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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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寂しいです


困った。宿舎のキッチンにはオーブンがなかった。これではフィナンシェが焼けないだけじゃなくお菓子が何も作れないじゃないか。


ぶっつけで作ったものだったのにミックさんはかなり喜んでくれたみたいだから、折角ならちゃんと作ってみんなにも食べて貰おうと思ったのになんと言うことだろう。まったくの予想外だった。


久しぶりに街に出て気持ちが舞い上がり、それにミックさんが荷物を持ってくれるのを良いことに、またもやへそくりを使い果たしてあれこれと材料を仕入れたのに大失敗。


これから街に出たくなったらいつでも付き合ってくれると約束してくれたミックさんに、できればお礼がてら何か別の物を作りたかったのにホント残念だ。


フライパンで作れるお菓子にも前世では何度か挑戦したことがあるけれど、あまり成功したことがないんだよね。特に見た目が、ちょっと美味しそうじゃないって感じで納得いかない場合が多かった。


仕方ない、今日のところはクレープ生地を焼いて何か挟んでみるか。それともマグカッププリンにでも挑戦しようか。でも、今作って明日配るとなるとどちらもちょっと問題があるからやっぱり無理か。


「今日のところは諦めるか…」


明日古文書の中から何か簡単に作れそうな物を探してみるしかないだろう。

古文書の整理をしていたときは料理のレシピ本を見かけなかったけど、画像付きでなければどこかにレシピが載っているかも知れないし、今思い出せないだけでオーブンがなくても作れるお菓子のヒントが何か見つかるかも知れないからね。


「どうして宿舎にオーブンがないのよ!」


研究所の調理場のオーブンは薪オーブンで、24時間体制のためか絶えず薪がくべられていていつでもすぐにオーブンが使えるのが便利だった。ホント羨ましい。


それに冷蔵庫も欲しい。この世界の冷蔵庫はまだ氷を入れて冷やす原始的なタイプの物で一般家庭にまでは普及してないのが本当に残念だ。


「折角のやる気を返せ!」


宿舎のみんなってマジで料理をする人がいないんだね。

まぁ研究所の食堂に行けばいつでも何かしら食べられるし調理する必要もないんだろうけど、それにしてもたまには自分で何か作ろうなんて考えもしないんだろうか。


みんな食に興味がないのか飢えを知らないのか、孤児院にいた頃は良く夜中に調理場に忍び込んでこっそり何か作って食べてたのが懐かしい。見つかって大目玉を食らうこともあったけどそれも今となっては懐かしい思い出の一つだ。


「忍び込んでみるか?」


今から研究所に戻ってもう一度調理場に忍び込んでみるのもアリだよね?

多分夕食の準備時間が過ぎれば調理人さん達も交代するか休憩に入るかするだろうし、夜なら尚更に誰も居なくなる時間も多いだろうから案外イケる気がする。


「あっ、でもダメか。ミックさんに匂いでバレるって言われたしな」


まさかこんな時間にミックさんが換気に現れてはくれないだろうし、夜は余計に匂いや音でバレやすいだろうからな。


こんな時にリオンが居てくれたなら、なんだかんだ言って迷わずに行動できるんだよね。

一人じゃやれることに限界があるけど、二人なら助け合って証拠隠滅もできるしたとえ見つかっても怖いものなんてなかった。


それに内緒で作った物がたとえ失敗作でも、二人で食べれば楽しさも嬉しさも二倍で美味しく感じられたのに。リオン今頃何してるんだろう?


最近は会える時間が少なくなった上に話す事も少なくなって本当に寂しい。少し慣れたとは言えやはりこうして思い出すと寂しさが増していく。


「はぁ…。寝よっと」


このままじゃ悲しくなってきそうな気持ちを抑え早々に布団に入ることにしたのだった。



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