンの町へと向かった。

 湖を往復することになるのだが、もうすっかり水中にも慣れたもんだな。

 呼吸するための空気があるって素晴らしい。

 それに【水流操作】のおかげで周りの水が俺達の移動をサポートしてくれるから移動も楽々だ。

 地上と変わらない、いやむしろ速いスピードで移動できているんじゃないか?

 本当、スキルって素晴らしいわ。



 そんなこんなでそれほど時間かからずにリザードマンの町へと戻ることができた。

 町に戻った俺達は多くのリザードマンが寝込んでいる例の建物の中へと入っていった。



 建物の中は相変わらず多くのリザードマンが寝込んでいた。

 ヒラメを倒したときに湧き上がっていた盛り上がりは当然なく、中は静まり返っていた。


 所々にリザードマンの家族や友人みたいな人も見かける。

 お見舞いに来ているんだろうか?

 そしてその中の一人に緑のリザードマンもいた。


 緑のリザードマンのそばで寝込んでいるリザードマン。

 そのリザードマンに見覚えがある。

 


『なあカンガ、緑のリザードマンのそばで寝込んでいる奴、ここで演説していた奴にそっくりじゃないか?』



 確かにそうだ。

 威厳溢れるその表情。

 顔や体がやせ細ってはいるものの、同じ人物のように思える。


 どういうことなんだろうな?

 まあ考えても仕方ないか。

 


『緑のリザードマンも困っていることだし、早い所、みんなの病気を治してあげられないか?』

『ああ、そうだな。俺は黄金の葉を作る。ブルールは俺が作った黄金の葉をリザードマンに使ってあげてくれ』

『分かった、そうしよう』



 こうして俺達のリザードマン治療作戦が始まった。



 俺はひたすら黄金の葉を量産する。

 ブルールはその葉を使って片っ端からリザードマンの病を癒していく。


 黄金の葉の効果は劇的であった。

 ブルールが他のリザードマンに黄金の葉を与えている最中に、最初の方に黄金の葉を与えたリザードマンの病は完全に消えてなくなっていた。

 病が消えたリザードマンは不思議そうな顔をして戸惑っている。


 そして、俺達がここにいる全てのリザードマンに黄金の葉を与え終わった頃、この中はちょっとした騒ぎが巻き起こる。

 何を言っているのかは分からなかったが、騒いだり、走り回ったりして皆、喜びに満ち溢れていた。

 何が起きているのか分からないといった様子でその場で呆然としている者もいた。


 建物の中にいる多くのリザードマンが動き出すので、俺達の居場所がなくなりそうだ。

 インビジブルブレスレットは姿を隠すが、本当に透明になる訳ではないからな。

 誰かにぶつかったりして変に思われることは避けたい。

 俺達はササッと建物から出ることにした。



『喜んでもらえて良かったな』



 そう言うブルールは何だかホッとしたような安心した表情になっていた。



『ああ、本当に良かった』

『緑のリザードマンも泣いて喜んでいたよな。よっぽど大事な友達だったんだろうな』

『そうかもしれないな』



 とにかく、これでリザードマンの問題も一件落着といった所か。

 後は武器を返してもらえれば俺としても万事解決だな。

 そのためにはとりあえず宿屋に戻った方が良さそうか。

 宿屋で大人しく待っていたことにしておいた方がリザードマンの心証はいいだろうからな。


 ブルールに相談しても、その方が良さそうとのことなので、早速俺達は宿屋に向かった。



 宿屋の裏側でインビジブルブレスレットの効果を切ってから宿屋の中へと入っていった。


 俺とブルールの姿を見た宿屋の主人はニコニコしながら何かを話しかけてきた。

 もちろん俺達には何言っているか分からなかった訳だが。

 多分リザードマンがヒラメに勝利したことが町中に伝わったんだろうな。

 だからこんなにご機嫌なのか。


 

 俺達は宿屋の主人に対してニコッと笑顔で返し、部屋へと戻っていった。


 さて、今日は色々あったし、もう寝るとするか。

 さすがに疲れたわ。

 いくら簡単に黄金の葉を作れるからといって、連続して【調合】しまくるのは体にくるな。

 さっさと寝よっと。


 こうして俺達はリザードマンの町での長い一日を終えた。


 



 ゴブリン生活九十四日目終了。

 ステータス表示は全く変化がないので省略。

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