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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
62/222

62.ヒラメと戦ってみました。

 乾いた地面から飛び出してきた巨大生物。

 ソイツが地面から飛びあがり、着地する。

 着地したソイツの姿を見た俺は驚くことになった。


 ……薄い。


 薄すぎるのだ。

 体長自体は十メートルは超えるほどなので、巨大生物であることは間違いない。

 だが高さ、いや、厚みか?

 それが多分十センチもないのだ。

 とってもペラペラである。


 こいつ、ヒラメなのか?

 ヒラメの魔物なんて聞いたことないが。

 というか、ヒラメって海に生息する生き物じゃなかったか?

 なんで陸地にいるんだよ。


 まあ、ここは世界が違うから前世の常識は通じないのかもしれないけどさ。

 もしかしたら魚が陸上を泳いでいたりするかもしれない。

 ……さすがにそれはないかな。


 とりあえずこの巨大ヒラメを【観察】してみるか。



 スワンプソール

 エリュミュスの沼地に生息する生物。

 普段は湿気を多く含んだ土壌に包まれた住処で過ごしている。

 獲物を取るときだけ地上に出るという。



 スワンプソールlv31

 HP 308/310

 MP  72/ 72

 攻撃力    187

 防御力    486

 魔法攻撃力  116

 魔法防御力  129

 素早さ     81

 スキル    不明 



 うわ。

 コイツ、かなり防御型の魔物だな。

 防御力が400超えるって硬すぎだろ。

 唯一の救いは、防御型の魔物だから攻撃力は抑えめなことか。

 それでも100は超えるから全然強いんだけどさ。


 どうする?

 コイツと戦うか?

 逃げてもいいんだが、倒せなくはないような気もする。

 もし逃げても、リザードマン探索でまたここに来ることになったら、結局対峙することになるしな。

 倒しておいた方が良いのは確かにあるんだよな。


 ブルールの意見も聞いてみるか。



『ブルール、どうする? 戦うか?』

『倒せなくはない敵だとは思う。だが、ちょっと遠くから様子を見てみないか?』

『というと?』

『こいつ、さっきから若干HPが減っている気がするんだよな。もしかして乾燥に弱いんじゃないか?』



 乾燥に弱い?

 本当か?

 とりあえずもう一回【観察】で確認してみるか。

 今度は簡易版で十分だな。



 スワンプソールlv31

 HP 288/310

 MP  72/ 72



 あ、本当だ。

 最初に【観察】したときよりもHPが減っている。

 毒とかの状態異常にかかっている訳でもなさそうだし、乾燥が原因の可能性は高いな。

 俺が周囲の水分をほぼ抜いちまったから、ヒラメにとって悪い環境になったという訳か。

 だからこそヒラメが怒って地上まで出てきたんだろうけどさ。


 となれば、戦わずに様子を見るだけでも倒せるかもしれないな。

 まあその場合、倒すというより自滅してもらうということにはなるが。



 そういう特徴があると踏んだ俺達は、ヒラメから距離を取る。

 ヒラメが怒って何かしらの泥の塊を何発も発射してくるが、それを難なく避ける。

 近くで撃たれたら厄介だが、距離が離れていれば避けるのは難しくない。

 そんな感じでヒラメの攻撃を避け続け、戦いを長引かせた。



 しばらくして、俺は再び【観察】を発動させる。



 スワンプソールlv31

 HP   8/310

 MP  72/ 72



 お、いい感じじゃないか?

 この位のHPならば俺の短剣で削りきれる気がする。

 とどめを刺しに行くか。


 俺は、自分の武器、アダマンダガーのおかげで500を超える攻撃力を持っている。

 いくらヒラメの防御力が高いとはいえ、所詮400。

 俺の短剣の攻撃力には敵わないだろう。

 多くのHPを削るのは厳しいかもしれない。

 だがさすがに残りHP10もない位であれば削りきれるはずだ。


 

 俺はブルールに乗って一気にヒラメへと近付く。

 ヒラメは必死に泥弾を放ってくるが、素早いブルールはそれを全てかわす。

 そしてヒラメの近くまで来たところで、ブルールはヒラメに噛みつき、俺は飛び上がってヒラメの体に短剣を突き刺した!



 グサッ!



 ちょっと浅い。

 だが体に食い込んではいる。

 やったか!?



 しかし、ヒラメはまだ動き続けている。

 あれ?

 何でコイツまだ動けているんだ?


 不審に思った俺はヒラメに【観察】をかける。



 スワンプソールlv31

 HP  68/310

 MP  52/ 72



 は?

 なんでHP増えてるんだよ?


 あ……

 そういえばヒラメのMPが減っているな。

 もしかして自己修復系の技でも持っていたのか?


 くっ、これは予想外だ。

 【観察】でスキルが見れないことが仇となったな。

 スキルにそういうものがあったら始めから警戒していたのに。


 とにかくここは一旦離れよう。

 離れさえすれば、乾燥によるダメージで、またこちらが優位に立てるからな。



 そう思って俺はヒラメに刺さった短剣を抜こうとする。

 しかし、短剣はビクともしない。


 へ?

 なんでだよ?

 なんでこんな浅くしか刺さっていない剣が抜けないんだよ。

 おかしいだろ。


 今の状況に混乱している俺。

 そしてさらに状況が変化する。


 俺の足場、いや、ヒラメ自身が移動を始めたのだ。

 結構早い。

 そしてヒラメが向かう方向を見ると―――湖があった。


 そう。

 ヒラメは湖に向かっているようだ。


 一体何の為に?

 目的はよく分からない。

 だが、もしヒラメが湖に潜ろうとしているならまずい。

 短剣を抜こうと粘っていれば、その間に俺も一緒に湖の中に連れ込まれてしまうことになる。

 そんなことになったら俺、窒息死しちまうぞ。

 冗談じゃない。


 このままだとあと五秒もすれば湖に飛び込むような勢いだ。

 もう時間がない。

 短剣は諦めよう。

 一刻も早くヒラメから離れなければ巻き添えになる。



 俺は短剣から手を離し、ヒラメから離れようとした。

 しかし、体はヒラメにくっついて離れない!?


 なんで離れないのか訳分からない。

 俺は足元を見る。

 すると足元には何やら粘り気のある膜みたいなものが張られていて、俺の足はそれに引っかかっているようだ。


 まさかこのヒラメ、最初から、俺達を油断させて近付いてきた所を捕らえるつもりだったんじゃ……!?

 そして捕らえたらそのまま湖に引きずり込み、水没死させると。

 なかなかえげつない戦法をとってくるな、おい。

 正直シャレにならねえぞ。


 というか、どうするよ?

 もうどうしようもなくね?

 飛び込むまであと一秒。

 もう間もなくだ。

 足は粘膜から抜け出せる様子はない。

 粘膜に何かすれば抜け出せるんだろうか?

 もう気が動転して何をしたらいいのか分からなくなってきたぞ。


 俺はふと周りを見渡す。

 するとその中に、ヒラメに噛みついたまま引き抜くことができないブルールの姿もあった。


 最悪だ。

 ブルールも巻き添えをくらっているとは。

 完全にヒラメの術中にはめられてしまったな、俺達。


 何でよりにもよってヒラメなんかに負けるんだよ。

 どうせならもっとミノタウロスとかオーガとかゲームに出てくるような魔物にやられたかったわ。

 強いヒラメなんてどこのゲームに出るかっていうんだよ。

 見たことないわ、そんなゲーム。



 バシャーン!!!



 俺は絶望している間にヒラメは容赦なく湖の中へと飛び込んでいった。

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