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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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告白1


「オランジュは遺跡に興味があるのでしたね?」


今日はなぜか朝からアデス様が研究室に顔を出してくれている。なんという幸せ。


「はい、できることなら発掘作業に参加したいです!」


折角のラノベもコミックも所々歯抜け状態で全巻綺麗に揃っているのが無いんだよ。ホント残念なことに。そのせいで読みたい書籍も読み始められていない。


もっとも辞書の翻訳は順調に進んでいるとは言えず、ジャッジさんの目を盗んでは魔力循環や魔力操作の訓練もしているのでその時間も無いのだが。


それに綺麗に整理整頓してみると被ってる書籍が一冊も無い事から多分同じ物は発掘されず、歯抜けになっているところの書籍は今後絶対に発掘されるのだと確信し期待している。


ならば尚更に自分の手で発掘したいと思うのは当然で、きっと全巻揃ったときの感動は相当なものだろう。


「しかし遺跡には学院卒業者でなければ入れないのは知っていますか?」


その設定はゲーム内でチラッと触れられるので知ってますとは言えないよなぁ…。知らない振り知らない振りと。


「そうなのですか?」


「学院卒業者と言っても魔法を習得した者でないと許可は下りないのですけどね」


「魔法ですか?」


魔法は学院で習うとは知っているが全員が習得できる訳では無いという事なのだろうか?


「一般の平民は魔法を目にすることなど無いでしょうから知る人も居ないと思うのですが、魔法とはとても奇跡的な能力なので習得も難しいのですよ。かくいう私もとうとう取得できずに遺跡を諦めた一人なのです。あの時に魔法を習得できていれば私も今頃は発掘作業に従事していたかもしれませんね」


「……」


この世界では魔法って一般市民は知らないって事になってるなんて知らなかった。

どおりで聖属性魔法はともかく闇属性魔法はちょっとショボい感じもしたのに奇跡扱いされた訳だ。


でもリオンは案外簡単に受け入れくれていたし、知識としては当然持っているものだと思っていたのに違てったなんて迂闊だった。


って事は私達が魔法を使えるなんて誰にも知られる訳にはいかなくなったってことだよね。

それに突然使えるようになったなんていい訳もきっと通らないよね。そんな芝居もできないだろうし。


しかしそれにしてもアデス様はいったい何故今こんな話を始めたのだろう。まさかリオンと魔法の練習をしているのがバレてるってことは無いよね? まさかね。


それよりもここはいずれ私達が魔法を使えるとバレても困らない対策が必要だろう。どうしようか。


「どうしました? 黙り込んでしまって」


「いえ、それなら古文書に魔法の習得方法が書かれたものがあるのですがアデス様も試してみますか?」


「なんですと!?」


「なんだと、俺は聞いてないぞ!」


ジャッジさんも私とアデス様の話を聞いていたらしく激しく反応したよ。ホントびっくりだ。


私は異世界転生もののラノベの中でも丁寧に魔法習得を描いた作品を選び書棚から取り出した。


「これなんかは特に習得方法について詳しく書かれてますが、魔法について書かれた古文書は結構多くありましたよ」


「「……」」


今度は二人が黙ってしまった。う~ん、どう反応して良いのか困る…。


「ちなみにですがその魔法習得方法というのを伺ってもよろしいですか?」


アデス様が私に敬語使ってるよ。驚きだよ。動揺しているのか?


「おまえはいつの間にそんなに古文書を読んでいたんだ。あぁ、あれか。珍しく大人しくしていると油断させていたあの時か!?」


なにそれ、珍しく大人しくしてるなんて、私はいつだって大人しいよ!

でもきっとそれは私が魔力循環や魔力操作の訓練をしている時だね。勘違いしてくれるならその方が助かるから良いけど。


「おまえは黙ってろジャッジ。それで教えてくれるかなオランジュ」


「ええ、いいですよ」


私はその書籍に書かれている方法を掻い摘まんで読んで聞かせた。


「そ、そんな方法があったとは…」


どうやら魔法の習得方法はこの世界のものとは違っていたらしい。いったいどんな方法なのか逆に知りたいかも。


「もう一つ聞いてもいいなか?」


「はい、なんでしょう?」


「古文書に書かれている魔法についても教えて欲しいのだが」


「それって属性関連とか魔法名とかですか。それとも効果や威力に関してですか?」


「もしかして魔法には数多くの種類があるのか?」


「ええ、魔法だけでなく魔術というのもありますし、それに属性もかなり多くあります。その中でも初級中級上級とか特級なんてのもあってきっと驚きますよ」


「……」


またまたアデス様は黙り込んでしまわれた。調子に乗りすぎたのかな? ちょっとやばいかもしれないね。


「オランジュ、申し訳ないがその魔法についてレポートにまとめられるか?」


「レポートですか?」


ぶっちゃけあまり得意では無いんだよね。読むのは好きだけどまとめるとなると頭を使うじゃない、それがね、ちょっとね。


「おいアデス、まだ学園も卒業してない子共に何をさせる気だ。無理に決まってるだろう」


「いや、ほら、知識の能力者でもあるし大丈夫かなと思ってな。それに難しく考えず要点だけまとめる感じでどうだろう、無理かな?」


アデス様にお願いされたら無理だなんて言える訳ないじゃないですか。ええ、このオランジュ勿論完璧にアデス様のお役に立ってみせます。


「分かりました。要点だけでいいのならやってみます」


「ありがとうオランジュ。勿論対価は払います。いえ、違いますね。お礼をしましょう。何か欲しい物があれば遠慮無く言ってください」


欲しい物と突然言われてもなぁ…。今現在別に無くて困ってる物なんて無いからなぁ…。


「すぐには思いつかないので考えておきます」


「ではお願いしましたよ」


アデス様はそれだけ言うと納得したように研究室を出て行くが、何故かジャッジさんが私を睨んでいる。なんかその顔怖いよ…。



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