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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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事件です3


「とは言っても俺も屋敷には殆ど帰ってないからなぁ。どうしたものか」


研究所の研究員は半数以上が平民の出で貴族様の数は少ない。もっとも貴族様は研究所で研究をするよりももっと別の役職に就くことが多いから当然なのだろう。


なので独身の研究員の殆どは宿舎住まいだが、貴族様方はほぼ全員自分の屋敷から通っていた。

だから研究所でしかその姿を見ない師匠は当然のように宿舎に部屋を持っていたので普通に平民なのだと思っていたのに、実は貴族なのだと知りとっても驚いたのは最近の話だ。


「ジャッジはオランジュ達にも同じような生活をさせるつもりですか」


「同じようなとはどういう意味だ」


「屋敷に引き取ると言いながら実は宿舎住まいさせるつもりなのかと心配しているのですよ」


「別にそれも悪くないと思うがな。実際研究所の方が警備も万全だし秘密も漏れづらいし自由さが違う」


「まぁそれはそうなのですが」


アデス様はいったい何が不満なのだろう。私としては今の宿舎住まいの方が気が楽だから寧ろその方がありがたいのだけど、それじゃ意味がないのだろうか?


それにそもそも私には多分きっと絶対に貴族的生活は無理だよ。だって食事の度に着替えをするとか当たり前の世界なんでしょう。それもとってもキツいコルセットなんかさせられて。


私は貴族生活するならマリーアントワネットの世界ではなく、御簾の内でダラダラゴロゴロできる平安時代の方が断然好みだ。


ずっと部屋に籠もって惰眠を貪りながら源氏物語や枕草子を読みあさる生活なら全然できる自信がある。それに通い婚ってのも良いよね。貴族的婚姻をした男と一年中愛を語ってばかりはいられない。愛を語るなら脳内か二次元がお勧めだから適度に離れているのが長続きのコツだと思う。ああ、光源氏様…。


「安心しろちゃんと屋敷に引き取った形式は取る。だがオランジュ達がどんな生活をしたいのかも重視したいから急ぐ気はないぞ。それに下手な貴族が養子話を持ち出さないための牽制なら俺の家は役に立つのは確かなのだからそれで十分だろう」


「分かってくれているのなら良いのです」


「ちょっと待ってください、私が良く分かってないのですが?」


いきなり貴族の養子話とか師匠の家が役に立つとか言われても私には全然まったく意味が分かりません。

第一私の能力は口外しないと決められ、無能の孤児は学園に入れないと言われたばかりでどうしてそんな話が出てくるんですか?


学園の寮に入るリオンと離ればなれになるのが寂しいと言う話から師匠の屋敷に厄介になることになったのもいまだに良く理解できていないのに、何故急に養子話まで持ち上がるんですか?


それにゲームでも王族に囲われようが貴族に囲われようが養子になるなんて話はなかったよ。

まさかとは思うけどここまでゲームと話が違ってくるのは私が本当にゲームから離れた存在だからなの?


私が実は主人公でも何でもなくてただのリオンのおまけのモブだから?


でもそれじゃぁリオンはいったいどうなのよ。リオンが主人公だというなら今頃は当然教会に囲われてる筈なのにそこも話が変わってる。

本当に訳が分からない。この先いったいどうなっていくのよ。


「そうですね、オランジュには政治的な話は難しいですよね。簡単に説明させていただくと、癒やしの能力を持つリオン君と近づきたいと考える者達がこの先きっと出てくるでしょう。その時に教会が主導を握るリオン君には手を出しづらいが双子の姉であるオランジュなら簡単だと判断されることになります。オランジュを取り込めればリオン君もとね。そのための牽制が欲しかったのですよ私は」


「ああ、なるほどです」


アデス様の説明は分かりやすかったですが、私はそんなに簡単に籠絡されませんよ。それに元々貴族になんて興味もないし、力尽くで来るようなら返り討ちにする自信もあります。


「俺としてはこんなに有能なオランジュを軽く考えるヤツは許せない。人間の本質も見抜けないようなアホどもがオランジュに近づくのも不愉快だ。いいかオランジュ、これからおまえに誰がなんと言おうと相手にするな。俺もアデスもおまえの凄さは十分に知っているからな」


師匠はアデス様とはまた別の心配をしてくれていたようだ。なんだかとっても心がポカポカして勇気づけられる。肩に置かれた手があまりにも力強くて涙が出そうだよ。


「師匠もアデス様も私なら大丈夫です。言われたらきっちり言い返しますし、やられたら倍にしてやり返します。そしてリオンと二人で誰よりも幸せになってそんなヤツら全員を見返してやりますから!」


幸せの定義など人それぞれだが笑っていられるのが重要だと思う。美味しいものを食べては嬉しいと笑い、天気が良いと気持ちいいと笑い、雨音が音楽のようで楽しいと言っては笑い、そうして邪な感情なんて吹き飛ばすほどの幸せな時間を過ごせるように心がける。そこに他人がどう思うかなんて考えは必要無い。私はそうしてこれからも生きていく。それが私の幸せだ。


「そうだな、おまえはそういうヤツだ」


「それで結局私達はどうなるんですか?」


「弟とよく話し合って決めろ。だが近いうちにおまえ達を俺の家族にも引き合わせなくちゃならないからな。それだけは覚悟しておいてくれ」


「えっ、覚悟が必要なんですか?」


「まぁな…」


ちょっと師匠、さっきまではあんなに心強かったのに急に不安にさせないでください。いったい師匠の両親にお目に掛かるのにどんな覚悟が必要だというの。


もしかしてアレですか、こんな女は我が家に相応しくないとか言ってコップの水をぶちまけられる韓流ドラマみたいな展開があるとかそんな覚悟ですか?


それとも完全無視の居ない者扱いされるとか、私達の弱点をあげ連ね喧嘩を売ってくるとか、まさかとは思いますが師匠のご両親は師匠に似ない典型的貴族っぽいとか激情型の人じゃないですよね?


まさかとは思うけど、良く物語にありがちな我が子のように溺愛されるというパターンもちょっと面倒だし、ぁぁ、なんだか急に胃が痛くなってきた気がするよ。


師匠にお世話になると決まったみたいだけど、ホント大丈夫なのだろうか…。



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