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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
3/222

3.寝床を拡張してみました。

 空気穴から日の光が差し込む。

 朝だ。

 ようやく外に出られる。


 いや、日が昇ったからと言って安全とは限らない。

 むしろ俺にとっての安全な時間なんて存在しないと言った方がいい。

 だってどの魔物と遭遇しても死ぬことになるのだから。


 とにかく警戒は怠らない。

 そのことを肝に銘じておこう。

 では、外に出るぞ。



 俺はそっと入口の蓋を開ける。

 そして外の様子をのぞく。

 周りには誰もいない。

 よし、大丈夫だ。


 安全を確認してから俺は地面の上に立つ。

 うーん、広いって素晴らしい!

 それに空気も美味しいしな!


 さて、外に出たのはいいが、何からやるべきか。

 そんなのは決まっている。

 寝床の拡張だ。


 夜は危険な生物がたくさん出歩いている。

 そして俺の住処の入口がある茂みの近くを通っていく魔物も結構いた。

 そのため、夜は寝床から出られそうにない。


 それはつまり、寝床の拡張も夜にはできないことを意味する。

 もしやろうとするなら、入口に蓋をしたまま掘ることになる。

 だがそうするといらなくなった土の処分に困るから、結局拡張をすることはできない。

 だから寝床の拡張は今のうちにしておきたいのだ。



 ガリッガリッガリッ



 うん、だいぶ掘り慣れてきたな。

 昨日よりもかなり効率的に掘り進めることができている。


 手で土を掘るなんて、小学生以来だからな。

 そもそもガーデニングとかしてなかったから土を触ること自体なかったし。

 それに小学生のときだってこんな大量の土を掘ったことなんてない。

 そのことを考えれば、大きく進歩したと言えそうだな。



{ 【採掘 lv1】を獲得しました。 }



 お、またスキルが手に入ったぞ。

 それにスキルが手に入ってからは一層掘るのが楽になった気がする。

 気分良くなった俺はどんどん寝床を掘り進めた。





 けっこういいんじゃないか?

 拡張した寝床を見て思わず、そうつぶやきたくなった。


 入口はあえて狭いままにした。

 これは万が一大きな魔物が来ても侵入されないようにする為だ。

 せっかく快適にした寝床も安全性が損なわれてしまったら意味ないからな。

 何のために俺がこの空間を作り始めたかって話になる。


 そして入口から細い横の通路を通ると、そこには快適な空間が待っている。

 五畳ほどの空間。

 決して広くはない。

 でも一人で暮らすには十分だろう。


 それをできるだけ平らに、なめらかに作った。

 傾いている建物に住むとすごい疲れると聞いたことあるからな。

 本当にそこだけは気を付けて作ったつもりだ。


 そのような部屋が二つある。

 手前の部屋と奥の部屋に分かれている。

 それぞれは薄い壁で隔てられており、俺がやっと通れる位の穴だけがそこに開いている。


 ちなみにその穴も塞ぐ為の蓋も用意しておいた。

 そうしてそんなことをするのかというと、誰かに侵入された場合の備えだ。

 俺が奥の部屋にこもっていれば、侵入者は手前の部屋で引き返すかもしれないしな。

 奥の部屋にも気づくような高度な知能を持つ奴にはそもそも勝てないし、逃げられないだろう。

 そういうやつのための対策も後々はしないとな……

 今は考えつかないけど、なんとかなるだろう。


 ついでに言うと、それぞれの部屋にも入口同様空気穴を開けてある。

 もし空気穴がなかったら部屋に立てこもったときに酸欠で死にかねないからな。

 そこの対策はぬかりがない。


 部屋は二つ作ったが、それぞれどのように使うかは決めてない。

 せっかくある部屋なんだから防衛以外の目的にも使えそうだけどな。

 ま、使い道は後々考えるか。



 この部屋を作り上げたことによる成果は大きかった。

 一つはもちろん平らで安全で快適な寝床が手に入ったこと。

 そしてもう一つはスキルレベルが上がったことだ。

 掘り始めのときの採掘のlvが1だったが、今は3だ。

 そのおかげか知らないが、掘っていると時々、何かに使えそうな鉱石が手に入るようになった。

 例えばこいつだ。



 鉄鉱石

 フワン大陸でよく産出される鉱石。

 鉄の成分が含まれており、加工して幅広い物に使われている。

 加工の素材としてよく使用される。



 鉄。

 いかにも武器とか家電製品作りに使えそうじゃないか?

 まあ、家電製品はここでは作れないし、作った所で役立たないけど。

 頑張って加工すれば簡易的な武器なら作れるんじゃないかと期待している。

 どうやって加工すればいいのか分からないが、そこはまあそのとき考えることにする。




 さて、寝床の拡張は終わった。

 次の作業に移るか。


 次にやるべきこと、それは素材の備蓄。

 特に食料の備蓄は重要だ。

 食料さえあればしばらく外に出なければいけない理由がなくなる。

 外に出るにしても、食料探し以外の調査にあてたりとかできるし。

 そうすれば行動の選択肢は広がり、より安全にする生きるための準備ができるのだ。


 また、食料以外の植物や素材も是非集めておきたい。

 例えばフワンポイズ草はうまく使えば快適な寝床作りに役立ちそうだ。

 ただ直接触ったらまた毒になってしまうので、何かで覆って運ぶことになるだろうが。

 他にもフワンタクサ草を使って調合の練習もしてみたいな。

 そんな感じで暇つぶししたり、今後その成果で生活に役立てたりできそうで楽しみだ。


 よし、では早速外に出るか。

 寝床作りに時間はかけてしまったが、まだ日は高そうだ。

 朝早くから作業していて良かった。



 いつも通りそっと入口の蓋を開け、周囲を確認する。

 大丈夫そうなので、また音をたてないようにして外に出る。


 茂みの外は……誰もいない。

 今のうちだな。


 安全を確認してから、茂みの外に生えている草をできる限り集める。

 ただしフワンポイズ草は除く。

 触れただけで毒になっちまうし、集めるのはもう少し準備してからだな。


 一通り周辺の草を集め終えた。

 ちなみに所々に落ちている枝も拾っておいた。

 何かの役に立つかもしれないしな。


 さて、今度はどうするかな?

 まだ時間はあるし、少し材料探しにでも出かけようか。

 試す材料は少しでも多い方がいいからな。



 茂みの外の安全を確認してから俺は近くにあるまた別の茂みへと移る。

 その繰り返しで少しずつ、身を隠しながら移動していく。

 すると道中でこんなものを見つけた。



 フワンネム草

 フワン大陸に生息する植物。

 この草は独特の香りがあり、一部地域では香料として使われる。

 ただし睡眠作用があるので、使い過ぎに注意。



 香料となる草か。

 興味深い。

 是非持って帰りたい所なのだが、今いる場所は住処から少し離れている。

 こんな所で眠る訳にはいかない。

 でもせっかく来たんだし、持って帰りたいよな。

 よし、だったら……


 俺は近くに生えているフワンジョウ草を引っこ抜き、それを手の周りに巻き付けた。

 すごい大雑把ではあるが、簡易的な手袋の完成だ。


 フワンジョウ草は建築に使われるほど丈夫な草だ。

 だからそれで手を覆った上でフワンネム草をつかんでも効力は発揮しないだろう。

 後々フワンポイズ草でもその方法で採取しようとは思っている。

 でもフワンポイズ草は俺の住処の比較的近くに生えているし、後回しでも多分大丈夫だ。


 それに対してフワンネム草はちょっと離れた所にあるし、またここまで来るのは避けたい。

 だからちょっと即席ではあるけど手袋を作って回収することにした訳だ。



 俺はフワンネム草を回収し、住処へと帰った。

 そして余った時間は冒険せず、近くにあるフワンタクサ草などを収集する為に使った。

 ちなみに手袋を使ってフワンポイズ草の回収に挑んでもみた。

 だが、フワンポイズ草を触ってすぐに毒状態になったので回収は諦めた。

 やはり簡易的な手袋じゃダメか。

 結構強力な毒を持っているみたいだからな、あの草。

 うまく使えたら戦いにも役立てられそうだが。

 まあ焦りは禁物だ。

 できることを少しずつやっていこう。


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