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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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忙しくなりそうです


新年祭とは文字通り新年の訪れを祝う祭りで、年明けと共に盛大な花火が打ち上げられる。


それだけじゃなく日本で言うところの大晦日の日中から街のあちこちに露店や屋台が盛大に並びフリーマッケットのように賑わい、そして花火を特等席で見ようと街の中央部にある大広場には大勢の人が集まる街の一大イベントでもある。


しかし高級住宅街に住む一部の上級国民や貴族などはその花火を自分の屋敷から楽しめるのがステータスでもあるので、その日に人を招きパーティーを開催する家も少なくはない。

もっとも招待客が被る問題もあるので、事前に誰の屋敷でパーティーが開催されるかは打ち合わされるようだ。


そしてこの日ばかりは子供達も夜更かしを許されるが、孤児院から出ることが無かった私達は、今までは建物の影から少しだけ見える残骸とも言える音と光だけの花火しか見たことがなかった。


「花火楽しみだね」


「僕は教会の手伝いがあるからどうかな」


教会でも新年の訪れと共に盛大に教会の鐘を鳴らし、大晦日は炊き出しを行ない広く平民に施すのを通例としているので、今年はリオンもその手伝いで忙しいそうだ。


「夜も手伝うの? 子供なのに? それってある意味虐待だよね。労働基準法的にどうなの。教会って実はあくどい組織なんじゃないの」


この世界に労働基準法があるかどうかは分からないけれど、いくら夜更かし解禁日とはいえリオンを深夜までこき使おうなんてなんだか許せない。それでは一緒に花火を楽しめないじゃないか。


「まだはっきりと決まってはいないようだけど、僕の力をみんなの前で顕現させて見せ聖者として大々的に披露したいらしいよ」


「それってイベント感丸出しじゃない、教会に言われたらその通りにするってこと?」


それじゃまるで教会に利用されるだけな気がして面白くないんだけど、今まで頑なに能力の顕現を拒んでいたのにいったいどういう心境の変化なんだろう。でもやっぱりこれはリオンが決める事で私が口を出す問題じゃないのかな。


「実際に僕自身どのくらいの力が使えるのかもはっきりと知りたいし、いい機会かなとも思うんだ。それに僕が癒やしの能力者だと認められて問題になることはこの先なさそうだし、警護体勢もバチッチリ整ったしね」


「本当に問題はないの? 絶対に大丈夫?」


「うん、姉さんのお陰だよ。それよりも僕は姉さんの方が心配だよ。アデス様を陰謀から守る作戦はちゃんと覚えてる? 僕はその日手伝えないから心配なんだけど本当に大丈夫?」


「分かってるってば。とにかく私が餌になって悪いヤツを片っ端からおびき寄せて歩けばいいんでしょう。任せておきなさいって。大丈夫大丈夫」


そのためにヘザー様からも当日の外出許可をもう既に取り付けてある。昼間の内に外出して、人混みで屋敷の者をまけばあとは悪者ホイホイ状態よね。簡単簡単。


ヘザー様が今年は私達のお披露目もかねて屋敷でパーティーをすると言いだした時には驚いたけど、リオンが教会の手伝いがあると言うのと師匠の説得でパーティー開催は私達の成人を待つことになった。


取り敢えずは良かったけど、いずれは開催されるのかと思うとなんだか気が重いよ。貴族様のパーティーって一見煌びやかだけど色々窮屈そうだものね。


「姉さんの返事を聞く度に僕はどんどん不安になってくよ…」


「そうだ。折角だからリオンがお披露目されるところを私も見に行くわ。教会へ行けばいいのよね?」


「教会前広場だよ。炊き出しがされる所とは別にステージを作るみたい」


「そんなに目立った状況で、リオンは大丈夫なの?」


「ベールで囲って貰うから一応姿は隠れるし大丈夫だと思う」


「姿を見せないのにお披露目ってなんだか変ね。実際にどんな人なのか見たいって騒ぎにならないのかしら」


「大丈夫。問題なのはその能力だからね。当日どのくらいの能力をお披露目できるか姉さんも祈ってて」


「祈る必要なんてないわ。私はリオンを信じてるから、その能力だって絶対に凄いに決まってるわ」


本当にどれもこれもゲームでは聞いたこともないイベントばかり。癒やしの能力者を教会が新年祭でお披露目するとかいったいどんな意味があるんだか…。


それに癒やしの能力は病気を癒やし骨折さえも治してしまうと言う奇跡の治癒力だよ。それをみんなの前でどうお披露目しようというんだろう。


まさかいかさまマジックショーのごとくサクラを仕掛けておいて、一人一人治したように見せるとかそんな派手なインチキはしないよね。


う~ん…、全然まったく分からないけれど、とにかく新年祭は忙しくなりそうだな。



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