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ゴブリン、頑張って生きる。  作者: はちみやなつき
Ⅰ この世界で生き残るために
1/222

1.ゴブリンに転生しました。

 グルルルル……



 辺り一面に響き渡るオオカミのうなり声。

 そして茂みに隠れて縮こまっている俺。


 あれっ、何で俺こんなことになっているんだ?

 オオカミなんて生まれて初めて見たぞ?

 ここ絶対に日本じゃないだろ。


 少し前のことを思い出してみるか。

 確かさっきまで仕事の帰りでプラプラと歩いていたはず……

 そして不意に鳴るトラックのクラクションの音。

 あ、俺、トラックにひかれて死んだんだな、きっと。

 よくあるトラックにひかれて死んだら転生しましたってやつだ。


 転生したのはまあいいとする。

 だが、転生先がゴブリンの赤ん坊っていうのはどうなんだ?

 しかもここに来る途中で親らしきゴブリンの死骸を見かけたぞ!?

 その上、オオカミにその死骸食われたし。


 俺は死に物狂いで逃げて何とか茂みに隠れているけど。

 でも気づかれるのも時間の問題だよな。

 転生したけど生まれてすぐ死にましたなんて縁起でもない。


 だがどうする?

 向こうは大人のオオカミである上に数匹はいる。

 対してこちらは赤ん坊のゴブリンの俺一匹。

 どう考えても勝ち目なんてないじゃないですかー。

 何この無理ゲー。

 いや、ゲームじゃないしシャレにならないんですけど。


 そうだ!

 よく転生すると転生者特典とかいってチートな能力が手に入ると聞いたことがある。

 それにかけるしかない!


 例えばステータスを見ることができたりとか―――



 ベビーゴブリン LV1

 HP 10/10

 MP  5/ 5

 攻撃力    1

 防御力    1

 魔法攻撃力  1

 魔法防御力  1

 素早さ    1

 スキル

 観察、考察、隠密



 お、できたぞ!

 ってスキルこれだけ?

 攻撃に使えそうなものが全くないんだが。


 それになに、ステータスオール1って?

 これきっとステータスがバグっているだけだから……

 本当はカンストしていてすごく強い―――訳ないわな。

 見るからに俺、弱いし。

 妥当だろうな。


 ちなみにオオカミのステータスはどうだ?



 ウルフ LV8

 HP 72

 MP 11

 ステータス 不明

 スキル   不明



 あっ……

 これダメなパターンだわ。

 それになに、スキル不明って?

 なんだかめっちゃ強そうなスキルを持っていそうで怖いんですけど。


 はぁ……

 どうやら戦おうとするのが間違いみたいだ。

 幸いにも、俺には隠密というスキルがあるらしい。

 ならばじっとしていればやり過ごせるかもしれない。

 というか、それにかけるしかない。


 見つかれば即死亡。

 運よく見つからなければまだ生き残れる。

 俺は息を殺して運命にかけた。





 しばらくじっとしていると、オオカミが遠ざかる足音が聞こえた。

 幸いにも、俺の運命は後者だったようだ。

 だが、本当にオオカミが遠くに行ったかは分からない。

 遠ざかったフリをして待ち伏せしているかもしれないからな。

 だから念の為、数時間待ってから茂みの外へ出た。


 念には念を入れたおかげで、オオカミは近くにいる様子はなかった。

 これで一息つけそうか。

 だがほっとする間もなく、今度は強烈な空腹感に襲われることになった。

 

 そういえばこの姿になってから何も食べてないな。

 ゴブリンの親も、多分俺を産んで間もなく死んじまったようだし。

 ということは、俺、ミルクすら飲んでいないんじゃないか?

 自分で言うのもなんだが、よくそれで耐えられたな……

 いや、自分で自分をほめている場合じゃない。

 早く食料を探さねば。



 そういえばゴブリンの赤ん坊って何食べるんだろうな?

 まさか人間の赤ん坊と同じくミルクしか飲めないなんてことないよな?

 そしたら俺、完全に詰むぞ。

 どこにあるかも分からないゴブリンの村に行き、そこで赤の他人のゴブリンからミルクをもらう。

 そんなことできる訳ないじゃないか。


 ここは最初から普通の食事をとれること前提で動くしかない。

 とはいえ、ステータスオール1の俺が勝てる動物なんている訳がねぇ。

 いや、動物というより、ゴブリンがいるような世界だから魔物と言った方がいいのか?

 とにかく、肉を食べることは当分できそうにないな。


 ではどうするか?

 そんなの決まっている。

 肉が食えないのなら、他の物を食べればいい。

 例えばこの辺に生えている植物とかな。


 俺は近くにある植物を引っこ抜き、口の中に放り込む。



 もぐもぐ……



 ウエッ、まずっ!?

 何だこの苦味!?



{ 【毒耐性lv1】を獲得しました。 }



 なんか天の声みたいな声が頭の中に響いてきた。

 ていうかこれ、毒あったのかよ!?

 そこらへんにたくさん生えていていかにも無毒そうな草を選んだつもりだったんだが。


 あっ、そういえばこの草の情報も見ることができるんじゃね?

 早速見てみるか。



 フワンタクサ草

 フワン大陸にありふれた植物。

 生命力が高いうえ、毒を持つため食用とする者が少ない。

 それ故に天敵が少なく、そこら中に生えている。

 調合の材料としてよく使用される。



 げ、やっぱり毒あんのかよ!?

 俺、こんなもの食って大丈夫なんだろうな!?



 ベビーゴブリン LV1

 HP  3/10

 MP  5/ 5

 状態    弱毒

 攻撃力    1

 防御力    1

 魔法攻撃力  1

 魔法防御力  1

 素早さ    1

 スキル

 観察、考察、隠密、毒耐性



 結構まずいじゃねーか!?

 もう半分もHP残ってねーぞ!?

 早くなんとかしないとダメだろ。

 近くに解毒できそうな草は……



 フワンジョウ草

 フワン大陸に生息する植物。

 結構丈夫な為、一部地域では建築に使用されることさえある。



 これじゃない。



 フワンポイズ草

 フワン大陸に生息する植物。

 毒性が強く、捕食されることはあまりないが、限られた場所にしか生えない為、貴重。

 強い毒性を持つため、調合に用いられることが多い。

 弾力性があり緩衝材としても使われることがある。



 いや、もっと毒をあびてどうする。



 フワンミズミズシ草

 フワン大陸に生息する植物。

 この植物の中には多量の水分が含まれている。

 そのため一部の冒険者には水筒代わりに用いることがあるという。



 この草があれば水を飲めるのか。

 かなり生きる上では重要そうだな。

 でも、毒で死んでしまったら元も子もない。

 これは今はいらないな。



 フワンイヤス草

 フワン大陸に生息する植物。

 この植物には治癒の効果があるので、回復薬の原料として用いられる。



 この周囲の草はこれで全部だな。

 解毒する草は結局なさそうか……

 いや、待てよ?

 フワンイヤス草を食えば、とりあえずは延命できるんじゃないか?

 それに毒耐性があるから、時間さえかければいつか毒が治るかもしれないし。

 よし、そうと決まったら即行動だ。


 俺は近くにあるありったけのフワンイヤス草を取ってきては口の中に放り込んだ。



 もぐもぐ……



 うん、悪くない。


 ただの草だから決してうまくはないが、さっきの草よりは全然マシだ。

 それに回復効果があるからか、食べる度に辛さが緩和されていく。

 これならなんとかなりそうだな。



 結局、フワンイヤス草を食べているうちに毒は消え去った。 

 だが腹を満たすために、体力が全回復してからも俺はフワンイヤス草を食べ続けた。

 そしてのどが渇いたらフワンミズミズシ草から水をしぼって飲んだ。

 すると徐々に腹が満たされていき、ついに満腹となった。


 いやぁ、満腹っていいものだな。

 さっきの空腹の辛さを感じたからか、満腹なだけで幸せに感じる。

 元の世界じゃこんなの当たり前だったんだけどな。

 それがこのサバイバル生活ではとても貴重なことになる。

 実に恐ろしい。


 ちなみに毒を克服したおかげで毒耐性はlv2まで上がった。

 これで今度毒をくらっても少しはマシになるか?

 まあ、気休めにしかならないが。


 さて腹もふくれたことだし、これからどうしようかな?


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