「ヒューマンストーリー」 三話:蔓延
時計「ジリリリリリリリ」
いつもの目覚ましの音で目が覚めた。
携帯「ピリリリリリリリ」
「ん?武?どうしたんだこんな朝から。」
携帯「おい・・・悠馬・・・TVつけてみろよ・・・」
武は血の気の引いた声でそう言った。
「そういえばさっきから、外から悲鳴とかパトカーのサイレンが聞こえるけど。」
携帯「い、いいからつけろって。」
「う、うん。」
TV「現在、都内を中心に大規模な暴動が発生しております。住民の皆様はドアや窓に鍵を掛け絶対に外へは出ないでください。避難指示が発令された場合は、各自治体の指示に従って避難をしてください。繰り返します現在都内を中心に・・・」
「ど、どうゆうこと?」
携帯「俺にもわからん。とりあえず家からは出ないほうがよさそうだな・・・い、一部の専門家の話では南アフリカで蔓延してる感染症が原因らしい。昨日の殺人事件もそうだって、言われてる。」
「そ、そうなの?と、とりあえず父さんからも電話が掛かってきたから一回切るね。」
携帯「わ、分かった。とりあえず気をつけろよ。」
「分かった、いろいろありがとう、また掛けなおすね。」
携帯「お、おう」
「もしもし、父さん?いったいどうなってるの?」
電話「俺にも分からん。今のところライフラインはまだ生きてるらしい。剛とは連絡がついているか?」
「いや、まだ分からない。」
電話「もし、あいつが生きてるようならあいつを頼れ!大丈夫、あいつはタフだ、そう簡単に死ぬようなやつじゃない。」
区役所スピーカー「住民の皆様。現在王子区では大規模な暴動が発生しており、避難指示が発令されています。住民の皆様は区の職員の指示に従って、以下の指定避難所へ避難してください・・・」
「あ、避難指示が出たそろそろ切るね。」
電話「分かった、くれぐれも気をつけろよ!」
「う、うん」
ガチャ、悠馬は恐る恐るドアを開けた外にはまだ町の人が誘導に従って避難所へ足早にかけていた・・・
「ぼ、僕も行かなきゃ」
悠馬はすぐさま支度を整え、避難所へと急いだ。
そのときだったガシっと力強く誰かに腕をつかまれた。振り返ると剛さんだった。
剛「こっちへ、来い!」
剛さんはものすごい表情で僕を見つめた。剛さんのただならぬ表情に僕は、いやな予感を覚えた。
剛さんは僕を引っ張り警察署のパトカーに乗せた。
剛「これはただの暴動なんかじゃない!避難所へ行ったら死ぬぞ!俺はすべてを見てきた!俺の昨日噛まれた先輩警察官も正気を失ったように次々と人を病院で噛んでた。俺は間一髪逃れた。あの症状は南アフリカで蔓延してるのと同じ症状だ。かまれたやつは正気を失う。とにかく王子を出るぞ!検問の警官が俺の同期なんだあいつならきっと、協力してくれる。」
剛さんは車を走らせながら、僕にそう言った。
「町を出てどこへ行くんですか?」
剛「とりあえず、久さんのところへ行こうあそこならまだ大丈夫だろう。」
僕は街を出ることを練馬区の武に知らせようと、電話をかけた。
「あ、もしもし武?時間がないから手短に話すよ?一刻も早く東京を出るんだ!その後、山梨県の甲府駅前で合流しよう?」
武「あぁ、俺もそうしようと思ってたところだ、悠馬のほうは今のところ状況はどうだ?」
「運よく、知り合いのお巡りさんと会えたよ。今車に乗してもらってる。」
武「そうか、よかったなじゃあ、そういうことでまた山梨で。」
「あ、後噛まれないようにね?」
武「え、どうした急に?」
「いいからとにかく急いで!」
武「あ、あぁ」