40.浴室を作り始めました。
金剛ジョウ草
エリュミュスのどこかに存在すると言われている幻の植物。
どんな金属よりも硬いとされ、採取できれば重宝されることは間違いないだろう。
ただし、実物を見たものはほぼ存在しない。
お、見れたぞ。
って、この説明マジかよ。
俺、そんなすごい植物から作れる物をいつも使っていたんだな。
道理で伝説級の金属製の武器や防具がどんどんできる訳だわ。
いくら技術があっても、道具がないと加工はできないからな。
本当、金剛砥石様様だわ。
というか、金剛砥石ってちゃんと植物由来のものだったのか。
なら一応【調合】が植物の効果を高めた物を作る技術という俺の仮説に当てはまるか。
例外じゃなかったんだな。
そう考えると意外と分類はしっかりされてそうだな。
グリーンサラダも料理とはいえ、植物由来だし。
唯一腑に落ちないのは、この場にない物が急に現れることか。
あるはずのないドレッシングがかかったサラダが出来上がるとかな。
でもそんなことは俺の全ての生産系スキルに言えることだしな。
そんなことを気にした所で仕方ないし、そのお陰で俺は助かってる。
だからこのままでいいだろう。
『おーい、カンガ! まだ決まらないのかー?』
ブルールは待ちくたびれているようだ。
すまないな、ブルール。
ちょっと考え事をしてたわ。
すぐに作るからもうちょっと待ってろ。
俺は料理リストにあった野菜の肉巻きを作ることにした。
この料理も、原料が野菜しかないはずなのに、出来上がったときには何故か肉がある不思議料理だよな。
まあ、この周辺に魔物がいない以上肉をしばらく食えないと思っていた所だ。
肉を食うことができるのはとても大きいから助かることなんだけどな。
じゃあ早速作るぞ。
ジュウジュウ……
{ 野菜の肉巻きを入手しました。 }
ほい、出来上がり。
うん。
良い香りで美味そうだ。
早速料理を俺とブルールの分の皿に取り分ける。
そしていただきます。
案の定、ブルールは3秒で料理を平らげてしまった。
もっとゆっくり味わって食えばいいのにな。
そんなに料理が好きならさ。
好きな料理を早く食い終わっちまう気持ちは分かるけどよ。
さて、これでブルールとの約束も果たした。
他にやるべきことをやりますか。
まずは俺自身の快適な居住スペースの確保だな。
まだ部屋に残っている水たまりをなくさないと暮らすには不便極まりないからな。
さっさととりかかるとするか。
俺は早速作業部屋の方へと向かった。
少しして俺は作業部屋に到着した。
雨漏りはなくなったし、ほとんどの水をもう抜き終わった。
だが、まだ所々に水たまりがあるからそれの処理をしなければ。
俺はアクアペンダントを一つ【細工】を使って作成する。
そしてそのアクアペンダントを使い、部屋に残ってしまった水分を片っ端から吸い込ませた。
そのおかげで部屋からは水たまりが消え、無事快適な部屋を取り戻すことができた。
本当、アクアペンダント様様だな。
うん。
ちなみに使ったアクアペンダントをまたすぐに荒野地帯に壊しにいくつもりはない。
だってまだ使えそうだしな。
吸収した水分量は大したことなさそうだし。
ただ、このまま放置しておくと、万が一壊れたときに面倒なんだよな。
いざとなったらもう一つアクアペンダントを作って吸収してもらえばいい話ではあるが。
でも面倒なことには変わりない。
どうしようかな、このアクアペンダント。
どこかに保管できれば一番いいんだけどさ。
うーん。
アクアペンダントが壊れたら困る。
それは言い換えれば、水分が出たら困るということだ。
つまり、水分が出ても困らない空間を作ればいいんじゃないか?
例えば浴室とかさ。
そういえば丁度泥を洗い落とすお風呂が欲しかった所なんだよな。
よし、そうと決まったら早速作るか。
そのためには部屋を新しく作らないといけないよな。
寝室のさらに奥に浴室を作ると面倒だし、作業部屋の左隣にでも作るか。
その方が行き来もしやすいだろ、きっと。
こうして俺は浴室作りの為、作業部屋の壁を掘り始めた。
壁を掘り進めることによって発生した土砂はグランドペンダントに収納することにした。
このペンダントシリーズって本当に便利だよな。
だが、同時に危険でもある。
衝撃を受けて壊れてしまったら溜め込んだ物が全て出てしまうからな。
使い方には要注意だ。
今回のグランドペンダントも使い終わったらどこかに壊しに行くか。
このまま住処の中に残しておくのは危な過ぎるからな。
こうしたグランドペンダントの助けもあり、俺は難なく浴室用のスペースを作ることができた。
ちょっと時間はかかってしまったが、別に今の俺には時間は有り余る程あるし、問題ないだろう。
時間がかかってもより快適な生活空間を作る方が大事だよな。
うん。
さて、あとは湯船を作るか。
せっかくだからちょっと大きめのものを作ってやろう。
浴室自体は30畳ほどの広々としたスペースだ。
そのうちの半分、15畳程を湯船のスペースにするか。
贅沢な空間だよな。
広さだけは。
頑張ればもっと拡張できる所もいい。
ただ、見た目が残念なんだよな。
当たり前だが、今の俺の浴室は、床も壁もむき出しの土でできている。
だから見た目はただの広い土の空間に過ぎない。
どう見ても浴室には見えないのだ。
もっと外装にもこだわった方がいいかもな。
それは他の部屋にも言えることだが。
そう考えるとやるべきことはまだまだたくさんあるな。
でも良い暇つぶしができたと考えれば悪くないかもしれない。
この世界でできる暇つぶしなんて限られているからな。
せっかくだし色々と考え抜いて、最高の部屋を作ってやろう。
といっても、俺、昔からセンスないから、他の人にとっては最高じゃない気もするが。
まあ自分の部屋なんだから自分さえ気に入ればいいしな。
誰かを招き入れるつもりもねーし、他人の評価なんて必要ない。
自分の気ままに作るのが一番だ。
そうやって外装を考えるのもいい。
だが今はもっと優先すべきことがある。
それは湯船のお湯をどうやって調達するかだ。
外装は色々終わって余裕のあるときに考えようか。




