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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅷ 未来に希望を求めて
208/222

208.神にも進化があるようです。

 俺はそれからも少し話をしてから、へクシアとガルサールの部屋を出た。

 するとそんな俺に近付いてくる奴が一人。



『カンガ、腹減った』

『ああ、今から作るからちょっと待ってろ』



 食いしん坊なウルフ、ブルールである。

 今のブルール、全然動いていないのによく食べるよなぁ。

 太っても知らないぞ、本当。


 ブルールは朝食を求めてきているが、まだ全員が起きている訳ではないので、今回もブルールの分の食事だけを作る事に。



 俺は近くの細菌を使って、いつものようにそれを植物などに変え、そしてポトフを作り出した。

 とってもあっつあつのものをな。



『うっ……ポトフか』

『なんだ、食べないのか? 嫌なら俺が食べちまうが』

『ひどいな、カンガ。オレが熱い食べ物を食べる事が苦手だと分かっているだろうに。……まあいいさ。ポトフ自体はオレは好きだからな』



 そう言うとふうふうしてペロッとポトフをなめるブルール。

 やはり熱い食べ物を食べるペースはとても遅いようだ。



『そういえばカンガって、初めて出会った頃からずいぶん変わったよな。オレが最初にカンガに出会った時は、オレよりもだいぶ小柄だったのに』

『そうだな。まあ、ブルールと出会ったのはベビーゴブリンの頃からだから、さすがにそこからは変わるとはいえ、まさか風神雷神になるとは正直想像できなかったよ、俺も』



 考察を残す為に進化先を選んで行った結果、俺はゴブリンとしての道を歩む事になった。

 そしてその結果が今に至るのだ。

 一回でもゴブリン以外になる選択をしていれば、今の俺はいなかっただろう。


 オーガとかドラゴンとかリザードマンとかもなろうと思えばなれたんだろうな。

 そんな俺は全然想像はできないんだけどさ。



『オレも驚いたな。まさかカンガが神様になるとは。まあ、昔からオレにとって、カンガは食の神様ではあるんだがな』

『そんな食の神様が出す料理に文句をつけたのはどこのどいつだ?』

『悪かったって。このポトフは美味いよ、うん。ただやっぱり食べづらい事には変わりないからさ……』



 そう言ってシュンとするブルール。

 別に冗談で言っただけなんだけどな。

 正直俺もいたずら心でポトフを出した事も否定はできないしさ。

 ブルールがゆっくり食べ物を食べて、太りにくいように配慮したという意味もあるんだけど。



『そういえばカンガは神になったほどだから、もうカンガに敵う奴は誰もいないんだろうな。あの厄災龍も相手にならない位だしさ』

『……そうだな。この星の大半の奴には勝てるんだろう。でも勝てない相手がいる。それは俺よりも格上の神だ』

『格上の神? そんな神がいるっていう事か?』

『ああ、もちろんだ。俺は風や雷の神という事になっているが、風や雷はある一現象に過ぎない。例えばこの星の創始者の神と比べると、規模が違うし、俺では敵わないという訳だ』

『ふーん、確かに言われてみればそんな気もするな』



 星の中で起きる一部の現象の神である俺と、その一つの星全体の神であるオリジンドラゴン。

 そりゃあ、力の差が出る事は容易に想像ができる。

 その差は縮めようと思えば実は一応手段が全くない訳ではない。

 その方法とは何か?

 それは――――進化である。


 実は風神、雷神になっても、さらに進化先があったりはするのだ。

 そして神の叡智を得た俺は、どのような進化先があるのか、そしてその為の条件は何かを把握する事ができる。


 ではどうしてそんな事が分かっていたにも関わらず、俺は進化をしてからオリジンドラゴンに挑もうと最初から考えなかったのか?

 ……それは、進化条件が俺には満たせそうにないからである。


 例えば、海の神、”海神”へ進化する場合の条件はこうだ。


・何らかの神として一万年以上存在していること

・海の生物の繁栄に一定以上の貢献をしたこと



 ……後者の条件はともかく、前者の条件が鬼畜過ぎるんだよな。

 恐らく今の風神雷神としての寿命はない。

 だからこそ長い目で見れば達成できなくはないのかもしれない。


 だが、今の俺には時間がないのだ。

 そもそも一万年も待っていたら、仲間達はみんな生きてもいないだろうし、そんな時に強くなっても意味がない。

 故に”海神”として進化をするという選択肢は自然となくなるだろう。


 では他の選択肢はどうなのか?

 ……正直、ほぼ全ての選択肢に厄介な時間条件がついているのだ。

 一番短いものでも100年といった所か。

 やはりオリジンドラゴンと戦うという点では、別の神への進化するという選択はできないと思った方が良さそうだ。



『カンガは進化できるんだろ? カンガがその格上の神に進化したりはできないのか?』

『できなくはないさ。ただ、100年とか一万年とか経ってからの話にはなるけどな』

『い、一万年だと!? それは気が遠くなるような話だな……。でも今のカンガなら寿命もないから進化できなくもないという事か』

『そういう事だな。正直そこまで生きていけるような気はしないんだけどな、主に精神的な理由で』

『まあ、肉体的に滅びなくても、精神的にやられる事もあるだろうな。ちなみに時間制限がない進化先は一つもないのか?』

『あっ、えっと……全くない訳ではないんだが……』



 そう、実は全く進化先がない訳ではない。

 ただ、その進化先を選んだ瞬間、俺にはバッドエンド確定だから選択肢から外しているというだけで。


 ちなみにその進化先の条件はこうだ。

・一定以上の罪を犯すこと


 ただ、これだけである。

 だからこそ、別に神になって間もない俺でもなろうと思えばなれなくもない。

 しかも、神としての格は最強格なので、オリジンドラゴンを遥かに上回る力を持つ。

 ただ、この一定以上の罪というものがくせもので、その罪はその人物にとってどれだけ心の負荷がかかったかで判定されるらしい。

 例えばオリジンドラゴンが当然の権利と言わんばかりに人々を虐殺した所で、この意味での罪は増えない。

 つまりは相当自分にとって心理的な負担になる事をしないと、その条件は満たせないのだ。

 なのでこの条件というのは言葉ではシンプルだが、相当えげつないものなのだ。


 その上、この進化先にはいくつか裏がある。

 一つがこの一定以上の罪を犯したら強制的に進化する事。

 つまりは進化しますかと聞かれる事もなく、勝手に進化してしまうようだ。

 そしてもう一つが、この進化先になった場合、その罪を償う為に、長期間の労働が義務付けられるという事がある。

 つまりはその状態はある意味、罪を犯した囚人が牢獄で労働しているようなものなんだろうな。

 しかも寿命のない種族だから、その労働期間は何十年どころではなく、数千年、いや数万年レベルにもなり得るとか……。


 そんな状態はまさに地獄。

 あっ、ちなみに服役先もその名の通り、地獄のようです。

 だって進化先の名前が閻魔カンガ。

 つまりは閻魔大王という訳なんだからな。

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