「ヒューマンストーリー」 十七話:救出
-----海上自衛隊・護衛艦「いずも」-----
防衛大臣「中即連の生き残りが居るというのは本当か!?」
防衛事務次官「はい、確証はありませんが、映像に写ってる装備品や車両から見て間違いないでしょう。その他にも長野県や新潟県の現地対策本部からも中即連の帰還が報告されています。」
防衛大臣「なるほど。確認された地点は?」
防衛事務次官「静岡県の静岡市です。中即連の他にも数多くの自衛官、民間人の姿が確認されています。」
防衛大臣「なるほど。」
防衛事務次官「どうしますか?」
防衛大臣「国家公安委員長と国土交通大臣を呼んでくれ!」
-----海上自衛隊・護衛艦・いずも・多目的区画-----
国土交通大臣「どうしたんですか?この忙しい時に・・・」
国家公安委員長「・・・・・・」
防衛大臣「静岡県の静岡市で都内に派遣された陸上自衛隊の生存者が確認されました。」
国土交通大臣「・・・・・・!?」
国家公安委員長「まだ生存者が居たんですか!?」
防衛大臣「はい。」
国家公安委員長「それで、やっぱり救出ですか・・・」
防衛大臣「はい。彼らは先遣隊として都内に派遣された唯一の部隊です。恐らく感染者の状態のことも誰よりも把握しています。」
国土交通大臣「しかし、他の情報によるともう既に他の部隊は避難が完了しているそうじゃないか?」
防衛大臣「しかし、人道的な考えをもって彼らをあそこに置き去りにするわけにはいきません!」
国土交通大臣「よく考えろ!君も知ってるだろ!あそこに居た人たちがどうなったかを!」
警察庁長官「私も・・・これ以上現場の警察官たちを危険にさらすわけにはいかない・・・」
防衛大臣「よく考えてください。避難場所には・・・まだ多くの自衛官、消防官、警察官や海上保安官がそれぞれの職務のために必死に動いてくれています。更に感染者の迎撃体制もまだ完璧とは言えません。感染者の撃退方法がまだ定かではない今、このまま感染者と衝突すると東京の二の舞になる可能性が高いんです。」
国家公安委員長「・・・・・・」
国土交通大臣「仮に救出を行うとして・・・我々にどうしろと。」
防衛大臣「直接的な救出は我々自衛隊が行います。お二方・・・主に国交省にはその支援を担当していただきたい。」
国土交通大臣「どういうことだ!?」
防衛大臣「統幕長・・・説明を!」
統合幕僚長「作戦の内容を説明します。まず最初に陸自の部隊が上空から降下し中即連及び他の自衛官や民間人を救出し、その後駿河湾で待機させている船艇に回収及び護衛を担当していただきたい・・・」
国土交通大臣「・・・・・・!?」
警察庁長官「自衛隊の船艇は使えないんですか?」
統合幕僚長「現在の状況を見ると、治安出動は事実上陸自の中央即応集団及び東部方面隊にのみ発令されたものでその他方面隊及び海自・空自については治安出動待機命令が発令されている状態です。各指揮官が独断で指示を出している所もありますが現在の状況では海自の護衛艦を正式に出動させるには非常に難しい状態です。」
国家公安委員長「なるほど・・・」
国土交通大臣「要は・・・我々の海上保安庁に出動をしろと・・・」
統合幕僚長「その通りです。」
国家公安委員長「袴田君・・・」
警察庁長官「分かりました。水上警察の出動を命じ護衛には警視庁の特殊部隊を・・・」
防衛大臣「ありがとうございます。国交省はどうでしょうか・・・」
国土交通大臣「・・・・・・」
防衛大臣「ことは急を争うんです!堺さん!・・・お願いします。」
国土交通大臣「海上保安庁長官に繋いでくれ。しかし、これだけは言っておきます。もし万が一作戦に支障が起きても、責任は防衛大臣!あなたにとってもらいます。よろしいですね?」
防衛大臣「承知の上です!お二方ともご協力に感謝します!作戦の決行は明朝午前4時です。それまでに隊員の招集をお願いします!」
両者の承諾を得ると、武井は深々と頭を下げた。
-----愛知県・小牧市・小牧基地-----
辻岡「出動命令が降りたらしいな。」
「あぁ。」
同僚の辻岡に俺は気のない返事で返した。
辻岡「どうした?冴えない返事して。」
「いや、なんでも。お前は怖くないのか?」
辻岡「そういうことか。まぁ確かに怖くないと言ったら嘘になるな。」
「何で、お前はそんなに平然としてられるんだ?」
辻岡「あのな早月。今回の任務は中即連の連中の回収だ。俺たちにとっては楽勝だ。もう少し楽観的にいこうや。」
「でも、今回は相手が・・・」
辻岡「今回は・・・自衛隊前代未聞の発砲許可が降りてる。しかも自国民に対する危害射撃だ。俺たちにとっては楽勝だろ?」
「お前・・・」
辻岡「さっき団長が言ってただろ?ヤバイと思ったら撃てって。」
「・・・・・・」
辻岡「しっかしろ!俺たちは陸自の精鋭だぞ?そう簡単にやられたりなんかしない!それに俺は生きて帰るためなら躊躇なんてしない・・・。お前もそのつもりで行け。」
「あぁ。」
俺は今何かを悟った気がする。平然とした表情で仲間と接している辻岡がもしからしたら一番不安を感じているのではないかと・・・。




