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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
58/222

58.人間の戦いを見物してみました。

 山小屋の外へ出た俺達。

 だが周りを見渡してもターニャの姿は見えない。



『こりゃ完全に見失っちまったな。諦めるか?』

『いや、まだいける。匂いがまだ残っているからな。それを追えば……』

『そうか。匂いに関しては俺はさっぱり分からないからな。その辺りは任せるぞ』

『ああ、任せてくれ。こっちだ』



 ブルールは鼻をクンクンさせながらも走って移動する。

 よく走りながら匂いをかげるなと思うわ。

 そんな器用な事、俺にはできないからな。

 何か一つの事に集中するのは得意だけど、同時に他の事もするのは苦手だからな、俺。

 そのように器用に色んなことができて羨ましい。

 まあ、それ以前に俺は鼻が利かないから、匂いをかいで追いかけることができないんだけどさ。


 ブルールのそのような器用な行動のおかげで、しばらく走るとターニャの姿が見えてきた。

 ターニャの近くには先程見かけた四十代位の女性、それに二十代位の男性の姿もあった。

 どうやら間に合ったようだな。



「二人とも、無事で良かった!」

「ターニャ!? ダメじゃないか、寝ていないと! ってあれ? 元気になってる?」

「ターニャ、一体どうしたの? あんなに苦しそうだったのにこんなに元気になって」



 元気なターニャを見て、他の二人は驚きの表情を浮かべている。

 まあ、あんなに寝込んでいた人が急に元気な姿で現れたらビックリするよな。


 ちなみに多分、二十代位の男性がタロスなんだろうな、きっと。

 「タロスが出て行った」とか最初ターニャの母親が言っていたし。

 一緒に暮らしていたんだろう。

 出て行った理由は定かではないが、きっとターニャの病を治すために出て行ったとかそんな所じゃないだろうか。



「ちょっと色々あってね。でももう大丈夫! だから早く小屋に戻ろう」

「そ、そうだな……。何があったか知らないが、ターニャが無事なら外に出る必要もないしな」

「そうね。でも何事も起きないうちに帰れそうで本当に良かったわ」



 三人とも安堵の表情を浮かべている。

 うん。

 感動の再会ってやつだな。

 いい光景だ。



 あのタロスっていう男、結構イケメンだな。

 タロスとターニャが一緒に並ぶと美男美女カップルになりそうだ。 

 というか、多分カップルなんだろうな。

 わざわざあんな山小屋に住む位だし。


 もしかしてあんな山小屋に住んでいた理由って、人の目が届かない所で二人きりの空間を楽しみたいということか?

 俺にはそんな経験がないから、その楽しさが分からねえけど。

 何かありそうだよな、二人だけの秘密の空間とか言ってさ。

 あ、でもターニャの母親がいるから二人きりじゃないか。

 それでも人通りが全然ないから孤立した空間であることには変わりないけど。

 


 そんな朗らかとした雰囲気を楽しんでいた俺や人間達。

 しかし、そんな俺達に異変が襲い掛かる。


 突如として辺りが霧に覆われてしまったのだ。



『霧……!? まさかこの状況って!?』

『ああ、間違いない。来るぞ』



 しばらくこの場でじっとしていると、多くの翼がはばたく音が聞こえてくる。

 俺はその音がする方向に向かって【観察】を発動させた。



 ワイバーンlv53

 HP???

 MP???

 ステータス 不明

 スキル   不明



 何とかレベルは見れるようだ。

 つまり地龍や水龍ほどではないということだな。

 だからといってワイバーンが強いことには変わりないが。


 それにこの音。

 明らかにワイバーン一匹が飛んでいる音じゃない。

 恐らく少なく見積もっても十匹はいるんじゃないだろうか?

 いや、もっといるだろう。

 どれ位いるのかもう想像がつかない。



 近くにいるターニャ達三人も緊迫した表情を浮かべている。

 さすがに先程までの朗らかとしたムードは残っていない。

 それだけ厳しい相手だということだろう。



「お母さん、タロス、下がってて。ここは私が引き受ける」

「ターニャ、それじゃあなたに負担が……」

「大丈夫。私はもう完治したわ。万全の状態の私なら、こんな奴ら、敵じゃない」



 こう言ったターニャは周囲に大量の魔力の塊らしき渦を浮かべ始める。

 赤色、青色、黄色、緑色、紫色の渦。

 五色のそれぞれのエネルギーの渦がターニャの周囲に展開される。

 

 一体ターニャは何しているんだ?



 しばらくすると、視界が悪い中、ワイバーンの姿が見えてきた。

 見えるだけでも十……いや、二十匹はいるな。

 

 そんなワイバーン相手にターニャは全くひるむ様子がない。

 さすがレベル72。

 レベル50程度のワイバーン相手なら楽勝なのだろうか。


 ターニャはワイバーンの方に向かって杖を向けた。

 何をするつもりなんだ?



「轟け雷よ! ライジングサンダー!」



 ターニャがそう叫ぶと、黄色の渦から現れた無数の雷がワイバーンを次々と落としていく!


 うわっ、強すぎだろ。

 ちょっと雷に当たっただけでワイバーンやられちゃったよ。

 やっぱりハンパねえわ。

 さすがはレベル72。

 強すぎる。



 しかし、そんだけ見える限りのワイバーンを一掃しても、次々と湧き出るワイバーン。

 これ悪夢以外の何物でもないだろ。

 なんでレベル50もある奴らが次々と湧いてでてくるんだよ。

 あり得ないだろ。


 

「私も手伝うわ、ターニャ! フレアアロー!」

「おれも手伝う! 疾風斬撃!」



 ターニャの母親が放った魔法、タロスが放った斬撃はそれぞれワイバーンを一撃で倒した。


 ターニャも強いが、この二人も相当強いよな。

 どんだけ強いのか【観察】で確かめてみるか。



 ヒューマン lv62

 HP ???

 MP ???

 ステータス 不明

 スキル   不明



 ヒューマン lv58

 HP ???

 MP ???

 ステータス 不明

 スキル   不明



 ちなみに前者がターニャの母親、後者がタロスのステータスだ。

 二人ともめっちゃ強いな。

 それでもターニャには及ばないようだが。


 どうしてこの強い三人があんな小屋で暮らしているんだろう?

 いくらカップルがひっそりと暮らしたいとはいっても、不便すぎだろ。

 こんな危なくて食料もないような土地に住むなんてさ。

 ますます謎は深まるばかりだ。



 それから数十分位は経っただろうか。

 ひたすら湧き出てくるワイバーン。

 そしてそれを一掃するターニャ達。

 よくここまで魔力が持つもんだと関心するんだが、そろそろターニャ達がまずそうだ。


 ワイバーンを近づけていないからダメージを負っていないが、息がきれてきている。

 多分MPの消耗が激しいから精神的に厳しくなっているんだろう。

 それでもまだ全然強力な魔法を放てるみたいだから大したもんだと思うんだけどな。


 

「そろそろMPの補充が必要ね。準備するからちょっとだけ二人で耐えてて!」



 そう言ったターニャはバッグの中を漁り始め、とある瓶を取り出す。

 その瓶を二人に飲ませ、ターニャ自身もそれを飲む。

 すると、それからはまた魔法の出力が上がり、再び勢いが戻る。


 あれはきっとMPを回復する薬なんだろうな。

 俺、MPを回復する必要がなかったから作ったことないけどさ。

 多分作ろうと思えば作れるんだろうな。

 今度気が向いたら作ってみるか。


 

 そんな感じでずっとワイバーンを一掃し続けたターニャ達。

 その努力の甲斐あって、さらに二十分ほど経った頃に、ようやくワイバーンがいなくなった。


 一体どんだけワイバーンいたんだろうな。

 多分百匹は超えるだろう。

 こんなん、絶対普通のヤツじゃ勝てないだろ。

 俺はもちろん勝てる気がしないわ。


 そんな奴らに勝っちゃうターニャ達って化物クラスの強さだろ。

 強さの次元が違いすぎる。

 まあ、そのおかげでこの場の平穏が手に入ったみたいだからいいんだけど。



 絶対コイツらとは敵対しちゃダメだな。

 その敵対した瞬間に殺される気がする、間違いなくさ。

 というか、俺達、コイツらに関わって良かったのか?

 機嫌損ねたら一発アウトって結構危なくね?

 今更だけどさ。


 まあ、もうなってしまったものは仕方ないんだがな。

 それに一応、俺はターニャの命の恩人でもある。

 きっと大丈夫……なはずだ。

 うん。

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