驚きです
「女性にも王位継承権があったら、今頃はヘザー様が女王様で師匠が王子様だったのか」
「そうしたら僕たちの運命もまた変わってたと思うよ」
今さらもしかしたらなどと考えても仕方が無いのは理解できるが、やはりどうしても考えてしまう。私達の運命ではなくヘザー様や師匠の運命をだ。
多分きっと現在の状況に落ち着くまでにそれはそれは大変なことや苦労が色々とあったのだろうと想像できてしまうのが辛い。
師匠が名前を捨て平民のように生活していることを思うと尚更で、できることなら子供の頃の師匠を抱きしめてあげたい。
しかし今さら過去を振り返りできないことを考えるよりこれからのことを考える方が建設的だ。
それにここがゲームの世界で設定の辻褄合わせの結果なのかと考えるのも多分無駄なことなんだろう。
そしてそんなことよりも私にはもっと気になっていることがある。
聞いても良いものかリオンが話してくれるまで待つべきか悩んでいたが、モヤモヤを抱えているのは性に合わないからこの際はっきりとさせてしまおう。
「ねえリオン。私に何か隠していることがあるでしょう」
「隠してること?」
「聞き方を変えるわ。私にまだ何か話していないことがあるよね。時々おかしいなって思う事があったけどリオンを疑いたくなかったから考えないようにしてたんだよね。私に話せない理由があるならこれ以上無理に聞かないけど、できるなら話せない理由くらい教えてよ」
「……」
「どうしても話せない? なら私の推測を聞いてくれる? もし違ってたらはっきり言ってくれて良いよ、ただの私の考えすぎだって。ただもうこのまま知らんふりしてるのが我慢できないだけだから」
「推測って…」
「リオンあなた予見の能力を得てるでしょう」
「!!」
私に前世の記憶が戻ってからリオンも随分と大人びた言動が増えていた。
私の影響かなと思った時もあったけれど、それにしてはいやにタイミング良くあれこれ言い出すことがあった。それもかなり的確だったし結果が良いように変わったりしてる。
今回のリオンのお披露目イベントだってそうだ。
もう自分は襲われることが無いなんて言ってたのに実のところ襲われた。だけど誰一人被害を出すことなく騒ぎが収まり無事賊を捕らえることもできた。
きっとこれで本当にアデス様があれこれと対策を練ることもでき手を回せるようになり、これからはリオンが襲われることも無くなるのだろう。
考えれば考えるほどあれこれすべてが上手く行き過ぎている。だけどもしいまだに見つからない予見の能力者がリオンだと考えればすべてが腑に落ちる。
でもそうなると一つ分からない事がある。
「いつ予見の能力を得たの?」
癒やしの能力を得る前なのかあとなのかは分からないけれど、どちらにしても一つしか授からないはずの能力をリオンは二つも得たことになる。
私の場合は前世の記憶が戻ったことで知識の能力者認定され、前世の知識で魔法を発動し聖属性魔法と闇属性魔法の能力も使えるようになっただけだから、私が本当のところどんな能力を得たのか余計に分からなくなる。
第一知識の能力者と聖属性魔法闇属性魔法の能力者は帝国に居るって話だしね。
もしかしたら顕現していないだけで予見の能力を授かったのかもなんて暢気に考えていたけれど、今まで全然まったくそんな形跡なんて無いのだからもうその考えも捨てた方が良いだろう。
「やっぱり姉さんには隠し通せなかったか…」
「当然よ。何年双子をやってると思ってるの」
「ごめん、欺す気はなかったんだよ。ただ姉さんに今までどおり居て欲しかっただけで」
「分かってるって、だけど隠す必要は無かったと思うんだよね。そもそも何で隠そうなんて考えたのか知りたいわ」
リオンがいつ予見の能力を得たのか知らないけど、どうして隠したのか不思議で仕方ない。
きっと何かを予見したのだろうけれど、それは本当に隠さなくてはならないほどのことだったのかも知りたいし、隠し通さなければいけないことだったのかも気になる。
なんというか、リオンに隠し事をされていたのがショックで受け入れがたいから、そこには何か重大な理由があると思いたいだけかも知れない。
それにこれからもまた何か隠し事をされるんじゃないかと考えるのも嫌だ。それだけははっきりときっぱりとさせておきたい。
「分かった。じゃあ全部話すけど絶対に驚かないでよ」
「驚くなって言うのは無理よ。でもリオンのことは信じてるから何を聞いても平気。リオンを嫌いになることはないから安心してよ」
「うん」
今までもずっと助け合ってきた唯一の肉親なのにこんな所で仲違いなんてしたくない。
それに何を聞いたとしても今現在何一つ悪い結果になっていないんだからリオンを信じられる。だからもう洗いざらい全部聞かせて貰うわよ。




