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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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とことんです


「師匠、なんで宿舎のキッチンにはオーブンがないんですか?」


「俺に聞かれても困る。管轄外だ」


「キッチンって言いながらオーブンも冷蔵庫も無いなんてどう考えても不便ですどうにかしてください」


「だから……。またなんで急にそんなことを言い出した?」


「お菓子を作りたいのに作れないじゃないですか。折角材料を買い込んだのにこのままじゃ無駄になってしまいます。私のへそくりを返してください」


ミックさんに荷物持ちまでさせたのに、小麦粉や砂糖は保存が利くからいいけど卵に牛乳にバターなんかの保存は難しいんだよ。それに泣けるほどお高かったのに無駄にするのは絶対に嫌だ。


「食堂の厨房を借りれば良いだろう」


「子供が出入りする場所じゃないって話も聞いて貰えませんでした」


それもあって嫌がらせがてら休憩時間を見計らって忍び込んだんだけど、あの時はみんながいつ戻ってくるかも分からずに本当に緊張したんだよ。


前世では機材も道具も揃ってたから効率重視の時短料理も得意だったけど、今は使い慣れた道具もなければお手軽調味料もないから結構手間取るんだからね。


それでも都度都度片付けを意識していればかなり手早く調理できるのは孤児院の食堂で既に慣れたものだ。

料理に時間の掛かる人ってたいていキッチンをグチャグチャに散らかす人が多いよね。料理より片付けに時間が掛かると嘆くくらいに。


「屋敷に戻ったら厨房を使えば良いだろう。あそこなら誰も反対しないと思うぞ」


「そっか、その手がありましたね。じゃぁ次に帰るときは師匠に材料を預けますね」


「なんだそれ」


「買ったはいいけど結構重いんですよ。子供に重い物は持たせたくないでしょう」


「おまえは本当に都合のいいときだけ子供になるんだな」


「なんの話をしているのです?」


「ア、アデス様…」


急な登場とは言え久しぶりにお声を聞けて嬉しいです。相変わらず麗しいお姿を拝見できてとても感激です。今日は朝からなんと素敵な日でしょうか。


「どうした急に? って、おまえはいつも急だったな」


「農地改良のレポートを拝見しました。とても素晴らしい内容でしたので、何か特別ボーナスをと思いましてね」


特別ボーナスなら今既にいただきました。アデス様のお役に立てた上に喜んでいただけて、こうしてお目にかかれるなんてなんて私は幸せでしょう。


「特別ボーナスってからには現金ってことか?」


「あなたに出すなんて一言も言ってませんよ。オランジュ、何か欲しいものはありますか?」


な、名前まで呼んでいただけて本当に感激です。それに何でもいいと言われるのなら、以前考えていたアデス様にお目にかかれるフリーパスポートチケットなんて物があったら絶対に欲しい。でも常識的に考えてまず無理ですよね…。


「……」


「そうだオランジュ、さっきの話してみれば良いんじゃないか」


「さっきの話ですか」


「宿舎のキッチンにオーブンと冷蔵庫が欲しいそうだぞ」


「オーブンと冷蔵庫ですか?」


「菓子を作りたいんだと。まぁおまえは興味がないだろうが菓子を喜ぶ研究員は案外多いぞ。今度来るときは手土産に城の菓子でも持ってくればオランジュも喜ぶだろうがオランジュは自分でも作るらしいぞ」


「それは凄いですね。是非私も食べてみたいです。よろしければ今度私にも何か作っていただけますか?」


「えっ、た、食べていただけるのですか。本当に?」


だってアデス様はお菓子にはあまり興味がないと師匠から以前伺いましたよ。だからムキになってあめ玉作りをしなくて良かったと胸を撫で下ろしたこともあったんです。

それなのに私の作るお菓子に興味を持って貰えるなんて思ってもいなかった。なんだかとても嬉しいです。


「珍しいことを言い出したな。何か企んでるのか?」


「もう、師匠ったら何を言い出すんですか、アデス様に失礼ですよ。それに折角気分良く作る気になってるのに水を差さないでください」


アデス様に献上するとなると力が入ります。何を作ろうか。あぁ早く週末にならないかな。


「それでいつ作っていただけるのでしょう」


「週末にヘザー様のお屋敷に帰ったときに調理場をお借りして作る予定ですので、よ、よろしければ週明けにお、お届けします」


「お城まで来るのは大変でしょう。私がこちらに出向きます。楽しみにしていますね」


アデス様に楽しみにしているって言われちゃった…。なんという幸せ。まるでデートの約束でもした気分です。幸せすぎて妄想が止まりません。


「やっぱりおまえ何か企んでるだろう」


アデス様が何かを企んでいたとしてもその含みのある笑顔までも素敵だからいいんです。利用されたとしてもアデス様ならきっと私の不利益になることはしないと信じています。


それにたとえボロボロにされ捨てられようとも、それさえも許せる気がするから大丈夫。その時は悲劇のヒロインにでもなった気分で盛大に泣き明かして楽しんで諦める覚悟もできてます。

だからそれまではとことん推し活を楽しませていただきますね。アデス様。



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