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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
28/222

28.生き残る方法を考えてみました。

 俺は必死に考えた。

 この絶望的な状況を打開する起死回生の一手を。


 だが、思いつかなかった。

 何一つ。



 俺のスキルは生産の分野では無類の強さを発揮する。

 そしてそれを戦闘に応用することもできる。


 例えば【器用】がその例だ。

 ジャイアントマッシュを弓矢で仕留めたのも、【器用】による正確な射撃あってのもの。

 だが、【器用】自体は戦闘力を底上げする訳ではない。


 それ以外のスキルも同様だ。

 つまりそれ自体で強力な戦闘力を持つスキルはない。

 突破力に欠けるのだ。



 今までは武器の性能に頼って、なんとかすることができた。

 ウルフの大群を倒したのだってそうだ。

 武器による攻撃力の補正によって一撃で葬ることができていた。


 だが、今回は違う。

 相手もミスリルという強力な防具を身につけている。

 故に一撃で倒すことはできない。


 ヤドカリと一対一の戦いだったら俺が勝っていただろう。

 俺のアダマンダガーはミスリルよりも丈夫だからな。

 だが相手は複数。

 しかも百匹は超える大群。


 打つ手がないのだ。


 一体倒しても、その間に他の奴らから攻撃を受けてしまう。

 俺のHPはわずか50。

 ウルフ戦のときよりは全然体力は多いが、この大群の前では無いに等しい数値だ。

 だって五十匹のヤドカリの攻撃を一回受けただけでアウトだからな。

 厳しすぎる。

 ヤドカリの攻撃がダメージ0だったらすごい楽だが、そんな甘い考えは持たない方がいいな。



 俺の能力は戦闘向きではない。

 なのでコイツらを一気に何とかする方法なんてない。


 だから俺はちょっと発想を変えてみた。 


 

 こいつらを倒さなくても、俺が生き残れればいいんじゃないかと。


 

 今まではコイツらを倒さないことが俺の死に直結すると思っていた。

 だが、思いついたのだ。

 コイツらを倒さなくても俺が生き延びる方法を。


 その作戦を俺は実行することにした。






 俺はミスリルの地面を見据えた。。

 そしてその地面に向かって【加工】を発動させる。

 早く。

 できるだけ早く。 



 ガキンッ 


 

{ ミスリルの壁を入手しました。 }



 すると俺の目の前には大きな壁が立ちふさがった。

 俺はその様子に驚くことなくすぐさま次の【加工】へと取り掛かる。



 ガキンッ



{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ 【高速加工 lv1】を獲得しました }



 何かスキルを獲得したようだが、そんなことはどうでもいい。

 早く。

 早く【加工】を……



{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }

{ ミスリルの壁を入手しました。 }



{ 【加工 lvMAX】を獲得しました。 }

{ 【高速加工 lvMAX】を獲得しました。 }

{ 特殊スキル【加工の極地】を獲得しました。 }

{ 特殊スキル【加工の極意】は【加工の極地】に統合されました。 }

{ 特殊スキル【加工の極意Ⅱ】は【加工の極地】に統合されました。 }

{ 特殊スキル【神速職人】を獲得しました。 }



 はあ……はあ……

 これで何とかなったか?



 俺は周囲を見渡す。

 するとそこには、狭く、でも敵のいない暗い空間が出来上がっていた。







 

 何が起こったのか?

 正直俺自身も一瞬のことすぎて、本当に作戦が成功したのか信じられないでいる。


 だがこの落ち着きよう。

 恐らく成功したんだろう。

 周囲に【観察】をしてもこの俺がいる空間からは反応がないからな。

 


 俺が行った作戦。

 それは俺しかいない狭い空間を作ることだ。


 実はかつて鉄鉱石の加工リストを見たとき、壁という選択肢があった。

 壁なんて作る意味あるのか?

 そう当時は思ったな。

 だが実際に使ってみると非常に使い勝手が良いことが分かった。


 俺は先ほどのミスリルの穴の空間に、自分だけがギリギリ入れる空間を作った。

 俺は今その空間にいる。

 自分だけしか入る余地のない空間なので、ヤドカリがこの中に入ってくることはできない。

 

 もしヤドカリが俺を攻撃できるとすれば、この俺を囲う壁を破壊した後になる。

 俺を囲う壁はミスリルで作った。

 故に、同じミスリルを最大の武器にしているヤドカリにとって、この壁を破壊するのは困難だろう。

 つまり、俺の安全はしばらく保障された訳だ。


 そんな狭い空間では空気は大丈夫なのかと思うかもしれない。

 だが、その辺もぬかりなく対策した。

 俺は空気を確保しつつ、ヤドカリを侵入させないようにするためにあんなに多重に壁を作ったのだ。

 それは大小様々なサイズの壁をな。

 

 壁と壁の間には少し隙間があるのだ。

 だから呼吸には困らない。

 一方でその隙間を攻めにくくするように隙間には小さな壁を作っておいた。

 そうすることで、空気穴はあるが、狭すぎてヤドカリは侵入はできない状況になっているということだ。




 それにしてもこんなにうまくいくとは思わなかった。

 それももしかしたら【器用】のスキルのおかげなのかもしれないな。


 俺が壁を作ろうとしている最中、ヤドカリは俺を襲おうとしてきた。

 そりゃ隙だらけなんだから当然だよな。


 だが、俺はそうはさせなかった。

 ある者に対しては行く手を遮る位置に正確に壁を作った。

 またある者に対しては細い壁を正確にソイツの真下に作って串刺しにして倒した。

 ちょっとでもずれていたらこうはいかなかったもんな。


 ちなみに壁といってもただ大きさが均一なひらぺったいものとは限らない。

 四角の壁もあれば、三角の壁だって作れる。

 形は別に決まっていないのだ。

 つまり、細い棒状の壁だって作ることは可能。

 それで一部のヤドカリを倒したりした。

 

 力が一点に集中すれば強い。

 故にミスリル同士の対決であっても、棒状の壁はヤドカリに打ち勝ち、貫くことができた。


 こうして俺はダメージを負うことなく、安全な空間を作ることができたのだ。




 さて、これで俺の身の安全は保障された。

 だがこれからどうする?

 相手の数は未だに多すぎる。

 目で見えていたヤドカリの数でもそうなのだから、地上のヤドカリも合わせるとどれ位になるんだろう?

 想像ができない。



 あ、しまった!

 このままだとブルールが危ない!

 ミスリルのヤドカリが俺への攻撃を諦めてしまったら、地上にいるブルールが標的になりかねない。

 いくらブルールでもミスリルのヤドカリの大群の相手は分が悪すぎるだろう。

 それだけは防がなくては。



 俺は【高速錬成】を発動させる。

 そして一瞬にしてこのミスリルの部屋に空いていた穴は塞がれた――と思う。

 俺が直接目で見ることはできないので多分にはなるが。


 でもその瞬間にカサカサいっていた音がピタッと止んだ。

 その上、こちらに向かってくる音も聞こえたし、多分大丈夫だろう。

 

 

 これで完全に俺は穴の中に閉じ込められた訳だ。

 だがそんなことは俺にとってどうでもいい。

 だって自ら狭い空間に引きこもる選択をした位だし、後悔はない。


 引きこもり戦術。


 これこそが俺が唯一生き残る方法だったのだから。


 このときカンガは気付けていませんが、実は引き籠る以外に生き残る方法はあります。

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