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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
19/222

19.合成をしてみました。

 俺はしばらく森林地帯を散策する。

 すると、遠くに魔物の気配を何となく感じ取った。

 とりあえず木の陰に隠れて様子を見るか。


 しばらく待っていると、その魔物が近づいてくる。

 こっそりとその方向をのぞくと、そこには鹿っぽい魔物の姿があった。

 とりあえずステータスを見てみるか。



 フワンスタッグlv7

 HP 101

 MP  12

 ステータス 不明

 スキル   不明



 あれ?

 コイツのステータスは見えないの?

 多分俺、コイツに勝てると思うんだけどな。

 【観察】さん、思ったよりも融通が利かないなあ。


 だが、もしかしたらこの鹿が特殊なスキルを持っている可能性もある。

 故に絶対に勝てるとは言い切れない。

 相手は未知の相手。

 どんな攻撃をしてくるかも分からないのだから。


 万が一を考えてトラップを仕掛けてみよう。

 できれば相手を動かせないようにしたい。

 相手の身動きがとれなければ、その隙に倒せばいい話だからな。

 だから例えば麻痺させるようなトラップはいいんじゃないか?


 その為にはまず麻痺させる道具が必要だな。

 実はそれを作るアテはもうつけてある。

 この森林地帯に来てから見つけたこのキノコを使えば多分できるだろう。



 ビリリマッシュ

 フワン大陸の森林地帯に生えているキノコ。

 これには麻痺成分が含まれているので、口にしてはいけない。

 一度口にしたら数分は身動きがとれなくなるだろう。



 うん。

 物騒なキノコだよな。

 これを早速調合しよう。

 作りたいものを調合リストから選んでっと。



 まぜまぜ……



{ ビリリトラップを入手しました。 }



 よし、成功。

 一応効果を見ておくか。



 ビリリトラップ

 ビリリマッシュの麻痺成分を使ったトラップ。

 踏むと同時に麻痺効果のある胞子がばらまかれる。

 効果時間は短め。



 おお、いいんじゃないか?

 効果時間は短いようだが、別にそんなことは問題にならないし。

 一瞬でも痺れてくれれば、そのスキに攻撃を当てればこっちのもんだからな。


 ただ、ちょっと懸念がある。

 トラップを設置するのはいい。

 だが、当たり前ではあるが、トラップは発動条件を満たさないと発動しない。

 つまり、ビリリトラップの上を魔物が通らないと意味がないのだ。


 それではいつまで経ってもキリがない。

 日が暮れてしまう。


 ならどうすればいいのか?

 その案として、ビリリトラップにこの香りを付与することを考えている。



 スイートパフューム

 エリュミュスで浸透している甘い香水。

 大変人気があり、香水としては珍しく、食材への香り付けにも使用されることがある。



 そう、甘い香りだ。

 この甘い香りをビリリトラップが発すればすぐに効果を発揮すると思うのだ。

 ちなみにこのスイートパフュームは森林地帯にあったとあるキノコから【細工】して作った。

 そのキノコの詳細は次の通りだ。



 スイーキノコ

 フワン大陸の森林地帯に生えているキノコ。

 このキノコは香料の原料に使われることが多く、ほのかに甘い香りがする。

 食用にはならないので注意。



 ほのかに甘い香りがするのか。

 でもかいでみても、スイーキノコ自体からはそこまで甘い香りはしなかった。

 ブルールみたいな嗅覚が鋭い奴だったら感じとれるのかもな。

 だが、【細工】してスイートパフュームになったら強烈な香りがした。

 【細工】も【加工】ほどではないが、結構色々変えちゃう危険なスキルだよな。

 本当に。


 それにしてもビリリトラップにスイートパフュームの香りをつけるなんてことができるのか?


 同じ系統の物、例えば【調合】で作るようなものをまた【調合】することはできる。

 だが、【調合】したものを【加工】することはできない。

 そりゃ葉っぱを砥石で研いだって何にもならないよな。


 でも俺がやりたいことってそういうことなんだよな。

 【加工】でできたものに【細工】でできたものを掛け合わせる。

 やっぱりできないのか?


 いや、とりあえずやってみよう。

 できないのならできないでもいい。

 別に失敗したところで命の危険がある訳でもあるまいし。


 何事も挑戦だ。

 さあ、やってみよう。



 ボフッバフッ



 何か変な音がしたな……



{ 鉄くずを入手しました。 }



 あーやっぱりか。

 ちょっと無理があったかな?

 作っているときに変な音がしたし。



{ 【合成 lv1】を獲得しました。 }



 お!?

 まさかのスキル獲得だと!?

 ということは、俺がやろうとしていることもスキルを使ってできるんじゃないか?

 早速材料から作り直してみるか。



 ガキンッガキンッ

 チョキチョキ

 ボフッバフッ



{ ビリリトラップを入手しました。 }

{ スイートパフュームを入手しました。 }

{ 合成に成功し、ビリリトラップ改を入手しました。 }



 きたか!?

 【観察】さん、出番ですよ!



 ビリリトラップ改

 ビリリマッシュの麻痺成分を使ったトラップ。

 踏むと同時に麻痺効果のある胞子がばらまかれる。

 効果時間は短め。

 香りの付与効果を持つ。



 来たわ。

 これなら、トラップ自体から香りを発することができる。

 トラップ自体におびき寄せる効果があるから、あまり待つ必要がない。

 完璧だ。



 俺は早速近くにこのビリリトラップ改を設置した。

 そして木の陰に潜み、その時を待つ。




 【合成】したビリリトラップの効果は絶大だった。

 設置して1分も経たないうちに、1匹の鹿がやってきた。

 そして鹿はあっさりとビリリトラップにかかってしまう。


 よし、チャンスだ。

 いくぞ。


 木陰から出た俺は一気に鹿の元へと近づく。

 そして体を短剣で真っ二つに切り裂いた。



 あっけなかった。

 罠の力ってスゲーな。

 俺が近づく間、鹿が全く身動きとれてなかったぞ。

 今後も活用していこうか。


 それに【合成】の力も凄い。

 ビリリトラップの効果を損なうことなく、さらに性能を向上させたもんな。

 【合成】をうまく活用すれば、さらに良い物を作りだすことも夢じゃない。

 色々と後で試してみるか。



 俺は鹿肉を持ってそそくさとその場から退散した。


 ビリリトラップ改はかなり優秀なトラップだった。

 だが、欠点も存在する。

 それは、トラップが発動した後、しばらくその場に甘い香りが充満することだ。 

 つまり、もたもたしていたら他の魔物がやってきて襲われてしまうということだ。


 実際、俺が森を抜けるとき、背後から複数の生物の気配を感じ取った。

 多分一歩遅れていたら、他の魔物に狙われていただろう。

 危なかった。



 さて、これで準備は完了だな。

 森林地帯でとった木材、鹿肉。

 【加工】を使って作ったフライパンとマッチ。

 これだけあれば、焼肉くらいはできるだろう。


 さあ、調理開始だ!


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