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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅱ 快適な生活を求めて
36/222

36.ブルールのスペースを作りました。

 俺は尖ったミスリルの壁を作りだす。

 そしてそれをミスリル部屋の天井に突き刺した。

 そうすることで地上への出口が作り出される。


 それから俺とブルールの足場に長方体の壁を作り出し、地上まで押し出してもらった。

 こうして俺達は地上に出ることができた。



 本当、【念力】と【加工】のコンボの使い勝手はいいよな。

 こんなこと今までできなかったぞ。

 【念力】がなかったらミスリルの壁から脱出する為に、地上まで土を掘っていく必要があったもんな。

 そんな手間がなくて済むのだから本当便利になったもんだ。


 さて、地上に出たのはいいとする。

 周辺に魔物もいなさそうだから身の危険もない。

 だが問題がある。


 このミスリル部屋の処分方法だ。

 作ったはいいが、このまま残しておくとなんか良くない気がするんだよな。

 ミスリルは薄く引き伸ばしてはあるが、ミスリルには違いない訳だ。

 もし人間がここを見つけたら、他にもミスリルがあるのではと思って周辺を探すに違いない。

 そんなことになったら俺の住処が見つかるのも時間の問題だ。


 さて、どうするか……

 あ、なんか思いついたかもしれない!


 俺って、その辺にある鉄鉱石とかを【加工】してミスリルとかに変えられるだろ?

 ならさ、その逆もできるんじゃないか?

 つまり、ミスリルをただの鉄鉱石に変えることもできるんじゃないか?

 なんでそんな単純なことにも気づかなかったんだろう、俺。

 

 早速やってみるか。

 【念力】そして【加工】と。



 ふんっ!

 ガキンッ



{ 鉄鉱石の壁を入手しました。 } 

 


 きた!

 やっぱり逆もできんじゃん!

 これ俺にとってかなり大きい発見だぞ!


 強い物質を作り出しても元に戻せる。

 つまり、それは強い物質を作っても問題なくなったことを意味する。

 俺が心配していたのは、作った強い物質が他のヤツに使われること。

 だが、この劣化させる技術があれば、一度強い物質を作っても、また弱い物質に戻せばいい話だもんな。

 ちょっと余計に【加工】をしないといけないのは面倒だけどさ。

 まあ、使える選択肢が広がったのは間違いなく良いことだよな。



 それから俺は【念力】と【加工】を駆使して、ミスリル部屋のミスリルを全て鉄鉱石に変えておいた。

 そうすることで、ミスリル部屋が鉄鉱石部屋へと変貌した。

 こうすれば不自然な形ではあるが、鉄鉱石でできたものに過ぎないし、あまり注目はされないだろう。

 もし気づかれたとしても、誰かが鉄鉱石の入れ物を作った位にしか思えないはずだ。

 貴重な金属があるからといって周囲を探索しようとはされることはない。

 これで俺の住処も安泰だな。


 後は念の為、この部屋の中にも周辺の土を詰め込んでおこう。

 まあ、周辺がぬかるんでいるから土というより泥と言った方が良さそうだが。

 あ、もちろん【念力】を使って作業は行った。

 だって直接触るのって効率悪いし、汚れるし、嫌じゃん?



 そんなこんなで元ミスリル部屋の隠蔽処理を終えた俺はブルールとともに住処へ向かった。




 俺達は住処がありそうな所にたどり着く。

 ブルールから降り、俺はその周辺を探すことにした。


 茂みがなくて目印になるようなものがないから探すのが面倒だな。


 全くウルフの奴め。

 あいつらが襲ってさえこなければ茂みを目印にできたのに。

 でも命があるだけマシなんだよな。

 本当あのときは死ぬかと思ったわ。

 ブルールが助けてくれて本当に良かった。



 ブツブツ言いながらも俺はなんとか住処の入口らしき蓋を発見した。

 蓋は水浸しになっていたが、溶けて泥にまではなっていなかった。


 結構頑丈なんだな、この蓋。

 前から液体を吸収しにくいとは思っていたが。

 おかげで住処の場所が分かりそうで何よりだ。


 俺はその蓋を開けて住処に入ろうとする。

 だが、そんな俺をブルールの声が引きとめる。



『オレも入っちゃ……ダメか?』



 ブルールは申し訳なさそうに頼んでくる。

 いや、この穴のサイズじゃどう考えてもブルールじゃ入れないだろ。

 俺ですらギリギリのサイズの穴なんだぞ?

 二メートル近くあるお前の体じゃ無理だって。



『……………………』



 ブルールが黙ってこちらをじっと見てくる。


 ダメなものはダメだ。

 そんなにじっと見つめられても何もでないぞ?

 だから早く諦めてくれよ。



『……………………』



 だ……ダメだ!

 だからその目はやめろ。

 やめてくれ……



『……………………』



 ……もう、分かった分かった!

 分かったからそんな目で見るのはやめろ!

 なんでそんなつぶらな瞳をできるんだよ?

 凶暴なオオカミのくせにさ。

 反則だろ。

 全く。


 今のブルールは飼い主と離れる時の犬の表情に似ている。

 「本当に行っちゃうの?」みたいな感じでじっと見てきた。

 そんな目でずっと見られたらその期待に応えない訳にはいかないじゃねえかよ。

 はあ。


 ブルールによる無言の懇願に屈した俺は、ブルール用のスペースを作ることを約束した。

 するとブルールは尻尾を振って大喜び。

 ますますブルールがただの青い大きな犬にしか見えなくなってきた。


 そんなんでいいのか、ブルール?

 お前、仮にも一匹狼きどっていたヤツだろ。

 これじゃただのペットになっちまうよ。

 まあ、ブルールがいいならそれでいいけどさ。


 ブルールに色々思う所はあるが、もう考えないようにしよう。 

 それより面倒なことはさっさと終わらせたいので、ブルール用のスペース作りを始めることにした。





 まずスペースを作るにはそのための空間が必要だな。

 俺はブルールと協力しながら入口付近の地面を掘った。

 地面はぬかるんでいるので柔らかくて掘りやすい。

 だがすごく水っぽくて、泥が服に付着するので気分は最悪だ。

 せっかくきれいな白いシルクの防具が泥で汚れてしまった。


 なんか精神的にくるな。

 こういう風に泥を掘り進めていくのは。

 だが、今はガマンするしかないよな。

 後回しにしても結局やる事には変わりないんだからさ。


 嫌々ながらも地面を掘り勧める俺達。

 掘り終わった後は空間の形を整える。

 そしてついにブルール用の部屋が完成した!



{ 【採掘 lv27】を獲得しました。 }



 よし、【採掘】のレベルがだいぶ上がったぞ。

 今回精神ダメージを受けながらも頑張った甲斐があった。

 地面自体は柔らかくて体への負荷は少なかったんだけどな。

 相変わらずスキルレベルが上がる仕組みは謎だ。

 まあ、上がっただけ良しとするか。


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