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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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動き出す運命1


「それではもう一度確認しますよ。オランジュは本当に古代文字が読めるのですね?」


「だから何度も言ってるじゃないですか。その古文書が気になって開いてみたら突然読めるようになったんです」


嘘は言っていない。詳しくは話さないだけだ。


「そんなことがあるものなのですかねぇ」


「きっと知識の能力に開花したのではないですかね、院長」


意地悪オババのアンジュが思いの外大騒ぎしたせいで結局院長に詰問される羽目になってしまった。

本来だったら特別な能力に目覚めるイベントがそれぞれあった筈なのに、何やら全部すっ飛ばして王家に知らせることになりそうだ。


「それでリオンも同じくその古文書に触れて特別な能力を得たと言うのですか?」


「リオンは癒やしの能力を得ました」


「でもリオンは古代文字を読めないのでしょう? ならばいったいどうして能力を得られたのでしょう。私もアンジュも試してみましたが何も起こりませんでしたよ」


院長はかなり疑わしげに私の目をジッと見詰めてくる。この目はすべてを見透かされそうで正直怖い。


「そこまでは分かりません」


まさかもう一人の主人公だからだなどと説明もできないし、ここはしらを切り通すしかない。


「元々リオンにその素質があったと言うことではないですか、院長。それにきっとこれで国からガッポリと寄付金をいただけますよ。何しろ今まで育ててやったんですからね。それも二人分ですよ、二人分。こんな事は孤児院始まって以来の大事件です。それにそうなれば院長、私には臨時の報酬を出していただけますよね。ええ、ええ、今まで散々オランジュには手を焼かされたんですから当然ですよね」


「アンジュ、あなたは子供達の前でなんと言う話をするのです。少し黙っていなさい」


一人興奮する意地悪オババの発言には少々イラッとするが、院長の追及をうまく誤魔化せそうな雰囲気があるので大人しく黙っていることにする。


「それでどうしてリオンの得た能力が癒やしの能力だと分かるのですか?」


「そ、それは…」


まさか能力選択ウインドウにそう表示されたなどとは絶対に話せないし、たとえ話したとしても理解されないだろう。


「開かれたところに癒やしの能力を与えると書いてありました」


ほぼほぼ嘘は言っていない。ただ全部を話さないだけだ。


「……。はぁ…。どのみち私達では本当に二人が能力を得たかどうかなど判断できません。さっそく王家の方に届けを出しますので連絡があるまで静かにしているように。他の子や職員にもまだ話してはなりませんよ。アンジュもですよ」


「「はい」」


「い、院長。もう既に何人かは察しているかと思います」


「それはあなたが大騒ぎをしたからでしょう。ああ、オランジュとリオンは下がって良いですよ。アンジュあなたとはもう少し話が必要ですから残ってください」


漸く院長から解放され院長室を出ると私は心からホッとした。これ以上質問攻めにされていたら下手をしたら夕飯を食べ損なうところだったよ。ただでさえ朝と夜の一日二食なのに、夕飯を逃したら眠るのも辛くなるからね。


「さぁ急いでご飯食べに行こう」


「姉さん僕には本当のことを話してくれるんだよね?」


「当然じゃない。でもその前にご飯よご飯」


人間空腹だと力も出ないし頭も働かず碌な事を考えなくなるからね。食事は大事、これ絶対。前世の記憶が戻って尚更にそう思う。


リオンの手を引きながら急いで食堂に入ると既にみんなは夕食を食べ始めていた。

孤児院の生活はお日様と一緒に活動するので夕飯の時間も比較的早い。明かりの節約のためだろう。


「オランジュ、また何やらかしたんだ?」


「フン、そんなんじゃないわよ」


「院長室に呼び出されておいてよく言うよ」


「そうだそうだ。さっさと話しちまった方が良いぞ。どうせすぐ知れ渡るんだからな」


「ハハハハハ」


食堂にいた殆ど全員が一斉に笑い出す。院長に口止めされたのもあるがうっかり話せないのが悔しい。これではまるで本当に私が何かやらかしてしまったみたいだ。


「みんな大人しく食べなさい」


「モネ姉さんありがとう」


こうしていつも庇ってくれるのはモネ姉さんだけだ。察しも良いしとても頼りになる。

私はなんとも言えない気持ちを抱えたままテーブルの上にある鍋から料理を食器によそり、自分の席に着くと黙って黙々と食べ進めるのだった。



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