201.久しぶりに住処に帰ってきました。
ペガサスに乗って、ホージュ熱林までたどり着いた俺達。
ホージュ熱林の中を歩いて住処まで向かう。
ガサッガサッ
おっと、どうやら森の問題児がおでましのようだ。
俺達が一度遭遇し、当時は逃げるしかなかった相手、それは――
ジャイアントシンミアLV61
HP 1282/1282
MP 116/ 116
攻撃力 1023
防御力 981
魔法攻撃力 804
魔法防御力 881
素早さ 916
スキル
剛力 威圧 岩石投げ 逆境
特殊スキル
熱林の暴君
巨大な猿、ジャイアントシンミア。
こいつは熱林の中でも一際強い奴で、熱林の支配者でもあった。
とても敵いそうにない相手ではあったのだが、今そのステータスを見ると、何だか全然大した事ないように感じてくる。
いや、それだけ俺達が強くなったというだけなのだが。
ジャイアントシンミアは俺達と遭遇すると、威嚇をしてきた。
俺達は相手にせずに素通りしようとしたのだが……
ウギャギャ-!
自分は熱林の支配者。
自分を見た瞬間、他の者は誰もが畏怖し、そしてその場から逃げ去っていく。
それが巨大猿にとっての常識であった。
だが、俺達は巨大猿の事をまるで存在しないかのようにふるまった。
恐れる訳でもなく、警戒すらする事なく。
その俺達の態度に巨大猿は大層ご立腹のようだ。
怒った猿は俺達に対して岩石飛ばしの攻撃を仕掛けてきた。
……コイツ、実力差も分からないのか。
熱林の中で自らが最強であり、それが当然だと思い続けてきた哀れな巨大猿を俺は哀れみの目で見つめた。
ならば、その実力の差というものを見せつけてやろうじゃないか。
俺は【形態変化】を使用し、風神へと姿を変えた。
そして自分が持つ巨大袋を振り回して突風を引き起こした。
すると、巨大猿が飛ばした岩石は進む方向を変え、巨大猿に直撃する事になる!
巨大猿は何が起きたのか分からない様子で、一瞬動きを止めた。
だが少しして一層怒りに感情を染めたようで、俺達の方に向かってきて、直接攻撃をしようとしてくる。
遠距離攻撃が通じないのなら近距離攻撃をしようってか。
懲りないな、コイツ。
「愚かじゃな。サンダーアロー」
賢者が放った雷の矢が巨大猿に直撃。
すると巨大猿は為す術なく、その場で命を落としたのだった。
強さ故の傲慢。
それがこの猿の命取りになったな。
別に殺すつもりなんてなかったのに、わざわざ殺されに来るなんてさ。
本当愚かだよ、コイツは。
『片付いた。先を急ぐとしよう。カンガ殿、住処まではあとどれ位じゃ?』
『そうだな……あと10分ほど歩けばたどり着くだろう』
『10分か……随分と奥地にあるんじゃの、お主の住処は』
『まあな。でもそこはとても過ごしやすいんだぞ? 熱林の割には涼しいし、それに新鮮な水も近くにあるから飲み放題だしな』
『涼しいのか。その言葉を聞いて安心したわい。何しろ、こんなに暑い中でずっと過ごすのは体に堪えるからの』
まあ、そうだろうな。
熱林は恐らく30℃は超えるほどの高温で、湿度も高くてジメジメしている。
日本の不快な夏に慣れている俺でもだいぶ辛いような場所だから、他の人なら尚更そう思うのだろう。
『もうちょっとの辛抱だ、スーさん。だけど確かにずっと我慢するのも堪えるよな。ならちょっとこの暑さをマシにしてみるとするか』
俺は【風神技】を使用する。
そして無風だったこの地に風を発生させた。
それも上空の冷たい空気を吹き付けさせているので、ひんやりとした冷たい風をだ。
『おお、これは過ごしやすいのう』
『そうだな。俺も初めて使ってみたが、やっぱり風があるとだいぶ体感温度が違うもんなんだな』
風を起こしたことで、だいぶ暑さが軽減され、俺達は一層気分よく住処を目指す事ができた。
そしてしばらく歩くと、ようやく住処の入口までたどり着く事ができたのだった。
『……カンガ、ここが入口だぞ』
『よし、じゃあ開けるか』
入口は目立たないように周囲の土と同じような材質のもので使っているのでちょっと分かりにくい。
若干へこんでいるのが目印といった所か。
俺は入口を開け、そしてケロマに侵入者防止のものを解除してもらってから中を進む事にした。
住処の中を進んでいく俺達。
すると住処の中は以前と変わらない状態が広がっていた。
侵入された形跡もなし。
この分だとちょっとほこりを払えばすぐにでも快適に過ごせそうだ。
住処の状態は変わらないのだが、だいぶ住処が窮屈になったように感じた。
というのも、この住処を離れた時、俺の種族はゴブリンライダーであり、体もだいぶ小柄だった。
体長も確か1メートルちょっと位しかなかったはず。
だけど、今の俺は風神。
体長は2メートル弱といった所だろうか。
ゴブリンエンペラーの頃よりもさらに一回り体長が大きくなったような感じだ。
あと、横にもだいぶ大きくなったし。
そりゃあ、狭く感じるのも納得だろう。
いや、別に食べ過ぎて太った訳じゃないんだけどな?
そういう種族ってだけなんだよ、きっと、うん。
「うわぁ、懐かしいわね、ここ! うん、ここでみんなと過ごしたっけ……」
ケロマはそう言って部屋のあちこちを見て回っている。
ブルールとグリザーも同様だ。
「なるほどのぉ。カンガ殿はこういう所で過ごしておったのか。ここまで来ると、一種の隠れ家のようじゃな。部屋の質も申し分ない」
「そうですね。お部屋も広々としていますし、とても過ごしやすそうです」
うん、まあだいぶ頑張って作ったからな。
だけど、正直今のこの状態でみんなで暮らすにはちょっと窮屈なんだよな。
今は俺、ブルール、グリザー、ケロマの四人に加えて、ターニャ、賢者、ガルサール、へクシアの四人が加わった状態だから、二十畳ではちょっと狭い気がする。
これは少し増築が必要そうだ。




