表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅵ 真相を求めて
174/222

174.賢者が協力してくれることになりました。

『協力するのは良いんだが、俺、体の状態を読み取るなんて高度な事はしたことないぞ?』

『大丈夫じゃ。今からワシがそのやり方をカンガ殿に念でイメージを送り込む。それで何となく感覚で分かるはずじゃ』



 そう言って目をつぶる賢者。

 すると直後、俺の頭の中に何かのイメージが入ってきた。

 えっとふむふむ……なるほどこうやるのか。

 あと、このように情報を念話で送る時にはこうする、と。


 賢者の送ってきたイメージはとても分かりやすく、今すぐにでもそういう事が出来るのではと思ってしまう程だった。

 賢者は知識をたくさん持っているだけでなく、教えるのも上手いのか。

 こりゃ、敵わねえわ。



『試しに今から召喚する魔物に関する情報を読み取ってワシに送ってみてくれ。実際に練習してみよう』

『ああ、分かった。よろしく頼む』



 それから賢者が何体か魔物を召喚したので、俺はその魔物の情報を読み取り、賢者に念話で事細かに伝えてみる。



『うむ、上出来じゃ。これだけ伝えてくれれば、十分じゃろう』

『これを後は本番でもやるだけって事か?』

『そうじゃな。ただ、本番はより複雑な情報をワシに送る必要があるじゃろう。かなり大変な作業にはなるが、よろしく頼むぞ』

『ああ、分かった。……って、そういえば賢者様が直接協力してくれるような流れになっているみたいだが、それで良いのか?』

『全然構わぬよ。何しろ最近は変化がなくて退屈していた所じゃ。良い暇つぶしにはなるじゃろうて』



 暇つぶし……うーん、なんかそう言われると何だかなぁと思うんだが……。



『気分を悪くしてしまったかの? いや、冗談じゃ冗談。とにかくちょうど刺激が欲しいと思っておった所なのじゃ。ワシもようやく本気を出す時が来るようで、胸が高鳴るわい』



 そう言って微笑みを浮かべる賢者。

 どうやら単純にそう言ったことに関わる事を楽しみにしているようだな、賢者は。

 別に悪気があるようではないし、手伝ってくれるに越した事はないか。



『それなら、頼りにしているぞ、賢者様』

『……賢者様と呼ばれるのも何だかむずがゆいの。それに賢者やスーフォスと人前で呼ばれたらたちまち注目の的になってしまうから避けたいの』



 なるほどな。

 確かにスーフォスさんとか呼んでたら、賢者がここにいるということでちょっとした騒ぎになりかねない。

 賢者は本になる位有名で、居場所が分からないという存在だから、うかつにその名を呼ばないよな。

 果たしてどうしたものか。



『ならどう言えばいいんだ?』

『そうじゃな……賢者、スーフォスという以外の呼び方ならなんでも良いぞ』

『それ以外って……あだ名みたいなものをつけろっていう事か?』

『それでも構わぬよ。とりあえず好きな名前で呼ぶと良い』

『そうか……それなら、スーさんでどうだ?』

『スーさん……なるほどの、良い呼び方じゃ。ならこれからワシの事はスーさんと呼んでほしい』

『了解。それじゃスーさん、これからよろしく頼むぞ』

『こちらこそ、よろしく頼むのじゃ、カンガ殿』



 こうしてデュラスを救出する為、賢者スーフォスが一時的に俺達に同行する事になった。

 食事をとり終えた俺達は山小屋から出る。

 そしてターニャがペガサスを三体召喚した。



『なるほど。カンガ殿はペガサスに乗ってここまで来たのじゃな。道理で早い訳だ』

『……というか、スーさん、あそこからここまで相当距離があるって分かっててここまで来いって言うなんて酷いよな』

『別に強制はしてないぞ、ワシは。それにカンガ殿が普通ではない事は分かっておったから、来る意思があるのなら何らかの方法でここまでたどり着くとは思っておったしな』



 ……確かに賢者からは来たらもてなしができると言われただけで、別に来いと強制された訳ではないな。

 やっぱり上手いこと言うもんだ、このお爺さんは。


 それからペガサスに乗ってメルデサーナ街を目指す俺達。

 そんな中でターニャが話し始める。



「そういえばスー様はその格好で出歩かれるおつもりですか? 詳しい人ならば外見だけでスー様の事が分かる人もいると思いますが……」

「おお、確かにそうじゃったな。忘れておった。それなら、これでどうかの?」



 賢者はそう言うと自身の顔に魔法をかけ、みるみるうちに顔を変形させていく。

 そして数秒もすると、若い黒髪の男の顔が現れた。



『えっ!? スーさんが若返った!?』

『ほっほっほっ。面白いじゃろう、この技?』

『そうだな。でも何かその姿と口調が合っていなくてだいぶ違和感が……』



 若い黒髪の男がお爺さん口調で話しているってなかなかおかしな光景だよな。

 声の質も若い男のものなので、男がふざけてそういう口調で喋っているようにしか聞こえない。



「まあ、そう思うじゃろうな。じゃが安心せい。これは単純にワシの周囲に認識阻害の魔法をかけただけじゃよ。別にワシの顔自体は何も変わっとらん。ほらの」



 そう言うと同時に、突然賢者の顔が元のお爺さんの顔へと戻った。



『えっ!? 一瞬で顔が戻った、だと!?』

『いや、お主に対してだけ特別に認識阻害魔法を解除したのじゃ。ワシが指定した相手にだけ、認識阻害の影響を取り除く事が出来るからの。これで問題なかろう?』

『なるほど。これで特定の人にだけ本当の姿を見せる事が出来る訳か。やっぱりスーさんはすごい魔法を使うもんだな……』

『ほっほっほっ。まあ、伊達に長年生きておらんからの。カンガ殿もきっと覚えればすぐに使えるようになるじゃろうて』



 ……そうなのか?

 俺、魔法は基本的に苦手だからな……。

 召喚できるのはゴーレムのみ。

 後は水魔法がちょっと使えなくもない程度で、それ以外の魔法は使えなかったりするからさ。

 まあ、頑張れば出来なくもないのかもしれないな。

 時間があったら勉強してみるのも面白いかもな、魔法の事。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ