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嗚呼、懐かしきかな恋心

作者: 伯兎

なんだかんだと短編物と繋がっております

今回は尾裂狐のお偉い様のお話

我々、狐の長

「稲荷様」こと、慈瑪(イツメ)様は

何ともまあ、掴みどころのない性格で

しかしながら流石神と崇められるのも頷けるそんな雰囲気を持っていた。


慈瑪様の棲まう(やしろ)には、日々悩みや煩悩を抱えた人間が足を運んでは賽銭を投げ、手を合わせながら願う


それをのんびりと社の奥で眺めながら

九尾の鈴音(りん)が持ってきた土産を食べ、いつものようにお茶を飲んでいた。



「あいも変わらず神頼みが多いねぇ」


ため息混じりに呟いた言葉を私は聞き逃さなかった


慈瑪(イツメ)様、お疲れですか?」


子狐たちの掃除を見張っていた管狐の七瀬は労るように尋ねるのだった


「いやいや、私は人の子の悩みを聞いているだけ。あれは風が扉を叩くのと同じさま。気にかけることもない、、、」


人と妖は容易には干渉してはならない


これは常世(とこよ)のルールであった

どんな願いも一つに手を出せば全てを受け容れるのと同じ事。

神と崇められるのはそう言う事なのだ


それを(うれ)いているのか綺麗な姿勢で座布団の上で正座をしながら、賽銭箱や人の子の鳴らす鈴の音を聞いている、その背中がなんだか寂しかった



「そういえば、何時ぞやの鈴音(りん)の手土産をどこに置いたか、、、」


「ああ、鈴音(りん)様の

確か漫画とやらでしたか」


「そうそう、あの小さな変わった絵巻

鈴音が楽しそうに勧めてきたので眺めてみようかと思うてな」


そう言っているうちに七瀬は、鈴音が持ってきた漫画を差し出した


「どうぞ

って、コラそこ!尻尾を追いかけない!」


じゃれ合う子狐たちを叱りつけると七瀬は持ち場に戻った



「さて、鈴音が誰ぞやがかっこいいだの

ここが痺れるだのと騒ぎ楽しんでいたが、、、」


パラパラとページをめくりながら慈瑪(イツメ)

絵と字の羅列を眺めた


どうやら恋物語らしい


「、、、」


物語の中では両想いの男女がすれ違いながら

最終的には想いが通じるという、なんとも都合の良い話であった


けしてつまらないとは思わぬが、そんな簡単にいく様なら、わざわざ我々に“神頼み”などせぬだろうて


参拝客の中の若い女子(おなご)を見ては、渋々と漫画に視線を戻した


きっと恋多き少女達はこういった書を読んでは夢に目を輝かせるのだろう


「はぁ、、、」


問題はそこではない、これに共感している鈴音の方が問題だ



「人の世に溺れ過ぎておるぞ、鈴音よ、、、」


めいいっぱいの憐れみを込めて小さく呟いた


「七瀬、鈴音は何処に居る」


「はぁ、、、また遊びに行っておりますよ」


ため息混じりに悪い癖を告げた


「またか、呼び戻してこい

そろそろきゅうを据えなければ、、、」


「分かりました」


あちらもこちらも交わらぬこの世で

あまり違う世に惹かれるな


これは私なりの教えである

同じ過ちを犯してはならぬから




透き通る青い空に懐かしい風がふく

その風がのせてきたのは、暖かい掠れた声と離れてゆく体温


人の世に憧れ、人の子に想いを寄せた

まだ若かった自分


けして叶わぬ、そんな想いを

風にのせて流して消してしまいたかった日々


今でも鮮明に覚えている最後の言葉


幾年と重ねる度、人との時間の差に虚しさを

変わる時代に無くなる景色を


廻る四季にのせた想いも


全てを託した

墓石の前の百合の花



途中から何を書こうかと悩みこの結果に、、、

良いのか 悪いのか

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