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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
2/222

2.住処を作ってみました。

 よく生活に必要な三大要素として衣食住が挙げられる。

 そのうち食は満たされた訳だから、残るは衣と住だな。

 まあ、服が必要なのは人間に限った話だし、ゴブリンの俺には必要ないかな。


 となると、残るは住となる。

 本当に俺、どこに住めばいいんだ?

 いや、住むなんて贅沢なこと言わないから安全な場所にいたい。

 別に狭くてもいいからさ。


 でもそんな場所なんてあるわけないよな。

 果たしてどうしたらいいんだろうか?



 安全な場所なんてない。

 なら、なければ自分で作ればいいんじゃないか?

 例えば今、俺は土の上にいる。

 なら、土を掘って住処を作るっていうのはどうだ?


 入口に蓋をすれば見つからなくなるだろう。

 それにここはオオカミの目から逃れることができるほどの茂みの中だ。

 だとしたら、そもそもこの入口にたどり着く魔物自体少ないんじゃないか?

 我ながらよくできた案だ。


 よし、やることは決まったな。

 ならば後は行動するのみ。

 とりあえず足下の土をかきわけてみることにする。



 ガリッガリッ



 地面を掘るのは思ったよりもしんどいな。

 掘る度に植物の根っこが絡んできてうまく掘れないのだ。

 まあ、こればかりは茂みの真下を掘ろうとする俺が悪いんだけど。

 安全の為なら多少の苦労も仕方あるまい。



 ガリッガリッ



 うん。

 結構掘れたな。

 なんとか俺一人が入って寝返りをうてる位の穴を作ることができた。

 とりあえず深さはこれ位でいいだろう。


 後はもう少し快適に寝られるようにしないとな。

 いくらこのサバイバルな状態とはいえ、さすがに固くて息苦しい穴で寝たくはない。

 まず、息苦しさを解決しなくては。


 とはいえ、他の天敵に入られないよう、入口はしっかりと塞ぐ必要がある。

 だから入口とは別に細い空気穴みたいなものが必要だな。

 そうなると何か細い棒状のものを使って掘るしかないだろう。


 今の俺はゴブリンだ。

 手足などがあって、人間と近い体の形はしているが、所詮は魔物。

 やはり器用さは人間に及ばない。

 その分、力は人間よりもありそうだけどな。

 赤ん坊で自分が入れるだけの穴を作れてしまうほどだしな。

 まあ、それでも攻撃力は1しかない訳だが。


 話がそれてしまったな。

 そんな訳で自分の手では細い穴を掘ることができないのだ。

 それに幸い、至る所に木の枝が落ちていたので、特にその細い穴づくりに苦労はしなかった。

 道具が使える魔物であるだけ良かったというべきかもな。

 四足歩行の魔物じゃ木の枝で穴を掘るなんてことできないもんな。


 空気穴の作成にはそれほど時間はかからなかった。

 そんな深く掘る訳でもないし、当たり前か。

 という訳で息苦しさについてはこれで解決。

 残るは寝心地の良さだな。


 元の世界でいうベッドみたいな贅沢なことは言わない。

 だがせめてそれに近いフワフワした感じなものはないだろうか?

 あ、そういえばなんか緩衝材みたいな植物があった気がするな……

 どれどれ?



 フワンポイズ草

 フワン大陸に生息する植物。

 毒性が強く、捕食されることはあまりないが、限られた場所にしか生えない為、貴重。

 強い毒性を持つため、調合に用いられることが多い。

 弾力性があり緩衝材としても使われることがある。



 こいつか!

 確かにこの草をよく見ると綿みたいなものがくっついてる。

 触ってみても結構フワフワしていていい感じだぞ?

 だがこいつ、毒あるんだよな。

 しかもさっき俺が苦しんだフワンタクサ草よりもさらに強力な毒が。


 って、そういえば思わず俺、こいつの綿に触っちまったけど大丈夫なのか?

 ちょっと確かめてみるか。



 ベビーゴブリン LV1

 HP  8/10

 MP  5/ 5

 状態    弱毒

 攻撃力    1

 防御力    1

 魔法攻撃力  1

 魔法防御力  1

 素早さ    1

 スキル

 観察、考察、隠密、毒耐性



 ほら言わんこっちゃない!

 早くフワンイヤス草をプリーズ!

 いや、自分で取りに行くしかないんだけど。



 毒の対処方法が分かっているので、今回は特に慌てずに解毒できた。

 また、毒を我慢したおかげで毒耐性はlv3まで上がった。

 この毒耐性、全部俺のドジでlvが上がっているから何か素直にlvアップを喜べない。

 昔から時々考え無しで行動しちゃう癖があるんだよな。

 結構考えて行動しているつもりなんだが。


 話がそれたな。

 という訳で、フワンポイズ草は危な過ぎて寝床には使えそうにない。

 毒さえなければ最高だったのになー。

 まあ、悔やんでも仕方がない。

 他に良さそうなものを探すか。





 ない。

 どこを探しても見つからない。


 あれから色々と探し回った。

 拠点にしようとしている茂みの外に出てまで探した。

 それでもなかった。


 見つかるのはフワンタクサ草ばかり。

 あっちを探してもこっちを探してもフワンタクサ草。

 本当にフワンタクサ草ってそこら中にあるんだな。

 これが食用になればどんなに楽か。

 なんで毒あるんだよ……


 また話がそれてしまったな。

 本題に戻ろう。

 とにかくもう日が暮れそうだし、今日の所はもう素材の捜索はできそうにない。

 ここには電気なんてものはないから夜中は真っ暗だろうし。


 とにかく、クッションになりそうな植物はフワンポイズ草しかない。

 だが、それに触れただけで毒をあびてしまうことは実証済みだ。

 故に、フワンポイズ草はまず使えそうにない。

 つまり、今日の所は何もなしで寝るしかない。


 はぁ……

 地面の上に直接寝るのか。

 固そうで寝心地悪そうだけど、まだ安全なだけマシか。

 命には代えられないもんな。


 俺はしぶしぶ寝床用の穴に入ってみた。



 ―――狭い。



 いや、分かっていたけどさ。

 思った以上に狭いんだけど。


 掘っているときは体が入ればそれでいいと思っていた。

 実際体は入るし、頑張れば寝返りもうてるよ?

 でもこの中で一晩過ごすと考えると窮屈すぎる。

 昼間の自分に文句を言いたい。


 まあ、終わったことは仕方ない。

 今日の所は我慢して寝るか。






 寝れねぇ……



 頑張って寝ようとはしている。

 だが息苦しさと地面の固さのせいでなかなか寝付けないのだ。

 ちなみにこの息苦しさは多分酸素不足という訳ではない。 

 空気穴をしっかり作ってあるし、そこは問題ないだろう。


 ではなぜ息苦しいのか?

 それは狭いからだ。

 いや、それも一因にはなっているがもっと根本的な理由がある。

 その理由とは―――




 時は少しさかのぼる。


 寝付けないで暇を持て余していた俺。

 何か暇つぶしできるものがないか考えた。

 すると良い事を思いついたのだ。


 それはスキル【観察】。

 確かちょっと離れていても使えたよな。

 時々何者かが地上を歩く音が聞こえるから、そいつに対して使えないか?

 そう思ったのだ。


 正直【観察】を使っても、相手のステータスに関しては不明だらけであまり役立たない。

 でも暇つぶしにはなるだろう。

 種族名やレベル位なら見れそうだし、夜にどんな魔物がいるのか見てみたい。

 【観察】もそれ位だったら一役買ってくれるだろう、多分。


 おっ、早速足音が聞こえてきたぞ。

 さて【観察】っと。



 ウルフ LV15

 HP 112

 MP 30

 ステータス 不明

 スキル   不明



 ああ、うん。

 やっぱり昼間のやつより強いよな。

 そういえば俺を襲ったオオカミ、いやウルフって昼間にいたけど、本来は夜行性だよな?

 もしかして弱い奴らが昼間に行動しているんじゃないか?

 夜中は強い奴らが行動するから獲物もとれないだろうし。

 この世界のウルフが元の世界のオオカミと違うだけかもしれないけどな。


 それを考えると、夜出歩かなくて正解だったな。

 まあ出歩こうとしても真っ暗で何も見えないだろうから行動しようもないけどな。


{ 【暗視lv1】を獲得しました。 } 


 おーい、天の声さん、夜に出歩けってか?

 いやいや冗談じゃない。

 意地でも夜は外に出ないからな。



 しばらくその場で待っていると、そのウルフは近くから立ち去ったようだ。

 それにしても安全な場所から魔物を観察するっていいよな。

 まあ、観察といっても直接姿を見ている訳じゃないけど。


 もしこの穴を作っていなかったらと思うとゾッとする。

 この穴の居心地は悪いけど、それは後で良くしていけば良い話だしな。

 まさに寝床様様だわ。



 トンットンッ



 おっ、また新しい足音が。

 どれどれ?



 ラビット LV16

 HP 102

 MP 50

 ステータス 不明

 スキル   不明



 おっ、今度はラビット、つまりウサギか。

 道理で足音が軽いと思った。


 しかしウサギと言えどもこの強さか。

 やはりそれ位強くないと夜の地上ではやっていけないんだろうな。

 厳しい。


 でも逆に言えば、それ位強くなったら夜でも出歩いていいということだよな。

 まあ、当分先の話にはなりそうだけど。



 しかし、俺はこの考えを改めることになる。


 ウサギが足早に立ち去る音が聞こえた。

 まるで何かから逃げるような慌てた足音だったけど、どうしたんだろう?


 そう思っていると突如、体全体に悪寒が走る!

 い、一体何が起きているんだ?


 しばらく震えながら待っていると、鈍く、とても重そうな足音が聞こえてくる。

 その何者かが一歩足を踏み出せば地面はその度に揺れる。

 どれ位揺れるかといったら、震度3位だろうか。

 まあ、耐えられないほどの揺れじゃないな。


 いや、地面の揺れの話をしている場合じゃない。

 問題なのは、その生物が歩くだけでこれだけ揺れるということだ。

 歩くだけで地面が揺れるってどんだけ重いやつなんだよ?

 それにこの悪寒。

 間違いなくウルフやラビットとは桁違いの強さを持っているだろう。

 ウルフやラビット相手でも俺に勝ち目ないっていうのに。


 【観察】を使うか。

 相手が強いことが分かっている。

 でもそうなるとどこまで強いのか単純に興味が湧くのだ。


 足音が近づいてくる。

 震度5弱位、激しく揺れる中、俺は穴から出ないように、かつ【観察】を発動させた。



 ドラゴン LV???

 HP ???

 MP ???

 ステータス 不明

 スキル   不明



 ドラゴンだと!?

 ゴブリンとかいる世界だからまさかとは思っていたが……

 ていうか、なんだよ。

 レベルとかHPとか全部分からないじゃねーか。

 調べるまでもなく強いことは分かっているけどよ。



 考えが甘かった。

 lv15前後あれば夜も大丈夫だと思っていたが、そんなことはなかった。

 一体何レベルあればそのドラゴンに勝てるんだ?

 いや、そもそも勝てるのか?

 種族的にどう頑張っても勝てないとかありそうだもんな。


 一匹のアリと一人の人間が出会って、アリが人間を殺したなんて話は聞いたことないしな。

 その逆、人間がアリを踏みつぶすようなことはあってもだ。

 はあ、ますますこの世界で生き延びられるか心配になってきた。

 まだ死にたくないからな、俺。

 なんとか方法を考えないとな…… 



 地面の揺れを必死に耐えてしばらくすると、やがて地面の揺れはおさまった。

 どうやらドラゴンはどこか遠くへ過ぎ去ったらしい。



{ 【耐震 lv1】を獲得しました。 }

{ 【恐怖耐性 lv1】を獲得しました。 }

{ 【隠密 lv6】を獲得しました。 }

{ 【観察 lv2】を獲得しました。 }



 ドラゴンへの恐怖と引き換えにスキルを手に入れたか。

 それにlv6ってことは、結構俺の【隠密】のレベル高かったのね。

 だからウルフからも逃げられたのか。




 という具合だ。

 そのドラゴンが立ち去ってくれたのは良かった。

 だが、その後そのドラゴンへの恐怖でしばらく寝られていないのだ。

 【恐怖耐性】手に入れたはずなんだが意味なくね?


 まあ、文句言っても仕方ない。

 羊でも数えて寝るか。





 ゴブリン生活一日目終了時のステータス


 ベビーゴブリン LV1

 HP 10/10

 MP  5/ 5

 攻撃力    1

 防御力    1

 魔法攻撃力  1

 魔法防御力  1

 素早さ    1

 スキル

 観察lv2、考察lv?、隠密lv6、毒耐性lv3、暗視lv1、耐震lv1、恐怖耐性lv1


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