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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅳ ただ一つのダンジョンを目指して
118/222

118.厄災龍の封印主に出会いました。

 匂いのする方へ進んでいくと、洞窟の中へと入っていくことになった。

 そして俺達は洞窟の奥へとどんどん進んでいく。



『この洞窟の奥に何かがあるんだろうか?』

『分からない。匂い以外の手がかりがないから俺にもさっぱりなんだ。すまない』

『いや、カンガ殿が謝ることではないだろう。だが、ちょっと不思議なのは、ブルール殿にはカンガ殿に感じる匂いをかぎ取れないんだったな?』

『ああ、そうだ。嗅覚には結構自信があるんだがな……』

「もしかすると第六感ってやつかもね。何かしらカンガにゆかりのある人が関係している所なのかも」



 俺にゆかりのある人か。

 といっても、この世界で縁のある人ってブルール、グリザー、ケロマ以外だと限られているよな。

 川の巫女とかそのお付きの人位か。

 まさか俺を追いかけて襲おうとした奴な訳ないだろうし。

 ゼルデやダージャは違うことが分かってるしな。


 まあ答えはこの先に行けば分かるか。

 とにかく進むことにしよう。



 それからも洞窟の奥へと進んでいくのだが、ある時いきなり行き止まりにぶち当たってしまう。

 この先から匂いがするんだが変だな?



『この先から匂いがするんだが……』

『そうなのか? どう見ても行き止まりなんだが』

『何か仕掛けがあるんだろうか? なければ回り道があるのかもしれない』

「ちょっと待って。ここからわずかに魔力を感じる。これは―――封印がかけられているわね。少し時間をちょうだい。何とかできるかもしれないから!」



 そう言ったケロマはバックから機械を取り出し、機械にカチカチ何か打ち込みを始めた。

 しばらく待っていると、ケロマは機械の打ち込みを止める。



「これで準備完了っと。みんな、下がってて」



 俺達が下がると、ケロマは壁に手をかざす。

 そして……



「いくわよ。研究、シールブレイク!」



 すると目の前の行き止まりの壁がスッと消えてなくなり、道ができた!?



『すごいな、ケロマ。道ができたぞ!?』

「ちょっと封印を解いてみたの。この壁には封印がかけられていたみたいね。となると、ますますこの先に何かがありそうな気がしてきたわ……」



 そうだな。

 わざわざ封印をかけてまで通れなくしているんだもんな。

 何かしらあるに違いなさそうだ。


 この先に待ち受ける何者かに期待半分不安半分で俺は仲間と共にさらに先へと進んでいった。



~~~



 長い一直線の通路を通り抜けると、一つの鉄の扉の前にたどり着いた。

 これは森の中にあった扉にとてもよく似ているな。

 ちなみに開けようとしても開かなかったので、何かしらのカギがかけられているようだ。



『カンガ、これってもしかして?』

『ああ。ちょっと同じ方法でやってみる』



 森の中と同じように合言葉を言うタイプかもしれないからな。

 同じようにやって開くなら儲けものだし、とりあえずやってみることにした。


 俺は森の時と同じように扉に近付き、そして念じた。



 (我らの希望、ここにあり)



 すると扉の錠がガチャッと外れる音がした。

 どうやら合言葉も全く同じようだったな。

 となると、同じ人が扉を作ったんだろうか?


 とりあえず先へ進むか。



 俺は扉を開けてみた。

 すると扉の先には十畳ほどの空間が広がっていて、中には木製のベッドや机などが置かれていた。


 いかにも誰かが生活してますっていう空間だが、この中には誰もいなさそうだな。



『カンガ、この先にも通路があるようだぞ』



 ブルールが足でトントン叩いている所には地面に蓋のような物がついていた。

 そしてそこから空気の流れみたいなものを感じる。


 俺がその蓋をとると、蓋の下は地下へ続く階段になっていた!



『この先に何かあるかもしれない。ちょっと行ってみよう』



 何重にも仕掛けがあってなかなか奥地までたどり着かないな。

 それだけ何かがあるっていうことだろうが。

 俺達は階段を下っていく。



 階段を下り終えると、また扉があった。

 今度の扉は木製で、それを開けようとするとあっさりと開く。

 封印がかかっていないようで何よりだな。


 そして扉の先を見てみると……



「ちょっとガルサール、まだなの? もう私限界なんだけど!」

「もう少し待っててくれ。あと一分だ。一分持たせてくれればすぐにいくから……」

「その言葉何度目よ? この前もその言葉聞いたばかりなんだけど!? しかもその時は結局三分も待たされたわ!?」

「いや、今度こそ一分で行くから……って、ん? こんな所に誰かが来たようだ」



 俺達に気付いたその声の主が俺の方に近付いてくる。

 中は真っ暗で声の主がどういう生物なのか分からなかったが、俺達の方に近付くにつれ、ケロマの灯りによって姿があらわになる。



「えっ、そんな、嘘だろ……!? まさか、お前は、お前はカンガなのか!?」

「えっ、カンガですって!? ちょっと、早く代わりなさいよ! 私、カンガと話がしたいわ!」



 声の主は俺と同じような見た目をしていた。

 つまりゴブリンだった。


 出会うのは当然初対面。

 なのに何で俺の名前を知っているんだ!?



『どうしてあなたは俺の名前を……?』

「ああ、そうだよな。それも含めてゆっくり中で話そう。とりあえずは中へ入ってくれ。おっと、お仲間さんもいらっしゃったのか。なら念話の方が都合が良さそうだな」



 そのゴブリンはゴホンと咳払いをする。



『カンガのお仲間さんもどうぞ中へお入り下さい。私はカンガの父、ガルサールと申します。せっかくですから中でゆっくりお話ししましょう』



 えっ、父親だって!?

 俺の親って確かウルフに食われたんじゃなかったのか!?



『俺の親はウルフに食われたはずじゃ……?』

『ああ、それは多分私かへクシアの分身だろう。分身の素材は本物のゴブリンと見分けがつかないものだから、そう勘違いするのも無理はない』

『分身って……どうして分身なんかが一緒にいたんだ?』

『そこは色々事情があってな……長くなるから中で話そう』



 俺達は俺の父らしいガルサールに導かれて脇にあった小さな椅子に腰かけた。



「ちょっと、早く代わってよ、ガルサール!? 封印解けちゃうわよ!?」

『ああ、今すぐ行く! という訳だカンガ。続きはへクシアから聞いてくれ。私はしばらく封印にかかりきりになってしまうからな』

『封印って、まさか厄災龍の封印の事か?』

『そうだ。だから手を抜くわけにはいかないという訳だな。じゃあまた封印交代後に』



 ガルサールは部屋の中央に行き、もう一人のへクシアだと思われるゴブリンと交代した。

 そしてへクシアがこちらの方へやってきた。



『ぜえ、はあ。ほんとに、本当にカンガがいる! もう二度と会えないと思っていたから嬉しいわ!』



 ふふっと笑うへクシア。

 とても嬉しそうな表情をしている。



「あなたがカンガのお母様ですか?」

『そうですよ。私がカンガの母、へクシアです。あら? お仲間さんに人間のお方もいらっしゃるのね。それにウルフさんにリザードマンさんも。カンガと一緒に旅してくれてありがとう。何もお礼はできないけど、どうかゆっくりしていってください』



 先程のガルサールもへクシアもとてもやつれた顔をしているな。

 そういえばボルタ王の話によれば封印は一年前から続いているとのこと。

 まさか一年間まともな食事をしていない……!?



『えっと、へクシア、さん。もしかして厄災龍を封印している間、ずっと飲み食いしていないのか?』

『ええ、そうよ。もうここ一年間は何も食べてないわね。ここは魔力成分が濃いから、魔力をエネルギーに変換できるとはいえ、さすがに辛いわよね』



 どうやら本当に一年間飲み食い自体していないらしい。

 それでよく体が持つもんだな……

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