166.ゴーレムは強いらしいです。
今回の依頼書は村の護衛ということだが、俺達の目的はあくまでデュラスを探す事だ。
なので依頼書のように村を守る為にひたすら戦うことなんてしていたら、デュラスを探す事ができなくなってしまう。
その為、俺達は今回は依頼を受けない事にした。
まあ、魔物が湧き出る大元を押さえようとしているんだから、俺達も間接的に村を守ることに貢献はできる事にはなるけど。
そんな事は村の人達は知る由もないしな。
とにかく、早く村の近くまで行くとしようか。
ただ、一つ問題がある。
『ケロマ、まだ転移防止のバリアを用意する事はできていないんだよな?』
「……うん、ごめん。バリアをしっかりと機能させようと思うと、多分三日はかかっちゃうから、今は用意できそうにないわ」
三日か……。
そんなにかかるなら、確かに待っていられないよな。
そんなに待っていたら、まず村は魔物によって滅ぼされるだろうし、そもそもデュラスもまたどこかへ行ってしまう可能性だってある。
転移される恐れはあるけれど、騒動を抑えるために、デュラスと接触するために、ここは行動すべきだろう。
もしかしたら今度は少しでも話ができるかもしれないからさ。
『分かった。万全の態勢ではないけれど、俺達は行くべきだと思う。次にいつチャンスが訪れるか分からないからな』
「その方が私も良いと思う。今回で上手くいかなくても次回に繋げる布石をうつ事はできるもの」
『つまり、ケロマに何か考えがあるっていう事だな?』
「うん。ただその代わり、私を一緒にデュラスの所まで連れて行って。そうすればできる事があると思うから」
『ああ、分かった』
次回に繋げる布石、か。
行動しなければ何も得られないし、始まらない。
だけど行動すれば、何かに繋がるかもしれないもんな。
もちろん、それだけのリスクはある訳だが、そんな事を恐れていては前に進めないからさ。
『それじゃ、みんな行こうか』
俺がそう念話で伝えると、みんなは一斉にこくんとうなづく。
そうして俺達は街を出て、ペガサスに乗り、アクラ村の近くへと飛んで向かっていくのだった。
「カンガ様、どうやら目的の場所近くまで来たようですよ」
そうつぶやくターニャ。
地上には多くの魔物がひしめいている様子が見られる。
ちなみにその中の一体を【観察】すると……
グランドリザード LV76
HP689/689
MP 83/ 83
攻撃力 527
防御力 319
魔法攻撃力 187
魔法防御力 201
素早さ 318
スキル 咆哮 地魔法 根性 ブレス
うわっ、レベル76か。
しかも周りにいる魔物も大体それ位のレベルだ。
どうやら前の騒動よりも一体一体の魔物のレベルが30近くも高いようだな。
一体一体が強くないとしても、何百体という数の魔物がいるから、防衛は相当厳しいだろうな。
それにレベル70台の奴らがごろごろいるから、一体が決して弱すぎる事もないしさ。
防衛する人達、本当に頑張ってくれ。
俺達の仕事はその大元、恐らくデュラスを説得して襲撃を止めさせることだ。
一刻も早く、デュラスを見つけないとな。
「カンガ様、あそこにいる人間ってもしかして!?」
ターニャが指さした方向を見ると、そこにはサイのような魔物にまたがる一人の人間の姿が。
よくよく目を凝らしてみれば、確かにデュラスで間違いなさそうだった。
そしてそのデュラスが杖のようなものを使って、デュラスの周辺には魔物がどんどんと湧き出ている。
やはり、魔物はデュラスが呼び出しているという事は間違いなさそうだ。
『デュラス……やはりお前が魔物を呼び出していたのか……一体そんな事をして何になるっていうんだ』
『ブルール……』
デュラスの姿を見て、落ち込むブルール。
そりゃ、かつてのパートナーが人類に敵対するような行為をしているんだもの。
しかもブルールに対しても容赦なく攻撃してくる状態だ。
事情も話してくれないし、ブルールが悲しい気持ちになるのも当然だろう。
『理由が分からない。だから今度こそ、本人の口からそれを聞き出すためにここに来た。そうだろう?』
『……そうだよな。ああ、オレ達はその為に来たんだよな!』
『ああ、その通りだ。だから気を引き締めて行くぞ。今回は近くに邪魔が多い』
前にデュラスに出会った時には周りに魔物が一切いなかった。
一体何をあそこでデュラスがしていたのかは分からないが、でもそれはデュラスと向き合う為には良い環境だった。
だが、今回は違う。
デュラスの周囲には多くの魔物が存在し、デュラスと話し合う環境を作り出す所から始めなければならない。
ちょっと骨が折れそうだな……。
「確認なんだけど、あそこに見える人間がデュラスっていう事でいいのよね?」
『ああ、その通りだが』
「オッケー、分かったわ。それじゃこれをこうして……」
そう言うとケロマはペガサスに乗りながら何やら作業を始めた。
一体何をするつもりなんだろうか?
『ケロマ、今から突撃しようと思うんだが、ケロマはどうする? 近くまで連れて行ってほしいとか言っていた気がするが』
「あっ、うん……ちょっとここで待機させて。やってみたい事があるから。この位置からでも十分デュラスの姿を確認できるから、この位置で十分なの」
『そうか。それならいいんだが。じゃあみんな、あまりもたもたもしていられないし、行くぞ!』
俺は仲間達がうなづいて、いつでも戦える状態であるのを確認する。
うん、みんな大丈夫そうだな。
さて、まずは前準備だ。
こんな混み合った状態では、まともに着地すらできないからな。
『ゴーレム召喚! そして【加工】【加工】【加工】!!!』
俺は魔物がいない場所に巨大なゴーレムを召喚した。
そしてその近くに【加工】によって巨大な剣の形をした土を作り、それをさらに【加工】し続ける事で、その土を鉄に、ミスリルに、アダマンタイトへと次々と変化させていく!
その結果、巨大なアダマンタイトの剣を片手で持ったゴーレムが誕生した。
ちなみにあの巨大な剣の性能はこんな感じである。
アダマンタイト大剣
攻撃力 5000
希少な金属アダマンタイトを剣の形に固められた物。
一体これだけのアダマンタイトがどこからやってきたのか?
それは製作者のみぞ知る。
うん、本当にどこからやってきたんだろうな、あのアダマンタイトは。
それはともかく、大量のアダマンタイトでできた大剣の攻撃力は凄まじい。
まあ大きさにしては攻撃力が低いような気がするのは、質が落ちているからなんだろうな。
だって剣として作っているんじゃなくて、剣の形をしたものをアダマンタイトにしただけだもの。
そりゃあ、剣としての性能は高くないわな。
それでも十分すぎる性能だけれども。
いつもの+補正がかかっていないのも、剣としては質が良いものではないからかもしれない。
さて、殺戮の時間だ。
ゴーレムさん、その剣で思いっきりやっちゃって下さい!
ゴガァァァ!!!
ゴーレムは怪力を活かし、その大剣で一回なぎ払う。
すると地上にいる魔物達が真っ二つに切れていき、悲鳴がこの場に響き渡った。
ちなみにそのゴーレムのなぎ払いの影響で突風が吹き荒れたので、俺達もその場でこらえるので結構大変だったりした。
……ゴーレムってこんなに強いんだな。
今まで壁役としてしか使ってなくてごめん。
正直、ゴーレムなめてたわ、俺。
そんなゴーレムの活躍もあり、地上にいた魔物の大半が倒れる。
だが、そんな中でデュラスの乗っているサイやデュラス本人は無傷で立っていた。
やはり、ゴーレムの怪力に対しても何かしらの対処をしてきたか、デュラスは。
ただ、邪魔をしてくる魔物はほとんどいなくなった。
俺達はデュラスの近くまで向かい、そして地上へと降り、デュラスと対峙するのだった。




