153.白づくめの人物と遭遇しました。
『先程の魔物達が移動する音が全く聞こえない。どこか妙じゃないか、この空間?』
『確かにそうだな。……何か来るぞ!』
そう言って警戒を強めるブルール。
すると前方の方から何かがやって来る様子が見えた。
『あれは……人、なのか?』
前方に現れたのは、白いローブに白い手袋、白い帽子に白い仮面を身につけた者だった。
その者は仮面を身につけているから、俺達はその顔を見る事はできない。
全身白づくめの服を着ているその姿はとても異様に見える。
『におう……あいつから、におうぞ』
『という事は、あの白い奴がブルールの元パートナーなのか……?』
『それは分からないが……とりあえず、話してくる』
ブルールはそう言うと、ゆっくりと前方へと歩いて行った。
そして白装束の者の前にたどり着くと、ブルールはその白装束の者に話しかけるのだった。
『お前は……デュラスなのか?』
そう呼びかけるブルール。
だが白装束の者は何も反応しない。
ブルールが呼びかけたデュラスという名前。
それは恐らくブルールの元パートナーの名前なのだろう。
だけど全く反応を示さないということは、別人という事なんだろうか?
この人物、とにかく謎が多すぎるな。
【観察】で何か分かればいいんだが……
ヒューマンLV???
HP 不明
MP 不明
スキル 不明
……さっぱり分からないか。
今の俺のレベルでも分からないという事は、こいつ、相当強いみたいだな。
一体何者なんだ、コイツ?
俺はその場で警戒していると、白装束の者は右手を上へ掲げた。
すると突然、この場を大きな揺れが襲う!
『な、なんだ……!?』
『ブルール、そいつは危険だ! とりあえずこっちに来い!』
俺はブルールのそばにゴーレムを出現させる。
そして出現したゴーレムによってブルールの体は俺に向かって投げられた。
その次の瞬間――この場一帯を光が覆い尽くし、ゴーレムは一瞬にして消滅してしまう!
俺は【加工】を使って壁を作り、何とか光を遮る事で事なきを得た。
もちろん、ブルールも無事だ。
『一体何だったんだ、さっきのは? ブルールのパートナー、デュラスだっけ? そいつもあんな技を使うのか?』
『……いや、初めて見た。こんな技、見た事がない』
『見た事がない、か。ならあいつはデュラスとは別人なんじゃないか? どうしてデュラスと同じにおいがするかは知らないけどさ』
『別人という可能性は否定できない。……でも、何だろうな。オレ、あいつがデュラスだっていう確信があるんだ』
『確信があるだって? 一体何を根拠にそう言っているんだ?』
『根拠なんてないさ。ただ直感がそう言っているんだ。あいつはデュラスに間違いないって』
そう言い切るブルール。
その声からは迷いみたいなものは感じられなかった。
根拠はないけど確信はある、か。
俺にはよく分からないが、ブルールをそう感じさせる何かは確かにあるんだろうな。
なら、ここはブルールを信じようじゃないか。
こういう直感ってよく当たるって聞くしさ。
『ブルールがそう言うなら、きっとそうなんだろう。だけどそれならどうしてデュラスはブルールの声に反応しない?』
『きっと訳があるんだろう。オレ達には知らない訳が。だから、話し合う必要がある。どんなに苦労する事になっても、だ!』
そう語気を強めながら気持ちを伝えてくるブルール。
どうやらブルールは覚悟ができているようだな。
どんなに苦労してでも、真実を知ろうとする覚悟が。
『なるほどな。でもどんな事情があれ、かつてのパートナーにいきなり攻撃を仕掛けるなんて穏やかじゃないよな』
『ああ、全くもってその通りだな。だからあいつには俺の手で直接目を覚まさせてやるつもりだ』
『目には目をってことか。いいぜ、そういう事なら、俺はサポートしてやる。思う存分、暴れてくるがいい!』
『……カンガ、ありがとな。だが今のあいつは相当強いみたいだ。だから危ないと思ったらすぐに逃げてくれ!』
そう言うとブルールは一気に白装束の者の方へと駆け出していく。
『デュラス! これで目を覚ましやがれぇぇぇ!!!』
ブルールは爪に風属性の魔力をこめる。
そしてその爪を勢いのままに白装束の者へとぶつけた。
白装束の者は全くブルールの動きを予測していなかったのか、ブルールの攻撃をもろに受ける。
そして攻撃を受けた影響で体は大きく吹き飛び、ごろごろと体が回転して地に伏せた。
体が吹き飛んだ影響で仮面は外れ、ついにその顔が明らかとなる……!
『やっぱりお前だったのか、デュラス。何でオレにいきなり攻撃をしてきたんだ? 答えてくれ!』
ブルールは顔を押さえて起き上がろうとしているデュラスに対して、そう叫ぶ。
だがデュラスは全く言葉を発することなく、片手を上へと掲げる。
まさかコイツ、また攻撃を……!?
『ブルール! 危ない!』
『答えろよ! デュラスゥゥゥ!!!』
ブルールはデュラスに向かってまた駆けて行った。
だがブルールがデュラスの体に触れようとしたその瞬間、デュラスの体は消え去った。
『消えた……!? もしかして転移の魔法でも使ったというのか!?』
突然消え去ったデュラス。
その起きた現象に対してあっけにとられるブルール。
俺も正直驚いた。
かなり強い奴だとは思っていたが、まさか転移の魔法まで使ってくるとは。
今まで出会ってきた人物の中で転移の魔法を使ってきたのはゴブリンのゼルデとダージャ位だ。
まさかそいつらと何か関係が……?
いや、それは考えすぎか。
接点が思いつかないもんな。




