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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
72/222

72.リザードマンの戦いぶりを見物してみました。

 町の入口らしき所が見えてきた。

 恐らくあそこが町の東部の入口なんだろう。

 そこには既に大勢のリザードマンが待機していた。


 これからの決戦に備えて待機中という所なんだろうな。

 ちなみにその中に緑のリザードマンもいた。

 一人だけ色が違うから遠くから見ても簡単に区別がつくな。



「*+‘*>+d}!!!」



 リザードマンの中の誰かが何かを叫ぶ。

 するとリザードマン達が一斉に移動を始めた。

 出撃の合図みたいなものをしたのかもしれないな。



『リザードマンが移動を始めたぞ。俺達も後を追うか』

『そうだな、そうしよう』



 俺達もリザードマンの後を追う。

 まあ、もちろん前線になる所ではなく後方から見守る形にはなるだろうけど。

 相手の能力は未知数だし、不用意に接近することは避けたいからな。


 町を出た所で、空気で覆われた部分を抜け、水中へと突入することになった。

 俺は慌てず、【水操作】と【水流操作】を使うことで俺とブルール分の空気を確保する。

 一回慣れればどうってことないもんだな。



 しばらく移動していると、リザードマンが何人かに固まった状態で様々な方向に散り始めた。

 いわゆる陣形みたいなものなんだろうか?

 全然その手の知識がないからどういう効果があるのかは分からないんだけどさ。

 

 多分、リザードマンがそういう陣形を組むということは、敵にいるということだろうな。

 俺達も巻き添えを食らわないように細心の注意を払う必要がありそうだ。


 

 それからリザードマンはその陣形を維持したまま移動を続ける。

 そしてある時、急に立ち止まる。

 

 そう。

 例の魔物が見える位置まで来たのだ。



 俺達はリザードマンよりさらに後方にいるのでかなり見にくいのだが、それでも何かがいることを認識できる。

 見た感じ、最初に俺達を襲ったヒラメよりも少し小柄だな。

 そして動きが断然速い。


 この距離でも【観察】って使えるのかな?

 一応試してみるか。




 スラッジソール

 エリュミュスの沼地や湖の底に生息する生物。

 体内に強力な毒を持っており、その毒を浴びた者に必ず死をもたらす。

 その特性上、病魔の魔物として恐れられている。

 小柄で動きが早い上、再生力も非常に強い為、倒すことは非常に困難。



 スラッジソールlv60

 HP ???

 MP ???

 ステータス 不明

 スキル   不明



 普通に【観察】できたな。

 認識さえできれば【観察】って距離は関係ないんだろうか。

 もしそうなら結構便利な能力だよな。

 一目見れば情報を知ることができる訳だしさ。

 まあ相変わらず見れる情報は少ないけど。

 敵のスキルなんて見れたことがほとんどないよな。

 もう慣れたけどさ。

 


「}*‘{+>*?‘+*」



 リザードマンが何かを叫ぶと同時に一部のリザードマンがヒラメに対して魔法攻撃を開始した。

 リザードマンから放たれる水の魔法。

 だがヒラメはその魔法をいともたやすく回避する。


 緑のリザードマンから、ヒラメに攻撃を当てるのが厳しいとは聞いていたが、まさかこれほどとは。

 こんなんじゃ、俺を襲ったヒラメを倒したときのような強力な魔法を使っても当たらない可能性が高いよな。

 動きをまず何とかする必要がありそうだ。


 そして何かがヒラメの口から高速で発射される。

 その何かが一部のリザードマンの集団に直撃し、攻撃を受けたリザードマンはその場にうずくまってしまった……



 泥の塊のようなものが発射されたようだが、何だったんだ?

 うずくまっているリザードマンを【観察】で見てみる。



 リザードマンlv26

 HP  38/110

 MP  52/ 92

 状態異常  疾病(特大)

 攻撃力    147

 防御力    146

 魔法攻撃力  256

 魔法防御力  159

 素早さ    121

 スキル    不明 



 あ、病気にかかっているみたいだ……

 これが病魔のヒラメの脅威というものか。

 なんて恐ろしい……



 ヒラメの攻撃を逃れた周囲のリザードマンがうずくまっている者を運びだそうとする。

 しかし、ヒラメはその周りのリザードマンを狙って再び弾を放つ!


 すると今回はリザードマンの周囲に水のバリアが張られ、難を逃れる。

 どうやらリザードマンの救護担当のグループが防御魔法を使ったようだ。

 そしてそのグループが負傷者を運びだし、残ったメンバーは再びヒラメと対峙する。


 見事な連携だな。

 最初の一撃は不意打ちすぎて守り切れなかったみたいだけどさ。

 俺を昏睡状態に陥らせる攻撃力だけではなく、守りもできるみたいだ。

 そして動きを止めさせる担当グループもいるみたいで、ヒラメの動きが時々止まったり、鈍くなったりする。

 そのように色々な役割分担をすることでヒラメを追い詰めていくんだろうな。


 この戦況を見ていると、負傷者がいるとはいえ、リザードマンが優勢な気もする。

 正直俺達が出る幕はなさそうだ。

 むしろ俺達がしゃしゃり出ることで、リザードマンの連携が崩れかねない。

 大人しく見守るのが得策に思える。


 このままいけば勝てるんじゃないか?

 そう自然と思えてくる。


 だが、しばらく戦況を眺めていると、徐々にではあるが、リザードマンが押され始める。

 というのも、ヒラメにダメージを与えているはずなのに、全く傷一つついていないのだ。

 傷は一瞬つくのだが、瞬く間に塞がっていくためだ。


 俺を襲ったスワンプソールもそうだったが、この世界のヒラメの魔物はものすごい回復力を持つみたいだ。

 故にいくら立ち回りが優れていても、一撃で倒すほどの攻撃をヒラメに与えないと永遠と倒すことができない。

 ヒラメはMPを使ってHPを回復するが、そのMPも回復してくるもんな。

 まさに永久機関といった所か。

 しかも一撃くらったら相手は死に至る病魔持ち。

 チートすぎるだろ。



 そんなチートなヒラメに対し、善戦を続けるリザードマン。

 だが魔力が消耗したり、負傷者が出て欠員が出ることで状況は明らかに悪い方向に向かっている。

 

 リザードマンが勝つためにはどうしたら良いのか?

 それはヒラメを一撃で倒し切るほどの強力な攻撃を当てるしかない。

 そしてそのことはリザードマンも承知なようで、緑のリザードマンを中心として例の強力な魔法の準備を整えているようだ。


 リザードマンが俺を昏睡状態に陥らせたときは五人位で魔法を使っていた。

 だが、今回はそのおよそ十倍以上。

 五十人以上のリザードマンが集まって巨大な青色の渦を出現させた。


 五人で発動させてもあの威力だ。

 それが十倍もの人数で発動させたら……

 これならいけるかもしれない。


 だが、それはあくまでも当たればの話だ。

 ヒラメはとても素早く、このままではその素早さで魔法を避けられてしまう。

 一部のリザードマン達はそれを防ぐために必死に魔法でヒラメの動きを阻害しようとするが、あまり効果はみられない。

 ヒラメはリザードマンが大技を繰り出そうとしていることに気付いているようで、魔法を唱えているリザードマン目がけて攻撃を集中させ、妨害しようとしている。

 その攻撃はリザードマンの防御班が何とか防いでいるが、気が散るリザードマンもいるようで、魔法の詠唱がなかなか進まない。

 そしてその隙にヒラメはリザードマンから距離をとろうとしている。

 このままではせっかくの魔法が台無しだ。

 ここまでの魔法はそう何発も打てる訳ではないだろうし、外したら相当まずいだろう。

 何とか手助けできないものか……



 俺は攻撃に向いたスキルをあまり持ってはいない。

 なのでヒラメを倒すことはできないだろう。

 だから、俺が手伝えるとしたらそれ以外の部分になる。


 今、リザードマンが致命傷を与える魔法を放とうとしている。

 そしてその魔法をヒラメは避けてしまいそうな状況だ。

 ならばやるべきことは決まっている。

 ヒラメの動きを阻害して、狙いやすくすること。


 動きを阻害するためにできることは何か。

 その見当はついている。

 そしてそれを行うためにはヒラメの動きを一時的、一点でいいから完全に止めてもらう必要があるな。



『ブルール、頼みがあるんだが、ちょっといいか?』 

『ん? どうした、改まって?』

『お前の【束縛魔法】をヒラメの一点に集中してかけることはできないか?』



 そう。

 ちょっとの間でもいい。

 そしてヒラメ全体を抑え込まなくてもいい。

 局所的に、でも確実にヒラメの体の一カ所を封じてほしいのだ。


 正直ブルールだけの【束縛魔法】を普通にヒラメにかけても効果はほとんどないだろう。

 魔法に長けている複数のリザードマンでさえ、数秒しか動きを封じられないのだから。

 ただ、それはヒラメ全体を抑え込もうとした話。

 ヒラメ全体ではなく、一カ所だけを抑え込もうとするのであれば、もっと強力な効果が見込めるのではないか?

 そう思えるのだ。



『【束縛魔法】を一点にかける―――そんなことは聞いたことないな。できるかもしれないが、それに何の意味があるんだ?』

『意味はあるさ。その一点に俺がヒラメにあることをする。そうすればヒラメの動きを止めることができそうなんだ』

『そうなのか。分かった、やってみる。どこに【束縛魔法】をかければいい?』

『そうだな……ダメージを与えられそうな所、ヒラメの頭部のどこかを縛ってくれないか?』

『頭部のどこか? そんな大雑把でいいのか? その方がオレは助かるが』

『ああ、大丈夫だ。その代わり、確実に縛ってくれよ。俺の攻撃が当たるようにさ』

『分かった。任せておけ』

『ヒラメは俺達から遠ざかるようにして移動している。とりあえずヒラメの移動方向に回り込むぞ』


  

 俺は【水流操作】を使い、移動方向に向かって強力な水流を流し込む。

 その流れにのり、俺達はあっという間にヒラメの移動方向に回り込むことに成功した。

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