「ヒューマンストーリー」 十ニ話:無力な者達
中田「こ、これからどうするんですか?」
水野「そうですね・・・あの上条さん、警察の方ですよね?」
上条「はい。」
水野「無線機とかって持ってたりします?」
上条「あ、はい!あります。」
水野「ちょっと交信できるかやってもらえますか?」
上条「分かりました。」
上条「沼津3 上条からPS」
無線機「ザーッ ザーッ」
上条「沼津3 上条からPS」
無線機「ザーッ ザーッ」
無線機は呼びかけには応じなかった。
上条「まさか、警察署も・・・」
「この状況じゃもうダメかもな・・・」
水谷「じゃあ、どうするのよ!」
水野「怪我人の傷も酷いですし、早く病院に運ばないと!」
「待ってくれ、今考えてる!」
そんなやり取りをしていると怪我人が目を開いた。
水野「沼津消防です。分かりますか?」
怪我人「ピクッ」
どうも何か様子がおかしい。
怪我人「ウゥ、ワァー」
その時だ怪我人が突然口を大きく開け襲いかかって来た。
水谷「ちょ、ちょっと離して!」
「この野郎!」
俺は夢中で怪我人に掴みかかり壁に押さえつけた。
怪我人「ガルルルルルルッ、ウゥ!」
「くそ、こいつ、力が強い!」
中田「あ、あぁ・・・」
「やばい、このままじゃ!水野手伝え!」
水野「は、はい!」
俺と水野の二人掛かりで壁になんとか押さえつけた。
「だ、誰か!そこに置いてある消火器を取ってくれ!誰でも良い!早く!」
中田「ど、どうぞ!」
「水野押さえてろ!」
水野「はい!」
消火器「ガスッ」
鈍い音と共に俺の放った消火器が怪我人の頭を叩き割った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ちくしょう・・・殺っちまった・・・」
水野「浅井さん。しっかりして下さい。あぁするしかなかったんですよ!」
「そ、そうだな。くそっ!畜生!」
水野「浅井さん!みんなあなたが必要なんですよ!しっかりして下さい。」
「あぁ、すまない。しかし・・・いや、なんでもない・・・」
中田「こ、こんな時にすみません。」
「あぁ、どうした?」
中田「あの、TV観てもらえますか?」
TV「(こちら名古屋市では自衛隊・警察によって住民の避難措置が開始されています。街中には自衛隊や警察などの車が数多く止まっており順調に暴動に対する迎撃体制が整えられています。しかし、一部の法律家や人権団体の間では非難の声が上がっており、また暴動に対する治安出動で自衛隊の戦闘車両が使用されることに対し数多くの疑問の声が上がっています。また新たな情報が入り次第お伝えします。)」
中田「なんとか名古屋市まで行けば、保護が受けられるみたいです。」
「しかし、そこまでどうやって行くのかが問題だ・・・」
中田「はい。」
「少し考えさせてくれ。」
中田「分かりました。」
「大丈夫か?」
橋川「お父さんが・・・」
「確かに、目の前で父親が殺されたんだ、気持ちは分かる。だけど、落ち込んでる時間はないんだ。この先どうするかは君が決めるんだ。」
橋川「私は・・・お兄ちゃんとお母さんに会いたい!」
彼女は少し考え込んだ後力強い声でそう言った。」
「そうか。安心しろ。君のお母さんの所まで俺が責任を持って連れてってやる!」
橋川「本当!?」
「あぁ、だがこれから苦労することはたくさんあるかもしれない。それでもしっかり着いて来れるか?」
橋川「はい!」
「そうか。よく言った。」
橋川「どうしておじさんはそこまでしてくれるの?」
「俺は・・・俺にも2年前に君と同じくらいの娘が居た。」
橋川「その人は?今どうしてるの?」
「事故で死んだんだ。君の親に俺と同じ目にあって欲しくないんだ。」
橋川「ありがとうございます。」
俺のその言葉を聞いた彼女は深い面持ちで、ぼつりとそう呟いた。




