5.いっぱい調合してみました。
朝が来た。
いやー、よく寝れた。
前の日とは大違いだ。
やはり広いって素晴らしいな。
体が窮屈かそうでないかで息苦しさが全然違う。
それにドラゴンが来なかったから揺れで起こされることもなかったし。
うん、安眠できて良かった。
あとはそこにクッションがあれば最高なんだけどな。
フワンポイズ草。
こいつをなんとかできればいいんだが。
調合でなんとかならないだろうか?
いや、フワンポイズ草を調合したら、もっと強烈な毒ができてしまいそうだ。
フワンタクサ草でさえあの威力だもんな。
フワンポイズ草だったら一体どうなってしまうのか?
考えただけでも恐ろしい。
さて、とりあえずフワンポイズ草を取りにいかないとな。
今の俺にはしっかりしたグローブがあるからもう毒も怖くない。
さあ、外に出ようか。
俺は入口付近まで来た。
すると、周囲から足音が聞こえる。
何か魔物がいるんだろうか?
とりあえず【観察】してみるか。
ウルフ LV7
HP 63
MP 10
ステータス 不明
スキル 不明
ウルフか。
この辺り本当にウルフ多いよな。
縄張りにでもなっているのか?
昨日の夜に適当に投げたポイズボールもウルフに当たったし。
このウルフ、レベル7で、俺とレベル1差しかないが、HPが全然俺より高いな。
それだけウルフの方が種族的に優れているということか。
言われてみれば、ベビーでしかもゴブリンの俺の方が強かったらおかしいもんな。
というわけで戦わない一択だな。
レベルが近くなったところで負けることに変わりないなら行動は今までと変わらない。
立ち去るまで待つ。
これだけだ。
まあ、今は寝床が充実しているからただ待っているだけじゃないけどな。
外にはウルフもいることだし、今日は日中も調合の研究でもしておくか。
まだ食料のストックはあるし、食料集めしなくても良さそうだし。
ちなみに俺は寝床を奥の部屋にして、食料も奥の部屋に格納している。
その他素材は手前の部屋にある。
そうしておけば、食料と有毒な素材が混ざることもないしな。
それに奥に食料があるから、手前の部屋に誰か入られても奥の部屋に立てこもって粘ることもできる。
なので、調合の研究をするときは手前の部屋でやっている。
調合は何がおきるか分からないから、貴重な食料を何か悪い状態にして無駄にしたくないのだ。
さて、今日は何を調合しようか。
やはりフワンタクサ草だろうな。
これが保管素材の80%を占めるし、なくなってもあまり困らないだろう。
実験には最適だ。
早速調合。
まぜまぜ……
{ 薬草を入手しました。 }
お、薬草か!
つぶしているはずなのに新しい草が現れるってやっぱり調合って不思議だ。
【観察】で詳しく見てみるか。
薬草
エリュミュス全体で一般的な薬草。
すりつぶして水分を加えると回復薬になる。
回復薬か。
ちょっとやってみようかな。
薬草をすりつぶしていると、どれ位すりつぶせばよいかが自然と分かる。
そしてフワンミズミズシ草から搾り取った水分を三滴たらすと。
{ 回復薬を入手しました。 }
ほら、出来上がり。
ねえ、簡単でしょう?
いや、何でそんな簡単にできるんだよ、おかしいだろ。
これも【考察】のおかげなのか?
だとしたら【考察】、半端なく使えるんじゃないか?
やろうとしたことの知識が自然と入ってくるんだぞ?
まあ、自分から行動を起こさないとダメだけどな。
でもこの調子なら、調合を思ったよりも使いこなせそうだ。
それにただフワンタクサ草をまぜているだけなのに色んな物が出来上がっていく。
押しつぶす時間や強弱、加える水分量によって全然違うものが出来上がるのだ。
これはかなり使えるな。
時間の許す限り、フワンタクサ草で色んな調合を試してみるか。
{ 【調合 lv10】を獲得しました。 }
{ 特殊スキル【調合の極意】を獲得しました。 }
ふー、結構頑張った。
結局めっちゃ頑張って、部屋にあるフワンタクサ草を全部使い切ってしまった。
ん?
なんかすごいスキル手に入れたんじゃないか?
なんだ【調合の極意】って?
凄そうだけど、どう使えばいいのかさっぱり分からない。
誰か説明してくれたりしないかなー?
………………
ですよねー。
【考察】が説明してくれると思ったけど淡い期待だったな。
多分【考察】は自分がやろうとしてくれていることの補助をしてくれるものだ。
だから自分が見当もつかないものを知ろうとしても知ることはできないのだろう。
それはおいといて、今回の調合の成果。
回復薬×5
中回復薬×3
大回復薬×1
生気の薬×1
黄金の葉×2
ちなみにそれぞれの内容は
回復薬
エリュミュスの冒険者が使う一般的な薬。
値段も手ごろで一般人も時々利用することもある。
中回復薬
エリュミュスの道具屋で売られている高級な薬。
熟練冒険者や貴族がよく使用する。
大回復薬
エリュミュスのどこかにある神秘の泉の水から作られた希少な薬。
あまりにも希少なため、家宝にしている貴族も存在する。
生気の薬
エリュミュスの奇跡と言われる幻の薬。
生死をさまよう者に使用すると必ず生気を取り戻し、全ての病を治すと言われている。
黄金の葉
エリュミュスのどこかに存在すると言われている植物。
全ての悪い状態を正常に戻す効果があると言い伝えられている。
実物を見た者は非常に少ない。
なんかすごそうなものを作れてしまったな。
俺、もしかして調合の才能あるんじゃないか?
高級な薬を3つも作れたし、貴族が家宝にしている薬さえ手に入ったぞ?
もし俺が人間だったら、それで一財産築けるよな。
……俺はゴブリンだから関係ないけど。
まあ、回復薬はあっても困ることないし、十分すぎる成果だ。
これがあのありふれたフワンタクサ草から作れることが分かったのだ。
一気に生活が楽になるだろう、きっと。
特に黄金の葉は役立ちそうだ。
これ、いわゆる万能薬みたいなものだよな?
全ての状態を治すらしいぞ。
これあったら、フワンポイズ草の毒をあびてもすぐに治せるな!
だからといって自分から毒を浴びにいこうとは思わないが。
生気の薬。
これってゲームでいう戦闘不能を治すものじゃないか?
そんながこの世界にもあるんだな。
まあ、説明を見る限り、完全に死んでしまうとダメらしいけどな。
あったら便利だけど、過信は禁物だろうな。
ちなみに回復薬などは液体なので、入れ物が必要だった。
俺はその入れ物を周辺にある土を固めたもので作ってみた。
土だから液体を吸収するかと思いきや、意外とそんなに吸収しなかった。
徐々にではあるが吸収されているから長くは持たないだろうが。
まあ、なくなったらまた作ればいい話だよな。
原料はそこら中にあるフワンタクサ草だし。
さて、そのフワンタクサ草も尽きてしまったし、そろそろ外に出たいんだがな。
早くフワンタクサ草をいっぱい回収して黄金の葉を量産したい。
もうウルフ立ち去ってくれていないかな?
外の様子を見てみるか。