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私の推しはモブ文官  作者: 橘可憐


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魔法習得訓練1


リオンは今のところ教会で毎日祈らされているだけで、私のように誰かの助手にされたり何かをさせられることはないらしくとても退屈だと話していた。


「ねえ、それっていつも一人ってこと?」


「うん、狭い部屋に閉じ込められてる感じがしてちょっと窮屈だけど、退屈な時は今頃姉さんが誰かに迷惑掛けていないか考えたりしてるとあっという間に時間が過ぎるから全然平気だよ」


それ全然祈ってないよね?


「なにそれ。それじゃ私がいつも誰かに迷惑掛けてるみたいじゃない」


「違うの?」


問題はそこじゃない。狭い部屋に閉じ込められてるって、それってもしかしたら洗脳の前段階みたいで少し不安だ。

普通はそんな部屋に閉じ込められたら精神的に弱ると思うよ。ましてやリオンはまだ子共だし。


それとも教会ではリオンの扱いに関してまだ何か揉めていたりするのだろうか?


これは何か対策が必要だな。


「リオンは癒やしの能力を発動させたことはあるの?」


「無いよ」


「教会で発現してみせろって言われなかった?」


「全然」


おかしい。癒やしの能力は教会にとって奥の手で重要視されていた筈なのに、そもそも担当者もお付きの神官もいないなんてゲームとは全然話が違っている。それにそろそろ神官候補と知り合うことになっている筈なのに。


アデス様の庇護の元この研究室から通っているから教会内の派閥争いが激化してるのか?


それとも逆に教会に取り込めないようなら表に出さないつもりなのかも。だってゲームでは学園入学まで癒やしの能力を高める訓練をさせられたことになってたからね。


そして王様の病気を快癒させ教会は国王に貸しをつくり力を付け、主人公は高位貴族と同等の地位が与えられ結果トゥルーエンドに繋がっていくんだよ。


このままじゃもし王様が病に伏すイベントが起きたらリオンは病気を治すこともできず偽聖者扱いされることになる。それじゃバッドエンドじゃないか。


もっとも神官候補や王子王女とある程度親しくならないとそのイベントは起きないし、起きたとしても親密度が微妙だと王様は命は取り留めても快癒に至らずにお友達エンド。そして快癒させても天から降りかかる大災害イベントに参加できなければ駆け落ちエンドへと繋がっていくことになる。


しかし現段階でこうもゲームの進行と話が違ってくると絶対とは言えないし用心に越したことはない。

イベントが起きないに越したことはないが、何よりリオンがちゃんと癒やしの能力を自在に制御できるくらいには力を付けておいて損はないだろう。


何が起きるか分からないなら何が起こっても対処できるくらいに力は付けておくべきだ。

うん、それが良い。


「それなら都合が良いわ。リオンはこれから魔力操作と魔力量を増やす訓練をしなさい」


「なにそれ」


「私が解読した古文書に載っていたのよ。魔力循環方法と魔力操作方法に魔力量を増やす方法がね。今から教えるから閉じ込められている間試せるだけ試してみなさい」


どれもこれもラノベの知識だけれど、この世界では失われた文明とされているし、多分それなりに効果はあると私は信じている。


「姉さんスゴい発見したんだね。本当に効果があったらみんなに発表するの?」


「やだ、それじゃまるでリオンを実験に使うみたいじゃない」


「僕は別にそれでも構わないよ」


「そんなんじゃないわよ。私は絶対に効果があるって確信してるの。だからリオンには十分に力を付けて貰いたいって思って言っただけよ。なんなら私も同じ訓練をするわ」


「うん、分かった。僕頑張ってみるよ」


「じゃぁ今から教えるから一緒にやってみよう」


「なんだかワクワクするね。姉さんと一緒だと僕本当に楽しいよ」


「そうね。楽しいのが一番だよ。私もリオンと一緒にいると楽しくて勇気づけられる。これからも一緒に頑張ろう」


「うん」


私とリオンは古文書ラノベの指導の下魔力循環も魔力操作も難なくクリアしていく。


「思ったより簡単だったんで僕驚いたよ」


「そうね」


私もびっくりだよ。本当にこんなに簡単にできて良いものなのか?

これなら念能力だって本当にマスターできるかもしれない。私にどんな能力が発現するのか今度試してみるか?


「それで魔力を空にするってのはどうやるの?」


「使える魔法を発動し続けるだけよ」


「使える魔法って僕は癒やしだよね」


リオンに念を押されるように聞かれて私はふと疑問を抱く。魔力循環も魔力操作も簡単にできたという事は魔力があると言うことで、ならば当然他の魔法も普通に使えるのではないだろうか。


「そうね、まずは癒やしの能力を高めるべきよね。でもきっと他の魔法も使えるはずよ。ちょっと試してみようか」


「えっ、そんなことして本当に良いの?」


この世界では魔法は学園を卒業後に入れる学院で習った者しか使えないとされていた。だからリオンが不安に思うのは当然のことだ。


「別に普段人前で使わなければ良いだけよ。それに魔法を使う機会なんて無いでしょう。魔法を使っちゃダメって法律はないから安心して」


「そうなの?」


「そうなの!」


もし誰かに見つかり追求されたら突然使えるようになったと言って誤魔化せば良いだけよ。教わらなくちゃ使えないと思っている人達が損しているだけなんだから。


「じゃぁまずはライトから試してみようか」


部屋の中でも安全に試せるで定番の光魔法ライトの発動をリオンに解説しながら私も試す。


ポッ!

ピカッ!!


私とリオンの光の強さが明らかに違う。リオンの光は眩しすぎるくらいだ。


「できたぁ!!」


喜ぶリオンを褒めるより私は気が進まなかったが少々窘めることにする。


「リオンもっとイメージして明かりの調整をしないと目を痛めるわよ」


「姉さんの方が魔力操作が上手ってこと?」


「そうかもね。イメージ通りの光が出せるまで訓練しましょう」


しかしこれで普通にあれこれ魔法を取得できると確信できた。これからもっと色んな魔法を使えるようにリオンと二人で頑張ろう。


オランジュとリオンの魔法無双のための第一歩がここから始まるのだった。



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