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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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35/50

アデスside3


「それでどうです、オランジュの能力の確認はできましたか?」


「古代人の記憶を持つというのはどうやら本当のようです」


「そうですか。では予見の能力を持つという私の推理は外れましたか…」


別にオランジュが嘘を吐いているとは思っていないが、まだ何か大事なことを話していないような気がしていたアデスは、実はオランジュがまだ見つかっていない予見の能力者ではないのかと疑っていた。そう推理すれば納得のいくことも多い。


実際に古文書が読めたとしても、こうも完璧に飢饉に対する対策を提案できるものだろうか。それもまだ起こってもいない飢饉がまるで確実であるかのように。


それが予見の能力でないのだとしたら、オランジュは古代人としてどれほどの知識を蓄えどれほどの経験を積んだのか。


「今日は何やら変わった焼き菓子を作っておりました」


「焼き菓子だと」


「はい、研究所の調理場で調理人達の目を盗み実に手際良く作り上げたのには私も驚きました。孤児院で調理の手伝いをしていたのだとしても子供ができることとは思えません。それにあの焼き菓子は間違いなく現代にはまだ知られていない古代人が食していたものだと推察できます」


「なんと」


「本人は証拠隠滅などと言ってましたが片付けも完璧でした。ただ少しだけ迂闊なところがあるのは性格からなのだと思われます」


「そこが心配なのだ。オランジュにはあまり目立って欲しくないと言うのに警戒心がなさ過ぎる。とは言ってもいくら古代人の記憶を持とうと子供のすること、くれぐれも注意してくれ」


「承知しております。ですので今日は思い切ってかねてより計画していましたとおり城外へと出かけてみました」


「それでどうだったのだ」


「帝国が目をつけている様子はまったくありません。しかし貴族の手の者が湧いていたので影が現在調べております」


「やはりか…」


「しかしまだオランジュの能力は気付かれていないようですのでご安心を」


「油断するな。オランジュの行動を縛れない以上どこからどう漏れるか予測ができない。くれぐれも頼んだぞ」


「はい」


アデスは執務室を出て行くミックを確認してから大きく溜息を吐く。


「ルヴァ、おまえは今の話を聞いてどう思う」


「一つ心配があるのですがよろしいでしょうか」


「心配?」


「報告が遅れましたが最近ご婦人方の間で話題のポプリなるもの、ヘザー様が表立っているので知られてはいませんが彼女の発案です」


「私の妻も欲しがっていたが、あれも彼女が作ったというのか」


「はい。それで先程話に出ていました焼き菓子ですが、彼女なら間違いなく宿舎の調理場で作り研究所内で配り始めるでしょう」


「どうしてそう確信できる」


「あのミックがわざわざ報告したのですよ。となればミックも食し気に入ったという事でしょう。彼女ならその反応に自信をつけて他の者にもと考えるのは目を見るより明らか。その結果ポプリ同様必ずや話題となるでしょう」


「そうなるのか?」


「アデス様は菓子に興味がないからそう思うのです。城の調理人達が日々王妃様や王女様達を飽きさせず満足させるためにどれほど苦労しているかご存じないのですか。お茶には菓子も必要でとても大事なのですよ。話を聞きつければ城の調理人も必ずやそのレシピを知りたがるでしょう」


「そ、そうだな」


「そして多分彼女の知るレシピはそれだけではないはず。となると次々とレシピを発案する彼女に注目し重要視するものも必ずや現れるでしょう」


「そんなにか?」


「アデス様、料理のレシピなら誤魔化しも利くでしょうが菓子のレシピはそう簡単ではないのですよ。ちょっと思いついて作ってみましたができるなら城の料理人は誰も苦労していませんよ。本当にアデス様はこれだから…。私も是非その古代人が食していた焼き菓子とやらをいただいてみたいです。それにアデス様、奥様に持ち帰ったなら必ずや喜ばれるでしょう。そうして噂だけが一人歩きし騒ぎが大きくなるのは必然。これはもう先手を打って彼女の持つ菓子のレシピを先に城で買い上げ対策をするのが妥当かと」


「あぁ、分かった分かった。おまえがそれほど菓子が好きだったとは意外だが、だがしかしそんなに重要なレシピをそう簡単に教えるものか? 聞き出すのも一苦労だろう」


「そこはアデス様にお任せします」


「私がか?」


「アデス様なら必ずや上手く聞き出せると信じております。それにこれは彼女のためのみならず王妃様や王女様のため延いては国民のためとお考えください」


「わ、分かった。何か考えてみよう」


「お願いしましたよ」


ルヴァの熱い思いに押し切られアデスは忙しいさなかさらに重要任務を押しつけられるのだった。



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