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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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新たな一歩2


「そう言えば師匠、アデス様ってどこへ領地視察に行ってたんですか」


「オランジュ、おまえ最近やたらとお喋りになったんじゃないか?」


今までは研究室内で私から師匠に話しかけることなどあまりなかったが、最近は気付くと師匠に話しかけていた。

ヘザー様の話し相手が嫌で屋敷に帰らない師匠には大変申し訳ないと思いながらもつい話しかけてしまっている。


「だって宿舎へ帰ってもリオンは居ないし、他に喋れる相手って居ないじゃないですか。少しくらい付き合ってくださいよ。そうじゃないと私寂しくて死んじゃいそうです」


一人になった宿舎の部屋はとても広く、それにどことなくいつも以上に寒く感じる。寒い日は一つの布団に入り冷たい手足をお互い温め合ったのに、もうそんなこともできないのかと思うと余計に寂しさが胸を埋め尽くす。


それに私がいつだって強くいられたのはリオンが居たからだと最近になって漸く気付かされた。

話を聞いてくれるリオンがいたから考えを上手くまとめることもできたし、これからどうしたら良いか答えを見つけることができた。だから改めてリオンは自分の片割れだったのだと実感せずにはいられない。


でも、リオンが言うようにこれからはお互い進む道が違うのだからここは一人で乗り越えなければと私なりに頑張っているんだから、師匠も少しくらい協力してくれても良いと思うんだよね。


「プレザード辺境伯領だ」


あれっ、プレザード辺境伯領ってどこかで聞いたような気がする。う~ん……。


「辺境ってことは王都からはだいぶ離れているんですよね?」


「そうだ。北のヘイザラとの国境を守る大事な領地だ」


「それって…」


聖属性魔法の能力を得ると起こる飢饉イベントの領地じゃないですか。もしかしたらもう既にその兆候があるってことなのかな。そして数年後にはイベントになるほどの飢饉が人々を苦しめるのか。


でも、私は正式に聖属性魔法の能力者ではないと判明したんだよね? 本物は帝国に居ると。

だとしたらやはりどの能力を得たかなど関係なく、以前考えていたように実際はどのイベントも起こるってことなのだろうか。


それならば飢饉が起きる前に何か対策を考えておけばもしかしたら大惨事は防げるかも知れないのか?

アデス様が視察に行かされたってことは要するにどうにかしろってことなのだろうから、ここでその手助けができればアデス様の功績に繋がり私も大満足できる。うん、ここはきっと私の出番だ。


「麦の実りが悪くなってるんですよね?」


「どうして分かった。おまえはアデスのこととなると勘が鋭いな」


「なんですかそれ、乙女の感はいつだって鋭いんです。と言いたいところですが、実は前世の記憶のお陰です。多分その対策に役立ちそうな古文書があった筈ですよ」


確か研究室を整頓していたときに農地改良に関する専門書みたいなのもあった筈。あれを翻訳して上手くまとめられれば聖属性魔法の能力者が大地を潤しに行かなくてもきっとどうにかなるだろう。だってイベントが起こる時間まではまだまだあるしね。

それにまぁ、最悪は私が出向いてこっそり大地を潤すって手もあるけど、多分きっと今はその時じゃない。


「どんな古文書だ?」


「私はあまり詳しくないですが、農地を休ませるとか肥料を与えるとか麦じゃなくて寒さにも強い芋を育てるとか確か色々あったと思います」


「対策があると言うことか。それはありがたい。是非教えてくれ」


「勿論教えますよ。アデス様が困ってるなら尚更です。お馴染みのレポート風にまとめて見せますから任せてください」


「あの地で飢饉でも起きようものなら国境の守りが弱くなる。ヘイザラとは今のところ平和を保っているが攻め込ませる隙を作りかねないのでアデスも頭を抱えていたんだ。期待して良いんだな?」


「だから任せてくださいってば。師匠は私を信用しないんですか?」


「そうじゃないが、実は俺も専門外だからついな…」


「師匠は絵を見て解釈していたから字ばかりの古文書は専門外ってことですね。うんうん、分かります。でも私は翻訳するだけですから専門は関係ないですから安心してください」


私の専門は妄想力だ。妄想できるかできないかが重要なのでジャンルはまぁ色々だ。専門書は妄想できないからそういう意味では専門外だが、大丈夫アデス様のためと思えば翻訳してまとめるくらい平気です。必ずややり遂げてみせます。これでも既に二度目ですからね。


「本当だな。分かった、もしこの件が解決した暁には、以前おまえが言っていた通信機器とやらの開発を研究員に促してみる」


「スマホですか!?」


「離れた者と顔を見て話せるというアレだ」


「いや、でも、それが開発されたとしても、私はそう簡単にアデス様とお話できないですよね」


「だが仕事の報告となれば話は別だろう?」


「あぁ、なるほど。師匠って案外策士ですね」


一気に私のやる気に火を付けるなんてホント凄いです。アデス様とたとえ数分でももしかしたら毎日話せるようになる。そんな夢みたいなことが本当に実現したらどんなに良いだろう。話の内容なんて別にどうでもいいんだ。愛を語り合う訳じゃないのだから。


大事なのはアデス様のお顔を拝見できるという事で、名前でも呼ばれようものならもうそれだけで疲れも吹っ飛び心は満たされるだろう。ええ、ええ、絶対に開発されると信じて頑張りますとも。



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