143.戦闘前の準備をしてみました。
「あのケルベロス、加護がかかってますね」
『加護? 何かの強化魔法みたいなものか?』
「それとはちょっと違うんですけどね。カンガ様、この世界に伝わるケルベロスに言い伝え、聞いた事あります?」
『言い伝え? 知らないな。内容を教えてもらってもいいか?』
「はい、分かりました。それではお話し致しますよ――」
ターニャはそれからケルベロスに関する言い伝えの内容を俺達に話してくれた。
その内容について要約すると、ケルベロスは複数の眷属と共に地獄の門を守っているとの事。
そして眷属の存在がケルベロスを一層強くしているんだとか。
『つまり、あのケルベロスには眷属がいるという事か?』
「はい。そしてその眷属を倒せばきっとケルベロス自体は弱体化されるはずです」
『なるほどな。でもケルベロスの眷属ってどのような奴なのか想像がつかないんだよな。一体どんな奴なのか』
「そうですね……例えばあそこにいるような生物がそうなのではないでしょうか」
ターニャが指を指した先には、先程見たケルベロスよりも小型のケルベロスが。
……えっ?
ケルベロスって複数体いるのかよ?
『ケルベロスって一体だけじゃなかったのか?』
「そうです。複数体いるみたいですね。とりあえず眷属を倒しきってから、あのケルベロスに挑んだ方が良いと思います」
『なるほどな……。でもそれだと時間かかるんじゃないか? 村の人達は大丈夫なんだろうか?』
「それは大丈夫そうですよ。気配からすると、村の人達はみんな地下のシェルターに隠れているようです。そこの周辺にはケルベロスの気配は感じないですし、時間の猶予はあるでしょう」
そ、そうなのか……。
全然俺にはそんな事は分からないんだが。
やはりターニャ位のレベルになると、遠くにいるそういう人の気配すら感じ取れてしまうんだな。
ともかく、村の人達が無事なら、これで心置きなくやれるな。
まずはあそこに見える眷属のケルベロスを倒す事にしよう。
ちなみに眷属のケルベロスのステータスは以下の通りだ。
ケルベロス LV81
HP11091/11091
MP 1023/ 1023
攻撃力 1000
防御力 2717
魔法攻撃力 1000
魔法防御力 1000
素早さ 1000
スキル 不明
大きさは小さいのに、ステータスは相変わらず高けぇな、おい。
ただ全ステータス+2500なんて事はないし、HPとMPと防御力以外は1000と少し弱めだったりするみたいだ。
これ位の強さなら何とかなるかもしれない。
それでも十分強敵だし、油断は禁物なのだが。
ただ、防御力2717か……
そうなると、俺以外の仲間が攻撃しても効かないだろうな。
それに魔法防御力1000となると、仲間の中で一番魔法攻撃力の高いケロマでさえ、800ほどと数値が足りていない。
となると、俺の物理攻撃でしかまともにダメージを与えられないと考えた方が良いか。
そしてそんな奴が複数体もいるのか。
眷属のケルベロスが何体いるのか分からない以上、結構キツイな。
眷属があの一体しかいない訳がないだろうし。
連戦が続くとなると、このままでは厳し過ぎるだろう。
これはちょっと準備した方が良さそうだな。
『なあ、みんな。ちょっと時間をくれないか?』
「ん? どうしたの、カンガ?」
『あのケルベロスはとても強い。このまま戦いに挑んでも、勝つのは相当厳しいだろう』
「……何かカンガには考えがあるのね?」
『ああ、そういう事だ。ただその為にはちょっと準備が必要なんだ。だからちょっと時間が欲しいと思って』
「分かったわ。あと良ければ何をするつもりなのか私達に教えてくれない?もしかしたら何か手伝えるかもしれないから」
そうだな……。
今はケロマ達、仲間達とターニャしかいないから別に見せてもあまり問題ないかな。
仲間達はもちろん、ターニャも俺の特異性には気付いているから、今更隠す事もないだろう。
『俺がやろうとしているのはみんなの装備の作成だ。正直今のみんなの装備じゃ少し心許ない。だから俺が強力な装備を作って、みんなに身につけてもらおうと思うんだ』
「……なるほどね。でも装備を作るとなると、何か材料が必要よね? 何があればいいのかしら?」
『そうだな……鉄鉱石が欲しいな。それもある程度の量の。この辺りにないか?』
「鉄鉱石? それならあっちの方向に行けばとれると思うけど……それでどうするの?」
『まあ、それは見てのお楽しみって事で。とりあえず、その鉄鉱石がある場所まで行ってもいいか?』
「ええ、分かったわ。行きましょう」
俺がしようとしているのは鉄鉱石から様々な防具を作る事。
一応手持ちにも若干の鉱石はあるのだが、みんな分の装備を作る事を考えると、それでは足りないのだ。
万が一の事も考えて、手持ち分はとっておきたいし、やはりどこかで鉄鉱石は調達しておいた方が良さそうである。
ちなみにケロマが鉄鉱石のある場所をしているようなので、俺はケロマについていく事にした。
幸い、先程のケルベロスがいる方向とは違う方向にケロマは向かっていったので、とりあえずはケルベロスと戦わずに済みそうで良かった。
準備が整うまでは極力ケルベロスとは戦わない方が良さそうだからさ。
その代わり、準備が整ったら、一気に攻めていくけどな!




