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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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研究所生活2


「ねぇオランジュ、この大爆発というのをもっと具体的に説明できない?」


「具体的にって言われても爆発は爆発です」


レポートにまとめる作業がまったく捗らず師匠に監修して貰う段階に進むこともできずにいた。けして私の頭が悪すぎる訳じゃないと思いたい。


なんというか書くとかまとめるという作業事態随分久しぶりというのもあるが、もうずっとPCで検索しながらとか表を作るのも自分でしてなかったから勝手が違って時間が掛かってしまうのは仕方ないことだろう。


そこで私が書き出した要点を上手くレポートに仕上げてくれているのがオリヴィア様だ。

以前あめ玉を貰って以来なんとなく挨拶をするようになり、会えば話をしているうちにいつの間にか手伝ってくれるようになった感じだった。


師匠もオリヴィア様が研究室に出入りするのを自然と受け入れていて何も言うことはなく、今では一人掛けソファーがオリヴィア様の定位置のようになっている。自分の研究は良いのだろうか?


私としては私のやらなくてはならないことが捗るし、アデス様に一日も早く報告できるのは嬉しい事なので問題ないが、このように深く追求されると答えに困ることも多く悩みどころだ。


「爆発には条件が必要なのは知ってるわよね? この場合の爆発は何を条件にどう発生させているのかを私は知りたいのよ」


「えっとですね。私自身実際に爆発物なんて作ったことがなく、そういう知識は無いんです。なんというかイメージで想像しているだけなのでそこまでの説明を求められても答えられないです」


魔法ってイメージさえしっかりできていれば発動できるってどの古文書ラノベにも書いてあるけど、そんな詳しい化学的説明なんて求められても私に答えられる訳がないじゃない。

確かに魔法の一覧にさも自分も発動できるかのように書いてみたけど詳しい説明は本当に無理だよ。


「イメージって、それじゃオランジュは爆発はイメージできるのね?」


「ええ」


「という事は爆発を実際に目にしたことはあるのよね?」


「そうですね」


特撮戦隊ものやテレビのドラマや映画なんかで見ているだけだから実際には体験していないけど、その威力は想像はできる。破壊力というか風圧とか光とか熱とかなんとなくね。


「古代って案外物騒だったのね。まぁいいわ、私の方で調べて補足しておくわ」


「すみません、お願いします」


オリヴィア様は私が話していないのにいつの間にか私が前世の記憶を持つことを知っていた。師匠もそこにツッコミを入れないところをみると師匠が話したんだろうか?


「謝る必要なんてないわ」


オリヴィア様はなんとも優雅にティーカップに口を付ける。その仕草で彼女が高貴なご出身なのは想像できます。はい、もうとても素敵です。


「この研究所って高貴な方々しかいないんですかね?」


「どうしてそんなことを聞くのかしら?」


「いや、なんとなくオリヴィアさんはとても高貴な方なのかと思って」


「やだわ、私はオランジュと一緒で平民の出よ」


「とてもそうは思えません」


その気高い堂々とした雰囲気はまるでどこかの悪役令嬢の様ですよとは言えないけど、金髪縦ロールだったなら間違いなく登場人物だと言われても不思議じゃないと思う。


「この研究所は学院卒業者の中でも特に優秀な人しか入れないから実際貴族の方々が多いのは確かね。それにここの研究員でうるさく言う人はいないけど、研究内容によっては貴族の方々とお目にかかる機会も多いからオランジュも研究を続けるつもりなら礼儀作法はしっかり身に着けた方が良いわよ」


「そうなんですか?」


学園卒業後に学院に入学すると言うエンディングもあるにはあったが、ゲームではそこまで描かれてはいなかった。と言うか、礼儀作法に関してはゲーム内で追求されたことはなかったと思う。


でも考えてみたらゲームのストーリーによっては王様にお目に掛かる機会がこの先あるかも知れないのに、リアルになった今は絶対に誰かに何か言われそうだよね。

まさか不敬罪で問答無用で打ち首なんてことは無いだろうけど、少しは考えた方が良いんだろうか?


「自分のために身に着けておいて損な知識は無いと思うわ。良かったら指導するわよ」


「オリヴィアさんは自分の研究大丈夫なんですか?」


「あらっ、私が遊んでいるように見えて? オランジュのお陰で私の研究も実は捗ってるの。だから私もお礼をしたいと思っていたの。丁度良い提案だと思うのだけどいかがかしら」


確かにオリヴィア様のお陰で魔法に関してのレポートは随分と進んでいて完成間近だ。時間も随分と短縮されたしオリヴィア様が言うように礼儀作法を身に着けておいてやはり損はないだろう。


「それじゃオリヴィアさんに迷惑が掛からない程度でお願いできますか」


「ではこのレポートが仕上がったら毎日一時間指導するっていうのはどうかしら」


「毎日ですか?」


「オランジュの場合は身につくまで休みなく続けた方が良いと思うの。ああ、勿論休日はお休みよ、自分で復習してね」


良く分かっていらっしゃる。私は熱しやすく冷めやすい上に忘れっぽいところがあるので実のところ毎日コツコツが一番身につきやすい。だがそうは分かっていても一人だと毎日続けるって案外難しいんだよね。


さすがオリヴィア様、鋭く見抜いていらっしゃる。もしかしたらリオンの次に私に関して良く理解しているかも知れないと思わずにいられない。


「ではそれでお願いします」


「そう堅く考えないで、私と気軽にお茶するつもりで続けましょう」


その笑顔はとても高貴な雰囲気で素敵です。反論などできそうもない威圧さえ感じてしまいます。さすがです。


こうして私は習うつもりもなかった貴族的礼儀作法を身に着けることになったのだった。



すみませんが明日から一日一度の更新に変更させてください。これからも毎日更新できるよう励みます。

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