15.旅をすることになりました。
俺は目を覚ました。
うーん、よく寝た。
不安な事が一つ解消するだけでこんなに気持ちが晴れるんだな。
まあ、完全に解決した訳ではないけど。
さて、今日はどうしようか。
そろそろウルフの防具を作ってやろうかな。
ウルフに合う防具か。
一体何だろうな?
ウルフは俺と違って四足歩行の獣型の魔物だ。
グローブとか帽子とかを身につけることはできない。
となると残るは服か装飾品か。
装飾品なんて身につけようとしてもウルフにとっては邪魔になりそうだよな。
素早く走り回るのがウルフの持ち味みたいなものだし。
つまり、服を作るのが良さそうだな。
それも走りを邪魔しない服が。
できるだけ体にフィットするものがいいだろう。
以上のことを踏まえて俺は加工リストからウルフに良さそうなものを探す。
そして目星をつける。
うん。
これなら良さそうだ。
俺は奥の部屋に貯めこんだ鉄鉱石を持ってくる。
ちなみに以前武器防具部屋を埋め立てる際に出てきた鉄鉱石などは奥の部屋に貯めこんでいた。
だから今は鉄鉱石など鉱石のストックはたっぷりある。
しばらくは鉄鉱石を入手するためだけに奥の部屋を掘り進めなくても良さそうだ。
鉄鉱石を原料にいつも通り、金剛砥石を使って【加工】を始める。
ガキンッガキンッ
{ ミスリルアーマーを入手しました。 }
うん、できた。
さて、【観察】っと。
ミスリルアーマー+30
防御力 300+30
ミスリルをふんだんに使った贅沢な鎧。
軽く薄いので、丈夫でありながら動きやすく汎用性が高い。
値段が高いのが難点。
この防具は職人補正により、能力値がより上昇する。
できた。
これでいいだろう。
後はアイツのサイズに合わせれば完成だな。
だが、アイツにはまだ完成しそうなんて言わない方がいい。
もしそんなこと言ったら、俺が道具を作るということの価値が下がってしまう。
そんな短時間で作れるなら他の物も作れとか言われかねない。
そうなるとせっかく貸し借りなしの約束したのに、それも覆されかねない。
そんなのは絶対嫌だ。
だから適当に時間が経ってから渡すことにした方がいいな。
とりあえず、ウルフに会いに行くか。
サイズをはからせてもらおう。
そしてさっさと防具を完成させて、後はゴロゴロ過ごすのだ。
うん、そうしよう。
そう決めた俺は住処の入口の方へと向かった。
入口付近まで来た俺は青いウルフに連絡を試みる。
『青いウルフ、いるか?』
『ああ、いるぞ』
『今から地上に行くが、大丈夫か』
『ああ、問題ない』
大丈夫そうなので、俺は蓋を開けて地上に出た。
地上には青いウルフが一匹いるのみで、周囲に魔物はいなさそうだ。
『そんなに周囲を警戒しなくてもいいぞ』
『そうなのか?』
『ああ。もし襲ってきそうな奴がいたらオレが全員追い払っているから大丈夫だ』
よく見ればウルフの体には所々傷がついている。
どうやら本当に戦ってくれていたらしい。
何かちょっと悪い気がするな。
住処を守ってくれたお礼に俺は青ウルフに上回復薬をふりかけた。
すると、青ウルフの傷は跡形もなく消えた。
『相変わらずお前が作る薬の効果は凄まじいな、おい』
『そりゃどうも』
『ところで、俺に作ってくれる道具は決まったのか?』
俺は青ウルフにミスリルアーマーを作ることを説明した。
上質な素材に加え、軽く、薄い。
動き回る必要のあるウルフにはぴったりなことを伝えた。
『ミスリルアーマーか。いいな、気に入ったぞ。だが、ミスリルはどこから調達してくるんだ? あてはあるのか?』
『あ、うーんと……』
言えない。
もうほとんど完成しているなんて、言えない。
素材の調達?
そんなもの俺には必要ない。
いや、本来は必要なはずだから、俺がおかしいだけなんだけど。
よくよく考えれば、素材がなくても作れるなんておかしいよな。
いや、正確に言えば、鉄鉱石とかは必要だけどさ。
でもどこにでもあるものだし、実質作り放題だもんな。
やはりこの能力、チートすぎるわ。
話を戻そう。
ウルフにはどう説明すればいいんだ?
下手な説明をするとまた不審がられそうだしな。
またそれから本当の事を話すことになれば、俺の【加工】の価値は急減する。
そんなことは避けたい。
だから下手に話せないんだが、どうしたものか。
『分からないのに作ろうとするなんてバカな奴だな。いいぞ、俺が案内してやる。背中に乗れ』
そう言ったウルフは背中に乗るよう促してくる。
だが、この話悪くはないかもしれない。
このウルフの話にのれば、俺がしっかりと素材から作っているように思ってもらえそうだ。
それに鉱山にいくまでにちょっと探検ができそうだしな。
せっかく異世界に来たんだから外の世界も見てみたかったりする。
今までは外が危険すぎたから引きこもっていただけで。
この青ウルフの強さはこの目で見ているし確かだ。
そんな青ウルフが一緒に戦ってくれるのなら心強いことこの上ない。
俺自身も強い装備に包まれているからすぐに死ぬことはないだろう。
それに、住処を去ることの懸念、武器防具に関しても地中に埋め込んだから比較的安全だ。
絶対大丈夫とは言い切れないが、住処の入口に蓋をすれば、まず大丈夫じゃないだろうか?
見つかりにくいし、見つけても時間がかかるしな。
十メートルも穴を掘るなんて普通の奴だったらどれだけ時間がかかるやら。
下手に言い訳をしなくても済むし、ここはウルフの話にのることにするか。
『協力ありがとな。だが、ちょっとだけ待ってくれ。出かける準備がしたい』
『分かった。少し長旅になるかもしれないから、準備はしっかりとな』
え?
さっき何の準備をしていない俺に出かけるよう促さなかったっけ?
長旅になるなら始めからそう言ってくれよ!?
本当、この青ウルフは恐ろしい。
色んな意味で。
俺は住処へと戻った。
まず作ったミスリルアーマーを奥の部屋の奥の方に持っていく。
そしてその近くに一メートルほどの穴を掘り、そこにミスリルアーマーを埋めた。
防具だから武器ほどの脅威ではないが、一応隠しておかないとな。
もし何かの手違いで青ウルフがここに来るとも限らないし。
よし、これで見つかってまずいもので隠してないものはないな。
後は探検の準備といきますか。
回復薬や黄金の葉など回復系の道具。
これはここに残しておいても仕方ないし、全部持っていこう。
そんないっぱいある訳でもないしな。
フワンタクサ草はちょっとだけ持っていこう。
フワンタクサ草は至る所に生えているらしいからな。
基本的には現地調達。
もし生えていないようならそのときは持っている草を使ってサラダに【調合】すればいい。
さて、準備はこんな所か。
じゃあ待っている青ウルフの所に行きますか。




