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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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44/53

対策です


「姉さんは僕たちが絶えず狙われてるのを知ってる?」


「達ってことは私もってこと? なにそれ、全然知らない。って言うかいったい私が誰に狙われてるっていうのよ」


アデス様とも話し合って私は無能力者ということにして学園入学だって諦めたのに、それでも誰かに狙われるって意味が分からない。だいたい古文書が読めるのだって徹底的に秘密にされ、研究員達しか知らない筈だ。どう考えても狙われる理由が無い。


「僕を利用したいヤツらにだよ」


全然まったく考えてもいなかった。だってゲームではそんな話無かったよ。能力を得たから狙われるなんて設定でも聞いたことがことが無いし、リオンを利用したいがために私まで狙われるなんて、これって主人公が双子として登場したからストーリーの内容も変わったってこと?


「そう言えば以前リオンと間違われてプロトが攫われそうになったって言ってたよね。あれがまだ続いてるってこと?」


「僕はね、まだ誰にも能力を顕現して見せたことが無いんだ。だから僕の能力に関して疑っている人も少なくない。当分はそれで誤魔化し通せると思ってたんだけど、僕の能力よりもその名声を欲しいと考える人が驚いたことに少なくないんだよ」


「能力が本物かどうかより癒やしの能力者という名声だけを欲しがってる人が居るってこと? なにそれ、それで能力を持ってなかったらどうするつもりなんだろう」


「その時は能力者を偽ったってことで粛清すればいいとでも考えてるんじゃないかな」


「あ、呆れた。そんなヤツらギャフンと言わせてやるわ。私の大事なリオンをなんだと思ってるのよ! いったいリオンをどう利用しようと考えてるのか知らないけど、もしリオンに何かしたら私が絶対に黙ってないわ。どんなことしてもやり返してやる! たとえ世界を敵に回してもよ!!」


「まぁまぁ、姉さんの気持ちは良く分かったから少し落ち着いてよ」


私は十分落ち着いてるわよ。逆にリオンが冷静すぎるんじゃないのかしら。それに自分の事だというのに良くもまぁそんなに落ち着いていられるよ。我が弟ながらホント感心する。


「話がだいぶ逸れたけど、教会は国と協力して警備体制を整えたしヘザー様の後ろ盾を得て今の僕はかなり安全になったんだ。それに教会で祈ってる間魔力も鍛えてるから反撃だってできる。だから僕のことは心配しないで。それよりもアデス様のことを話そう」


「そ、そうだったわね」


アデス様を陰謀から守ろうって話だったのに、なんだかリオンが狙われてるって聞いてつい興奮してしまった。反省反省。


「今姉さんを狙っているヤツらは、姉さんに上手く取り入り僕を利用しようと考えているヤツか、姉さんを攫い僕を脅してでも利用しようと考えているヤツばかりで、姉さんの能力に気付いている者は誰も居ないから別にどうでもいいんだけどさ、多分近い将来姉さんの能力に気付く人も現れるって言うか漏れる事態になると思うんだ」


「どうしてそう思うのよ」


だってアデス様も師匠も絶対に私の名前は出さないって言ってたから能力がバレることなんてまずないと思うんだけど。


「姉さんの能力を隠しきれないほど姉さんが活躍してるってことだよ。人の口には戸は立てられないし有能なスパイだって居ると思うよ」


リオンの考えは良く分かった。それに有能なスパイって帝国のってことだよね。まぁ絶対にバレない秘密なんてそうそう無いのは理解してるし、バレたらバレたでまたアデス様が何か対策を考えてくれるだろう。でもそれよりも。


「私の能力がバレるのとアデス様の陰謀対策がどう関係してくるって言うのよ」


「アデス様の活躍はすべて姉さんの能力のお陰だって考える人も出てくるってことだよ。そうなると姉さんの能力を同じように利用しようとするかもしくは潰そうと考えるか、そういう愚かな人は絶対に姉さんを狙ってくるよね」


「アデス様は元々能力の高いデキる男よ。私はちょっと手助けしているだけなのに」


「そう思わない人が居るってことだよ。そしてそういう人がたいてい策略や陰謀を企てる。僕の言いたいこと分かる?」


「分かったわ。私を狙ってくるヤツらを片っ端から退治していけばいいのね」


それなら簡単よ。やられたらやり返す。相手が誰だろうと折角覚えた魔法で対抗してやるわ。


「姉さんはそんな危険なことする必要は無いよ。隙を作るだけでいいんだ」


「隙?」


「姉さんは気付いてないだろうけれど、姉さんにも護衛が付いてるんだよ。それもかなり優秀な人がね。だから姉さんが隙を作るだけで姉さんを襲おうとする人達は悉く調べられるから、アデス様も嫌でも敵の陰謀を知ることになる。それが一番安全な解決策だと思うんだけどどうかな」


知らなかった。私にも護衛が付いているなんて。全然まったく気付かなかったよ。今もどこかからこっそり私を観察しながら守ってるってことなのかな。


「護衛っていつもってこと? 研究所内でも? 今こうしている間も? ってことはこの話も聞かれてるかも知れないってことじゃないの」


「話までは聞こえてないだろうけど、だから僕は二人でこっそりするのはなるべく避けてたんだ。いかにも秘密の話をしているみたいに勘ぐられるだけだからさ」


「そうか、それでリオンはお屋敷ではいつもヘザー様にべったりだったんだ」


「そればかりじゃないよ。正直お母さんができたみたいで嬉しいってのもあるし、何か役に立ちたいって考えてもいるからかな」


リオンが案外色々と考えていると知り、姉としては正直とても複雑な心境だ。いつも何も考えずに暢気にのほほんと生活していたのが恥ずかしい。


「それで隙を作るって具体的にはどうすればいいの?」


「一人で好きなように出歩くだけでいいと思うよ。さすがにお屋敷の中や研究所内で襲われることは無いだろうからさ」


「なるほどそれなら簡単そうね。って、このお屋敷から一人で出歩くって無理じゃないよ。黙ってこっそり抜け出すのはちょっと申し訳ない気もするし…」


ご厄介になっている身でそこまで自由気ままにはできないよ。孤児院にいた頃だっていくらやりたい放題と言っても孤児院をこっそり抜け出すようなことはしなかった。心配させるとか迷惑が掛かるかも知れないと思えばできないよね普通。


「そこで次の新年祭を利用しようと思うんだ」


「新年祭?」


「人混みって逸れやすでしょう。利用できるよね」


「なるほど、敢えて逸れて一人でウロウロと探して歩くんだね」


私やリオンを狙っている不埒なヤツらを誘い出し、そしてアデス様を陰謀に嵌めようとしているヤツを懲らしめる。


「なんだか楽しくなってきたわね」


「はしゃぎすぎないでよ。姉さんは本当に何もしなくていいんだからね」


「分かってるって。任せときなさいってば」


「はぁ…。なんだか僕、不安になってきたよ」


リオンの大きな溜息を笑顔で聞き流すオランジュだった。



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