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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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自由です


「僕が初めて予見したのはあの《運命の扉》の書を開く光景だった。姉さんじゃなくて僕が開いている光景だった。その後僕だけがお城に呼ばれ僕だけがお城に滞在することになる結末も見えてかなり動揺したんだ。だからあの時僕は《運命の扉》の書は絶対に姉さんに開かせようと決めた。そうすることで何がどう変わるかは分からなかったけど、少なくとも僕だけがお城に連れて行かれることはないって思えたんだ。それに僕よりも姉さんの方が絶対に上手く行動してくれるって信じてたし」


「一つ聞かせて、リオンはそれが予見の能力だって知ってたの?」


「あの時は全然知らなかったよ。でもあとで姉さんが説明してくれただろう。それに折角姉さんに《運命の扉》を開かせたのに、姉さんったら僕にまで開かせて、あの時は本当に驚いたよ。そんな予定じゃなかったし、そうすれば良かったんだなんて僕では考えもしなかったからね。それに不可抗力とは言え能力を選ぶことになり本当慌てたんだよ」


「じゃあ癒やしの能力を選んだのはリオンの意思だったの?」


「違うよ。あの時は目の前で起こっている出来事が本当に何のことかまったく理解できてなかった。でも何故か能力を選択したあとに色々と悟る事ができた。本当に不思議なんだけどね、知りたいことが理解できるようになった。そして姉さんからこの世界は作られた世界だって聞かされて、姉さんはそれに抗いたいみたいだったから僕も協力しようって決めたんだ。だから僕は予見の能力を隠しできるだけ姉さんの力になろうってかなり必死だったんだよ。姉さん気付いてた?」


「なんとなくね。リオンの気持ちは伝わってきてた。でも私もリオンを守りたかったんだよ。リオンにはもっと自由でいて欲しいって思ってた」


「僕も分かってた。だから僕はこのまま姉さんの影で居ようと思ってたのに気付かれちゃったらダメだよね…」


「私の影で居る必要なんてないのに…」


「でも実際僕は自分で動くより姉さんの手助けをしてた方が性に合ってるから仕方ないよ。なんだったらさ、姉さんが女王にでもなって僕が影の実権を握って国を動かすなんてどう? どうせ作り物の世界ならそのくらいの事をした方が面白そうじゃない?」


「そんなことできる訳ないじゃない。それに何よ実権を握るだなんて、リオンって案外野望かなのね」


「そうかもね。今すぐにってのは無理だろうけど、時間さえ掛ければ予見の能力は僕の知りたい未来を見せてくれるし、どうやったら未来を変えられるか考える時間も与えてくれる。立て続けに使うとかなり魔力を使うし頭も痛くなるけど、大抵の場合は望んだ未来に導くことも可能だよ」


「既に実証済みってことね。でも思い通りの未来なんて全然面白くないよ。何が起こるか分からないから楽しいってこともあるし、何よりリオンに無理はして欲しくないわ。頭が痛くなるってことはそれだけ無理をしてる証拠よ。そのせいでリオンに何かあったら私はその方が嫌よ。だからお願い無理はしないで、予見なんてしなくてもきっと大丈夫。だって私はリオンと一緒ならそれだけで幸せなんだから。分かったわね。これからは無理な予見は禁止よ!」


「でも姉さん」


「でもじゃないわ。予見が向こうから何か言ってくるならまだしも、こちらからお伺いなんて立てちゃダメ。ましてやその能力を隠していたいんでしょう。だったら尚更よ。大丈夫どんなことになろうと私とリオンならきっとどうにかできるわ。人生はまだまだ長いのよ。もっと自由に楽しみましょうよ」


「自由に?」


「そう自由によ。リオンが癒やしの能力者の地位を捨てたくなったら一緒に別の国へ逃げても良いわ。二人ならきっとどうにでもできる。それに聖者様認定なんてされちゃったけど聖職者になった訳じゃないから恋愛も自由よ。これから先好きな人ができたらまた考えも変わるかも知れないしもっと今を楽しもうよ」


「それは姉さんもだよね」


「私はいつだって自由で自分の心のままよ」


「でも別の国へ逃げるとなったらアデス様はどうするの?」


「だ・か・らぁ~。アデス様は推しでしかないの。心の潤いで生きる活力だったりするけどリオンと比べることなんてできない。分かりやすく言うとアデス様は換えが聞くけどリオンの換えは居ないのよ。分かった!!」


「それじゃ姉さんも僕に縛られないでもっと自由に考えてよ。姉さんの人生は姉さんのものだよ。姉さんこそ好きな人ができたら僕のことなんて考えなくて良いからね」


「…そっか、もしかしなくても私は既にゲームから解放されているのか。私は下手にゲームの知識を持ってたからゲームのストーリーに囚われ過ぎてたのかも知れない…。ってことは、ゲームの攻略対象なんて関係なく恋愛できて、エンディングなんて気にせずに行動できるってことなんだわ。そうよね。私のエンディングは私が死ぬときなのよね。気付かせてくれてありがとう。この世界がゲームの世界だなんて忘れることにする。リオンもよ。もう囚われるのはやめて本当にここからは自由に生きよう。大丈夫、ヤバくなったらどうにでもできるくらい努力することだけは忘れないでいれば良いのよ。うん、頑張ろう。ねっ」


「ふふ、相変わらずだね姉さんってば。僕もなんだかどにかなるって言うかどうでもいいって気がしてきたよ」


「じゃ、そういう事で、これからはもっと自由に縛られずに生きていこう」


「うん、そうだね。でも姉さんが何か失敗しないか心配だからちょっとだけ予見の能力を使うのは大目に見てよ」


「やあね。それじゃまるで私が失敗してばかりみたいじゃない。でもまぁ、無理しないのよ。絶対よ」


「それは姉さん次第じゃないかな。僕に無理させないようにしてよね」


「言うようになったじゃない。リオンのくせに生意気よ」


こうして二人は新しい年を迎え新しい生き方を模索し始めるのだった。



この先の展開もあれこれ考えてはいたのですがこれで完結とさせていただきます。ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。

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