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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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動き出す運命2


同室のみんなが寝静まるのを待ってリオンと二人でこっそり部屋を出て裏庭へと移動する。そこにある大きな木の枝の上がリオンと私二人のお気に入りの場所。今夜は月が明るく星が少ないがなんだか心が癒やされるようだ。


「それでいったい何が起こってるのか詳しく話してよ」


「これからする話は信じられないだろうけれどとにかく黙って最後まで話を聞いて」


「分かった。約束する」


私はリオンにあの古文書に触れたことで前世の記憶が蘇ったことを話し、この世界が乙女ゲームの世界であると説明し、その大まかなストーリーとしてこれから王国の使者が来て孤児院を出て庇護されることを話した。


「前世の記憶が蘇ったというのは別にして、僕にはそのゲームの世界というのがよく理解できないよ。この世界が作り物だなんてごめんやっぱり信じられない」


「そりゃそうだよね」


そもそもゲーム自体を知らず理解できないのだから当然だよね。自分で説明していても理解して貰えると思えない。


「でも僕は姉さんが嘘を吐いているなんて思わないよ。だから考えたんだけどきっと姉さんは予見の能力を授かったんじゃないかと思うんだ」


「予見の能力?」


そう言えば意地悪オババに知識の能力を授かったと決めつけられてしまったが、本当はいったいどんな能力を授かったのかはやはり気になる。


知識の能力は結構曖昧なところがあるので前世の知識とゲーム知識、それに日本語が読めることで誤魔化すことも結構簡単にできるとは思う。


予見もぶっちゃけストーリー上の大まかな出来事は覚えているのでそれさえ当たっていればそれもきっとどうにかなるだろう。


しかし癒やしと聖属性魔法と闇属性魔法は実際に発動しなければならないので、誤魔化すのは到底無理だ。


とはいえ、既に知識の能力を得たと院長にも認識されてしまった以上自分でもそれで良いと思ってはいるが、しかしやはり使えるものなら聖属性魔法も闇属性魔法も使いたい。それが使えるようになれば私のチート街道にさらに磨きが掛かり怖いものなしだ。


それはこのゲームの一大イベントである空から降りかかる大災害を攻略対象者達の協力無くしても一人でどうにかできそうなほどに。


もっともそのイベントに参加できるかできないかでエンディングが変わるってだけで、結局どうにかなってしまうので今からそんな先のことを考える必要も無いだろう。


それに肝心なのは私の推しはあくまでも文官様なので、誰を攻略する気もないしどのイベントも進めるつもりがないのでその辺もどうなるのか考えなければならない。


そう、バッドエンドだけは避けなければならない。私の持つ能力を別の誰かに渡すためにあらぬえん罪を掛けられ処刑されるのだけはごめんだ。


それに普通なら誰とも恋愛イベントを進めないのだからバッドエンドという扱いになるかもしれないが、今回はリオンというもう一人の主人公がいる。それがこの先どう影響していくのか私にはまったく予測できないのが辛い。


リオンがもし誰かと恋愛イベントを進めることがあれば当然それに沿ってストーリーは進むだろうし、かと言ってリオンにその辺を話して無理強いするつもりはない。


それにもしゲームの強制みたいな力が働くことがあったとしたら、それはいったいリオンの方になのか私になのかそれとも両方なのかと言う問題もあるし、その結果どうなるのかもまったく分からない。


(難しい問題だ…)


「僕は姉さんの言うことがたとえ理解できなくても信じるって決めた。だからこれからも僕に隠し事だけはしないと約束して。そうすれば今まで通り姉さんがどんな突拍子もないことを言い出そうが破天荒なことをしようがこれからも姉さんに付いていくから」


「リオンありがとう…。って、私そんなに突拍子もないこと言い出したり破天荒だったりしてる!?」


「自覚がないのがスゴいよね。きっと前世の記憶が無くても影響があったのかもしれないね」


「そう、なのかな」


「きっとそうだよ。それに姉さんと一緒だと不安を感じてる暇も無いほど忙しくて僕は楽しいよ。これからもずっと一緒にいてよね」


「そうだね。リオンが私と一緒に居たいと言ってくれてる間は私もリオンから離れないから安心して。これからも私にドンと任せなさい」


「うん」


私はリオンの気持ちを確認できたことが嬉しかった。それに一人じゃないというのがとても心強い。それに二人で力を合わせれば何でも乗り越えられそうだ。


「それでね、リオンいい良く聞いて。これからあなたはきっと教会で教育されることになるの」


「教育って?」


「勉強するってことよ」


「読み書きや計算ならモネ姉さんが教えてくれてるじゃないか」


「それとは別よ。教会の歴史やなんて言うかな、教会の理念みたいなものを叩き込まれ、きっと癒やしの能力を高める訓練なんかもさせられると思うの」


「良く分からないけど僕だけ?」


「そうよ。これからあなたは聖者候補として学校卒業までしごかれるの」


「一人でなんて僕嫌だよ」


「まぁ解決策が無いとは言わないけど上手くいくか保証できないの。だからこれだけは言っておくわ。洗脳だけはされないで」


「洗脳?」


「教会の押しつける考えに塗りつぶされないで自分でちゃんと考えなくちゃいけないってことよ」


「僕自信無いよ。姉さんも一緒に教育されてよ」


「教育されないでって言ってるのよ。まったくもぉ…。まぁ手は尽くしてみるけど、もしダメだったらって場合の話だから。でも今話したことは絶対に覚えておいてね」


「うん、分かった」


私だってリオンと引き離されるのは嫌だ。この先もできることならずっと一緒に居たい。

しかし癒やしの能力はゲームでは教会に囲われてしまうので知識の能力認定された私とは当然引き離されてしまう可能性が高い。教会はその辺全然慈悲深くはないし保守的で頭が固いのが困りものだ。


もし私が聖属性魔法の能力を得たとなればまた話は別で、多分リオンと一緒に私も教会に囲われることになる可能性もあるが、そうなるとこの先文官様との接点がかなり減ることになる。というか、きっとこの先文官様に会うのは絶望的になってしまう。


(悩むわ…)


取り敢えずリオンとしっかり話ができたのは良いけれど、近いうちに文官様がお迎えに来ると浮かれている場合ではない。この先リオンと引き離されないように何か対策を考えなければと思うのだった。



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